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■イグスの創業についてお聞かせください
西山:1964年に創立されたイグス社の創業者グンター・ブラーゼは、もともとは樹脂の射出成形企業に勤める会社員でした。様々なアイデアが思いつく独創性に溢れた人で、一介のサラリーマンでは飽き足らず独立して起業しました。クルマ2台分の小さなレンタルガレージに射出成形機を置いてビジネスを始めたのがイグスの原点です。当初は順風満帆とはいかず、彼は開発した製品の仕様書を手に営業したと聞いています。営業活動での決まり文句は「他社ではできないような難しい案件をください」。製品に対する自信とプライドがあったからです。ある企業から自動車のキャブレーター用の極小円形部品の引き合いがあり、わずか8日間で樹脂素材と金型をアレンジしプロトタイプを作り上げ発注を獲得しました。 これが今でも、“お客様の立場に立って問題を解決する”というイグスのビジネスモデルの核になっていて40年以上、脈々と続いています。当社の社是である“plastics for longer life”、日本語で言うなら「寿命を延ばしてコストを下げる」は、イグスの樹脂素材の開発と、金型・成形技術でしかできないことを実現してお客様の機械性能の向上に寄与しようという考えで、創立以来ずっと変わっていません。
■社名にはどんな由来があるのですか
西山:「igus(イグス)」という社名は、ドイツ語の“Industrie”(工業・産業の意)と“Spritzguss”(射出成形の意)を組み合わせた造語です。当初20年間ほどは樹脂軸受の特殊成形を専門に扱っていたのですが、80年代に入りグンターの長男で現CEOのフランク・ブラーゼが加わり、ベアリングやエナジーチェーンをカタログ商品化します。種類やサイズの多い製品の体系化をきっかけに成長しました。 当社が考えるお客様とのビジネスリレーションはユニークで、CEOが描いた手書きの図を使用しているのですが、お客様が中心にあります。「ソーラーシステム」と言うこともあるのですが、お客様が太陽で、我々がその周囲にある地球、惑星、衛星で、太陽からエネルギー、つまりアイデアや仕事をいただいているという格好になっています。お客様第一主義は、外資系でありながら日本企業そのままという印象で、これもイグスならではの考えだと思っています。
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お客様を中心にした組織 |
■イグスが日本市場に参入したのはいつですか
西山:イグスが日本に進出したのは1986年で、その4年後の1990年に現イグスの前身として、潟Lャプテンインダストリーズさんとの合弁でイグス・ジャパンが設立されました。日本市場に広く製品を知っていただこうということで、イグス・ジャパンは多いときでは年20回もの展示会に出展していました。コーポレートカラーであるオレンジ色をメインにしたブースを思い出された方も少なくないのではないでしょうか。様々な機会を通してカタログやサンプルをお渡しし、名前を覚えていただくとともに製品の性能などについてもご理解いただくよう努力を重ねました。その後、2003年にはイグスの100%子会社になり、メーカーとして厚みが増すよう独自の販売網を構築してきています。
■製品はすべてドイツからの輸入ですか
西山:基本的にはすべての製品をドイツから持ち込み、栃木工場で組み立てや在庫管理などを行っています。よく外資系企業は国内に在庫を持たないから納品までに時間がかかると言われます。実際に「すぐに納品してくれ」とおっしゃるお客様を前に、当社も苦渋の選択をしたことが少なからずあります。その苦々しい教訓を元に、近年、スピーディなロジスティックス体制をドイツ本社とともに築いています。例えば、日本に在庫がなくてもドイツにあればすぐに飛行機に載せ、2日後には日本へ到着というサイクルをとっています。今では、ご注文をいただいてから2、3週間後の納期をお約束できるようになってきています。また、かなり思い切った投資でしたが、納期短縮のために日本市場向けの国内在庫量を増大しています。総合カタログに掲載されている全在庫を日本に置こうということで、ベアリングから着手しました。外資系企業の弱みを補うには有効な投資だと思っています。
■外資系には珍しい動きですね
西山:お客様に外国の会社とは思わせないよう、常に心がけています。また、当社の製品は樹脂製であるため、特に金属のセオリーで考えられるお客様が多い軸受分野で、ご理解を得る努力をしています。ドイツ本社で繰り返し行われている評価試験や、その結果を元に構築した膨大なデータベースをご覧いただき、軸受の寿命予測計算などもご利用いただいています。軸受に限らず、ケーブル保護管の中に可動ケーブルを通して何百万サイクルも動かした場合の寿命など、実際に見ていただくようにしています。この辺りも一般的な外資系企業とは異なる点だと思っています。
■ドイツと日本のマーケットで違いはありますか
西山:ドイツ本国ではポリマーベアリングや可動ケーブルも高いシェアを占めていますが、日本での有力商品は樹脂製のケーブル保護管です。ドイツに比べ日本は半導体やFPD製造の層が厚いので、この分野に関するニーズはドイツへ還元して、日本発の製品開発に結びついたものもあります。この初夏に発売が開始になるE6.35という製品で、従来品のサイズの隙間を埋める有力製品となっています。ただ最初に申し上げたとおり、ベアリングとケーブルに関しては日本ではさらに力を入れていかなくてはいけない。そういったことで、昨年の夏からベアリング、今年の春からはケーブルの専任スタッフを配置し、ビジネスディベロップメント&エンジニアリングを切り口に日本での市場獲得や日本のニーズをドイツ本社へフィードバックして日本向け製品を開発するなどの試みを行っています。
■主力製品についてお聞かせください
西山:当社の製品は、3つのカテゴリーから構成されています。1つは、日本で一番需要の高い、樹脂製ケーブル保護管エナジーチェーンです。エナジーチェーンを私どもは「機械の命綱」と呼んでいます。機械が動き続けるのに必要な電力、動力、データの供給は、動力ケーブルやデータケーブルが行うわけで、これが一度断線すれば機械は停止してしまいます。ダウンタイムをなくすため、これらケーブル類を保護し安全・確実な稼動を確保する、これがエナジーチェーンなのです。昨今、機械は高速化し機械負荷が増したり設置場所がタイトだったりと、エナジーチェーンに求められるニーズは高度になってきていますが、1971年の開発以来、培ってきた経験と技術でご納得いただける回答をさせていただいております。現在、全部で7万点の製品があり、工作機械から搬送装置まで幅広くご使用いただいています。 よくユーザーから、エナジーチェーンはバリエーションが豊富で、どれが適しているのか分からない、選定が厄介だというお話しをいただきます。それにお応えすべく、私どもでは昨秋よりヘルプデスクを設置し、朝8時半から夜8時まで、お客様からの技術的な質問に対応しています。使用条件に合うエナジーチェーンのご紹介や内部の仕切りのお手伝いをはじめ、ベアリングやケーブルに関するコンサルティングも含め、幅広く対応させていただいております。 エナジーチェーンに関して当社がお勧めしているのは、レディーチェーンというケーブルユニットで、エナジーチェーン内にケーブルを通し、コネクタなども付けた状態で納入するスタイルです。お客様の仕様に合わせてハーネスしますので、納品後は取り付けていただくだけ。お客様の組み立て工数やコストの削減ができるため、非常にご好評をいただいております。設置後のトラブルシューティングも当社が担当しております。 高速で、しかも長いストロークを動かすとなればエナジーチェーンの最も得意とするところです。しかし、実際にはケーブルの這わせ方が非常に重要で、手加減ひとつで断線の可能性が高まることもあります。お客様の仕様に合わせ、イグスはケーブルの引張度を設定したり仕切りを工夫したりと、様々なノウハウを駆使しています。
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エナジーチェーン |
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レディーチェーン |
■注力されているベアリングとケーブルは
西山:2つめが、ハイテクポリマー製のベアリングです。ベアリングに使われている樹脂は、イグスが独自に開発したイグリデュールという素材で、滑りのよさに特徴があります。強化剤と潤滑剤の配合を厳密に制御した物性の優れたポリマーで、無給油、無潤滑でメンテナンスフリーとなっています。転がりでも、焼結含油でも、PTFE皮膜タイプでもない、イグリデュールのことを当社では「第4のベアリング」として日本市場に強くアピールしています。 イグリデュールは製品になっているだけでも28種類以上あり、それぞれ温度やシャフトの材質など、様々な条件、組み合わせをテストしております。年間4000から5000回のテストを行っておりますが、そのデータからお客様のニーズにあった素材をご提案しております。 イグリデュールは樹脂でも高温・高荷重に対する耐性が優れており、実際に自動車のエンジンルームでも使用されています。樹脂ですから錆びることはありませんし洗浄剤に負けない耐薬品性がありますので、日常的に清掃の必要がある食品機械にも適しています。吸湿率が低いタイプは水中ポンプにと、様々なアプリケーションで使用することができます。 すべり部分にイグリデュール部材を用いたリニアガイドのドライリンという製品もあります。これは樹脂を用いたまったく新しいリニアガイドと言えるかもしれません。グリースや油などの潤滑剤を必要としませんから、塵埃が厳しいところでも動き続けます。摩擦特性も優れており高速で動き低騒音なので、自動ドアや搬送装置などでお使いいただいています。 3つめのチェーンフレックスですが、これは可動ケーブルです。当社のケーブルは、エナジーチェーンの中に入れて動かして使うことを第一に開発されています。ですから通常は定置で使用するようなデータケーブルも稼動させて使うことができます。IEEE1394やUSBなどのデジタルインタフェースに対応したデータケーブルがあるのですが、長いスパンを何百万ストロークと往復させてもデータ損失が少ないので、「こんなケーブルを探していた」とユーザーからコメントをいただくことも少なくありません。 長い距離を動かして使えるのには、線心の撚りピッチや角度、被覆やシールドに当社ならではの意匠があるからなのです。こうした屈曲性があり断線しにくく曲げ半径の小さなケーブルを多数取り揃えています。現在お使いのケーブルをイグスのチェーンフレックスケーブルに交換すれば、ケーブルを入れる保護管がもうワンサイズ下げられ、機械は小さくなる。最終的にはコストメリットも期待できるケーブルなのです。
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ドライリン |
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チェーンフレックス CF BUS 055 |
■今後の展開についてお話ください
西山:ドイツでの生産能力もアップし、日本では短納期化するなど、物流の面では海をまたいでの体制が整ってきました。しかし、イグスの強みは、在庫や商品バリエーションの豊富さだけではありません。イグス製品をご利用いただいたらどんなメリットがあるのか、過去からの蓄積データや使用事例、また機械設計、電気設計の両方をまたぐ約9万点もの製品から的を射た技術提案が可能です。言われた部品をただ納入するだけの部分屋ではないエンジニアリング・カンパニーとしてお役に立ちたいと思っています。 また、今年もエナジーチェーンとチェーンフレックスで36点、ベアリングで33点もの新製品が本社からリリースされました。今年に限らず、イグスは毎年、斬新なアイデアを形にして数十点もの製品を新規にラインアップに追加しています。この開発力も、日本のお客様にご理解していただきたいと思っています。昨年からアプローチを続けているイグスのカメラに接続できるデータケーブルはまさにこの一例で、被写体が動くものでカメラは動かせないという常識を打ち破る製品。「動かしても断線せず、画像などの大容量データ転送が可能なケーブルなのでカメラの方を動かせますよ」、とお客様に申し上げています。これでまた設計の幅を広げることができるのではないでしょうか。 可動部分で電線が切れて困っている、また転がりや焼結含油のベアリングが苦手としているところで不便を感じていらっしゃる方、ぜひ当社にご相談ください。また、日本国内で入手できる部品に限界を感じている方も、ぜひご一報ください。ヨーロッパで成功しているアプリケーションを駆使して、日本のユーザーとより良い関係を築いていきたいと思っています。
本日はお忙しい中ありがとうございました
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