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メカトロニクス  第22回 オリジナルインタビュー

『考えること』『売ること』に特化する

― モータ周辺装置を一体型にしたACサーボシステム ―

 

マッスル株式会社

マッスル(株)
代表取締役  玉井 博文 氏

マッスル(株)
営業シニアマネージャー
北島 知子 氏

 

 
従来より倍の速さの工業用刺繍ミシン、人工呼吸器電装品一式などを開発、人工呼吸器で開発した一体型ACサーボシステム『クールマッスル』を製品化し世界に展開。今年1月にさらに大容量の『CM2』を開発、販売を開始したマッスル株式会社 代表取締役 玉井 博文 氏、営業シニアマネージャー 北島 知子 氏に製品と会社の方針などを聞く。

 

 

御社についてお話し下さい

 

玉井:私はもともとロボットの開発をしていまして、そのロボットは産業用でしたので重くて冷たいという感じがしていました。制御装置を動かす自分の手と比べるとその滑らかな動きとの差が感じられ、しなやかに動くロボットを作ってみたいと思い筋肉という意味のマッスルという社名にしました。
 自分の技術の限界を確かめてみたいと思い、経営のことも分からないまま、何の準備も無く1988年に設立しました。しかし、ロボットの夢ばかり追いかけても経営をしていくことができないと思い、好きな仕事はちょっと休んで売り上げが上がる仕事を探しました。そのようなとき、工業用のミシンの会社から刺繍用のミシンができないかという依頼がありました。開発費をいただきプロジェクトとして取り組んだ結果、縫う速さがそれまでにあった工業用ミシンの倍の性能を持つミシンを創ることができました。考えようによっては刺繍をするロボットとも取れますので、設立の趣旨にもかなっていたと思っています。このため、会社が成り立っていくベースを確保することができました。
 あるきっかけをもとに、技術の会社として次のステップに行くために、医療器の中でも難しい人工呼吸器に挑みました。この目標が成功すればレベルも上がり、技術の確立ができると思ったからです。これは、米国の人工呼吸器の第一人者がスピンアウトして、新しい会社を作ったのをきっかけに当社に話がかかったものです。システムの全体は米国の会社が設計し、当社がエレクトロニクスの部分を開発しました。米国における医療器はFDAという日本の厚生省に当たる機関の認可が必要になりますが、普通5年から7年かかるものが2年半で通り製品化をしていくことができました。この製品は米国の呼吸器としてベストセラーとなり、開発して10年以上経った今でも主力製品として売れています。
 この二つの製品により、会社の経営の基礎ができましたので、自分のしたいことの夢に一歩近づけるために取り組みました。実は、呼吸器の中に小さなモータを三つ入れており、空気のバルブを精密に高応答でコントロールしています。他社ではステッピングモータを使っていましたがこれでは速度と精度が出ないため、当社ではステッピングモータにエンコーダを付けた独自のクローズドループベクトル制御を搭載しました。これにより、サーボモータ並みの精度と、応答性を実現した反面サーボモータと比べコストは非常に低く抑えることができました。そこで、そのモータの部分を売るというビジネスを始めることにしたわけです。

 

どのように販売を展開されましたか
 

玉井:商品名を『クールマッスル』として1999年に国内販売を開始しましたが、日本においては大手メーカーにはなかなか採用してもらえませんでした。一つには当社が新興で無名の会社であったことと、二つには当社のコンセプトがその当時日本ではまったく受け入れられなかった『コンピュータとモータを直結』できるものだったからです。分かりやすくいえばUSBでモータが動くのですが、日本においてはUSBというのが聞き始めで、大手メーカーにおいても技術的な蓄積も無かったためです。そのころはサーボモータのメーカーが提唱しているインターフェイスが主流で、聞きなれない技術には拒否反応を示されました。
 そこで戦略を変え、米国から先に販売を展開することにしました。シカゴの展示会において、装飾もしていない1小間だけのところに製品を置いたのですが、大勢の人が集まってきました。米国の人達は、当社について国名も歴史も資本金も規模も聞かないで、ただ製品の性能だけを熱心に聞きますので、その姿勢には感心させられたものです。その反応から、米国で本格的に売ろうと考え、知り合いのいるカナダのトロントに販売会社を設立しました。米国での販売実績が順調だったので、アジアでも売ってみたいと思い、シンガポール、韓国、台湾にセールスのネットワークを作り販売したところ、ここでも、同製品は順調に売れていきました。今ではタイ、中国をはじめ欧州にも販売展開しております。
 日本においては、新しいものにこだわらないで使う企業に採用され、口コミで少しずつ広がっていき、当社のモータのファンも次々に増えてきました。その結果、カスタマイズ製品も含め右肩上がりで年々販売台数を伸ばしています。また、それらの方々からも進められ、本格的に売ろうと考え、さらに次の製品『クールマッスル2』を今年の1月に発表したというのが現状です。 

 

『クールマッスル』ラインアップ

『クールマッスル』コンセプト


会社の方針などをお聞かせ下さい

 

玉井:当社の核となる技術は、パワーエレクトロニクスとモーションコントロールです。パワー回路をいかに効率よく設計するかによって、コンパクト化が実現されます。日本は小さく作る技術が長けていますので、米国始め海外の方々はパワーの割に製品が小さいことに驚かれます。核となる技術をコンパクトな形にして売るというのが当社の基本方針です。
 当社は『考えること』と『売ること』という自分たちの得意なところに特化するのが会社の理想の姿だと考えています。自分たちのプロダクトプランニングした商品の設計から販売まで一貫して関わっていきます。しかし、生産部門においては、優れた技術と品質を確保できる専門の方がいらっしゃいます。我々はそのところはプロの方に任せて、開発と販売に特化することにより、開発のスピードアップ、競合他社との差別化要因の蓄積、業務効率向上を狙うことができます。当社のように、小さいながら自社ブランドで勝負するメーカーの、ビジネススタイルといえると思います。

 

■『クールマッスル』についてお話し下さい

 

北島:クールマッスルを一言でいうと、周辺装置を一体化しコンパクトにしたものです。今までは一つのモータを動かすのに、コントローラ、パルス発生器、位置決めユニットなど様々な装置が必要でした。特にオープンループの普通のモータは、熱が出たり、精度が悪かったり位置がずれたりいろいろな不都合がありました。クールマッスルはこれらの問題を解消できることと、ほかではできないコンパクト化が実現できます。ドライブ機能もコントロール機能も一体化になっていますので、配線の必要もなくなります。従来はコントローラからモータまで配線の束ができ、それがノイズを出したり拾ったりしていました。線を無くすことにより、コスト的にも安くなり不良の原因も少なくなりノイズに対しても強くなりますので、多軸で使われるユーザーにとってはメリットがかなり出てきます。
 ベースはステッピングモータですが、サーボモータに近いパフォーマンスを実現できます。カタログでも、敢えて『サーボシステム』としているのはその意味で、ステッピングモータを利用していますがクローズループのサーボモータと同じ動きができます。サーボモータは高速で精密に動くものに対応し、どんどん性能が上がってきて高価なものになってきています。私たちは安いステッピングモータという資源を使って、いかにサーボモータに近づけるかに知恵を絞って同製品を開発したわけです。
 呼吸器のために開発されたので、ステッピングモータをベースに作っており容量も大きくはありません。当社の製品を使っていただいたユーザーから、「使い勝手が非常にいいが、同じ装置の容量が大きいところには別の制御系統を使わなければならないので、同じ制御理論で構築できる容量の大きいクールマッスルが欲しい」といわれていました。そのような中で今年の1月にできてきたのが『CM2(クールマッスル2)』です。

 

新製品『CM2』の特徴はどのようなものですか

 

北島:CM2は、クールマッスルではスペース的に実現できなかった機能や、ユーザーからの要望なども載せています。特約店からの話を聞いても評判が良いようで、クールマッスルの見直しを検討される方も出てきています。
 簡単に紹介してみますと、この製品は、従来の製品と同じモータ、エンコーダ、ドライバ、コントローラのほかに、電源ユニットとPLC機能を内蔵し一体型にしたものです。ACサーボモータをベースに定格回転数6,000minー1、最高回転数8,000minー1の高回転が可能です。クローズドループベクトル制御を搭載し、制御/動力電源も内蔵しています。また、AC100〜240Vまで切り換えることなく電源に直接接続することができます。現代制御理論を応用した独自の制御技術により、サーボゲインのチューニングレスを実現しています。サーボ特有の煩わしいゲイン調整から開放され、一定の負荷に対して安定した動作を実現し、作業時間を大幅に削減できます。
 設定された電流値で設定された押し付け動作ができるので、エアシリンダ、エアチャックとの置き換えが可能です。出力トルクの制限ができるため、搬送などのアプリケーションに使っていただくことができます。
 プログラム内で数値演算/論理演算、ティーチングコマンドを使え、任意動作の登録ができます。特別なモーションカードが不要、クールマッスルのみで円弧/直線補間を簡単に行うことができます。また、プログラムが正しく動いているかなどをその場で見ることができいろいろな意味で手軽になっています。
 独立したRS232Cを2ポート標準装備しているため、各種パラメータ設定やプログラム作成、多軸動作など様々な設定ができます。標準的なModbus(モドバス)のプロセッサ命令に対応ができ、Modbus に対応した汎用的なプログラマブルディスプレイターミナルやPLCに直接接続することが可能となります。
 デイジーチェイン接続により、最大15軸までの多軸制御を行うことができ、それぞれが独立したプログラムを実行することが可能で、ほかのCM2の動作状況やI/O状況と連動した動作ができます。
 同製品のトルクが小さいものや少し大きい機種も今後発売する予定です。 

 

『CM2(クールマッスル2)』



今後の展開についてお聞かせください

 

玉井:ユーザーが機械を作る中で、通信ネットワークを中心としたシステムの中に当社のアクチュエータを付けて電源を供給すれば機械が動きます、という、我々が自立分散システムと呼んでいるコンセプトはユーザーの方に非常に喜ばれています。
 例えば5mの大型製造装置に100軸モータを設置したいとき、コントローラ、ドライバなどがそれぞれ100台あり配線を考えるとシステム設計ができないと思います。そのような装置にクールマッスルを使われたメーカーの方は、今まで一週間かかっていた配線作業が半日で終わったと喜んでおられました。我々は、機械全体に当社の「モータ一体型アクチュエータ」製品を載せていただきたいと思っています。そのためには、当社の製品に大きなものから小さなものまでのバリエーションが無ければなりません。そのため、これからの取り組みの一番は、バリエーションへの取り組みです。今は100Wから400Wまでをラインアップしました。次はそれよりも上とか下への展開に入っていこうと考えています。
 また、カナダにも開発拠点を持っていることから日本との時差で自ずと24時間体制となり、効率の良いソフトウェア開発ができます。クールマッスルは従来の日本製品とはまったく異なるオリジナリティー溢れるコンセプトから開発されました。我々はさらにグローバルな視点から今後のロボット業界にセンセーショナルな製品作りを目指しております。冒頭でお話ししました「マッスル」という社名にもあるように、人間の筋肉のようにしなやかに動くロボット構築を実現し、多くの人々の生活向上に繋がる・・・そんな夢のある製品づくりを目指し、そして我々の開発コンセプトを世の中に広げていきたいと思っています。

 

本日はお忙しい中有り難うございました

 

2007年9月号掲載

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