■御社についてご説明ください
秋山:当社は2000年8月に設立し、もともとは、LUC-SBウォール工法・INSEN-SBウォール工法という、道路用砕石や現地の土砂をコンクリートの代わりに使って砂防堰堤を作る工法の開発を主とした会社です。この開発において、意匠とか構造計算をするときにコンピュータを駆使して行いますが、コンピュータに強い人が必要であるということで、ある会社のコンピュータ部門を買い取りマルチメディア部門を設けました。マルチメディア部門はコンピュータ・グラフィックスのデータ作成、システム開発を行う部門です。 また、砂防における無人化施工工事などで、建設機械を操作するための無線システム開発に関わったことから、無線事業の部門を立ち上げました。無線事業部はその後、容易に設置できる無線を用いた土石流監視システムや、無人ヘリコプターなど無線システムの開発などを中心に事業を展開しております。 このように、当社は小さな会社ですが、工法部門を入れて3部門あり、技術的にはそれぞれ独立していますが開発を行うときは常に3部門が一緒になって取り組むという独立統合型というような形態の会社です。
■バーチャル会議室「ちゃるかん」が開発された経過は何ですか
秋山:当社は小規模ながら、鹿児島、東京、川越に拠点があり分散しています。それらの拠点が相互に関連して仕事を行っているため頻繁に打ち合わせ協議を行うわけですが、FAX、電話、メールでのコミュニケーションには限界があり、三拠点による電話会議なども試みましたが、相手の状況が分からないため、ストレスが多く実用的ではありませんでした。このようなことから、業務を行う上でトラブルが多発し、何らかの対策を講じる必要性に駆られていました。 そこで、これだけコンピュータネットワークのインフラも進んでいるので、コンピュータシステムを使ったテレビ会議システム製品があるだろうと調べてみたところ、色々ありました。しかし、フリーのものはセキュリティー面で不安が払拭できず、有償のものは多額の投資が必要で、当社のような小規模な企業にとっては、効率化の投資率が高いものになってしまいます。 一方、当社は先ほど話をしたように、マルチメディア、無線事業など、三つの部門があり、各部門はそれぞれ独自の技術ノウハウを持っております。ちょうどそのころ、無線部門では、土石流監視システムの開発において、監視システムのカメラ映像を現地の事務所で集積し、インターネットを使って地元の自治体、監督官庁の県などに配信するシステムを開発しておりました。 この映像、音声の伝送システムを応用すれば、自社でテレビ会議システムを開発できるのではないかという安易な発想から、じゃぁ自分のところで作ろう、ということになりました。そして2ヵ月程度の時間をかけ、2004年10月に簡便なテレビ会議ができるシステムを開発しました。当然、音声や映像プロトコルは、当社のオリジナルのファイル形式を使用しているため、たとえパケットの情報を取られたとしても解読するのはほぼ不可能だと思います。まぁ、そこが狙いだったのですが。 当初、社内用として使っていたわけですが、テレビ会議ができたら次々に欲が出てきて、もっと音声品質を向上させたい、パソコン画面のデータも送ることが出来れば相当打ち合わせが効率的になる、など、要望が色々出てそれらに対処してきました。当初は自社の独自な必要性から作ったものですが、世の中にはそれを望む声が多いことが分かり、製品版の開発にふみ切ることとしたわけです。
■さらに「W.I.C-BL」を開発されたのは何故ですか
秋山:2005年の7月には、コンシューマ向けとして、4人以内で会議をする無償のフリー版と、地域サークルなどを想定した簡易なパソコン画面の共有が行え、5人以上のユーザーと会議ができる有償版の「バーチャル会議室ちゃるかん」をアップロードし、大手のソフトウェアダウンロードサイトへも掲載することとしました。現在は17,000名の方にダウンロードされております。前述のとおり、当初は、簡易なテレビ会議システムであることから、企業での使用を前提としておらず、コンシューマの方のニーズが高いだろうと考えていたのですが、有償版を購入されるのは99%が企業からで、中には随時追加をされ100ユーザーライセンス程を購入される企業も出てきました。 このような中、昨今のコンピュータによる機密情報漏洩などが取り上げられ、「ちゃるかん」も販売する側の当社としても、企業での使用を前提としたセキュリティーを考えなければならないのではないか、という意見が出ました。もしも、我々のソフトウエアを使用することで、知らない間に情報が洩れたりしたら大変です。お金をいただいてシステムを提供している側としては、そのようなことの無いように責任を待たなくてはならないと考えたわけです。 そこで、企業向けソフトウエアとして、ネットワーク管理が容易で接続先の指定が可能な企業向け商品を新規に開発することとし、セキュリティーの強化および情報管理性能の向上はもちろん、企業での活用シーンを想定した機能や操作方法などを再検討し、ビジネスコミニュケーションソフトウエアの開発に取りかかったわけです。
■「W.I.C-BL」についてコンセプトや技術などをお話ください
秋山:ビジネスコミニュケーションソフトウエアとして考えたとき、我々はまず、会社という集団を人間関係で捉えた場合、会社の中の人と外の人との違いは何だろうかと考えました。 会社では目標に向かって分担作業が行われますが、一昔前は同じ会社の空間の中で自分に関係無い様々な情報も耳に入れながら仕事をする環境にあって、仕事の状況をリアルタイム把握しながら、知らず知らずのうちに情報の共有がなされていました。また、会社の中で色々な教育を受けることから始まって、人間関係というものが醸成され成長していくというのが我々の若い頃からの一般的な育ち方でした。それが、コンピュータというものが入ってきたときから、そのような横や縦とのつながりが希薄になったような気がします。つまりコンピュータで仕事をする環境を前提に考えると、電話で聞くよりメールでくださいとか、依頼された情報はデータベースで検索してくださいとかになってしまい、人間が本来持っている声や顔の表情や言葉などを用いたインターフェースによるコミュニケーションを避けるようになると感じられます。私は、コンピュータは人間関係を分断するものではなく、高い信頼関係の上で使用する優れたツールであるべきだと考えています。 このようなことから「W.I.C-BL」は、「顔を出さないで意見だけ言うな!」というコンセプトで作られています(笑)。相手の表情から言わんとすることを読み取ることは日常的に重要なのです。 最終的に必要なのは、機械に命令することではなく人を動かすことです。会社は人と会話する能力、指導する能力、協調する能力を磨く場をたくさん提供する必要があると思っています。つまり、コンピュータで書類を作成したりワークシートで計算するだけでなく、コミュニケーションの場を増やすことができ、なおさら、従来のコンピュータ作業も効率化することができるソフトウエアとして「W.I.C-BL」を提供していこうと思っています。会社のことが漏洩しないシステムを構築することも重要ですが、その人が漏らさないという信用を築くことも大切だと思います。その信用が築けるのは、まさに人間関係ではないでしょうか。 また、「W.I.C-BL」は、大規模な会議を想定しているのではなく、頻繁に行う小規模の打ち合わせを想定しています。一々会議資料を作成するような会議ではなく、ちょっとした確認作業や、情報共有のための会議です。我々の認識では、社内業務においてこういった小規模の打ち合わせがとても重要で、業務の効率化に大きく影響します。 一方、従来の一般的なテレビ会議は、システム機材が高価なため、機材が設置された会議室に集まり、向こう側も同じように集まってモニターを見ながら行いますが、頻繁に行う数人規模の打ち合わせに使用するには少々面倒です。また、インターネットを使い管理会社のサーバを利用して行うものがありますが、情報が一度社外に出てしまいますし、コストをかけて社内にサーバを設置したとしても、サーバの管理費が必要になったり、サーバがダウンすればすべての会議がダウンしてしまいます。 これに対し、「ちゃるかん」「W.I.C-BL」は、専用サーバを必要とせず、パソコンが接続されているネットワークインフラを活用して4、5人のユーザーが直接接続して会議を行う、という発想からできたものです。よって、別途に回線使用料もサーバ使用料も必要ありません。このようなコンセプトは、パソコンハードウエアの処理能力が格段に上がったことや、高品質な通信のインフラ整備が急速に伸びたことではじめて行える技術です。実はこういった考え方は「新しい技術にばかり目を向けるのではなく、その時代の社会背景を反映した合理的な技術の開発を行う」という、当社の理念にもつながっています。 機能面においても最小限のものにしています。「W.I.C-BL」の操作は四つのアイコンをクリックするだけの簡単操作で、従来にない低価格を実現しています。また、複数人とテレビ会議ができるほか、会議参加者がウインドウを共有し、テキストチャット、ファイル共有の機能を持っているので、たとえば、同じ部屋であっても、資料とかでき上がりなどの画面をみんなで見ながら打ち合わせをするというような使い方を当社ではよく行っています。
■先ほどもお話に出ましたセキュリティーについてどのようにお考えですか
秋山:コンピュータにおける技術的なセキュリティーの問題について話してみたいと思います。現実社会において、自宅の玄関の鍵をかけたから絶対自宅のセキュリティーは大丈夫だと考えている人はいないと思います。コンピュータのセキュリティーも同じで、セキュリティー対策を行ったから絶対大丈夫というものは無いと思うのです。また、コストをかけて自宅の鍵を二個にすれば、セキュリティーは向上しますが、使い勝手は悪くなります。コンピュータにおいても基本的には同じことが言えます。問題はセキュリティーレベルについて、我々のような一般的なユーザーが理解しやすいセキュリティーの考え方をとることだと思います。 「W.I.C-BL」では、接続できる範囲を限定できます。たとえば、「社内ネットワーク内だけしか接続できません」と明確にしています。また、社内での機密会議の場合は、暗号を決めればそれを知っている人しか会議に参加できません。もし、偶然暗号が合致し会議に参加しても参加したことを知られず隠れて参加することは出来ません、というシステムにしています。ユーザーはこれらのことを頭に入れて会議を行えば、知らない間に機密が漏洩するという事故はほぼなくなると考えています。また、通信を行うプロトコルも独自なものを使っていますので、セキュリティーの面はかなり守られていると思います。 なお、社外の人と会議を行いたい場合は、会社のロビーに見立てたW.I.C-BLサーバを設置することで可能です。
■今後の展開についてお話ください
秋山:「W.I.C-BL」の展開ですが、今後このようなテレビ電話ソフトはどんどんできてくると思いますし、たとえば、OSに標準で同等のソフトウエアが付属され、スカイプのような汎用的なソフトウエアとして位置づけられるかもしれません。しかし、「W.I.C-BL」のような企業向けのコミュニケーションソフトウエアは、汎用的であればあるほど、セキュリティーが低下します。つまり会議を不特定多数の人に公開する必要が無ければ、独自のソフトウエアであるほうが有利です。当社はこのソフトウエアを一から開発していますので、企業のグループウエアに統合したり、通信を行うプロトコルを一社ごと独自なものに変えることも可能なわけです。そこに、当社の今後の展開の鍵があるように思われます。 私は、オープンなネットワークとしてのインターネットがほぼ一巡してきた現在、企業のコンピュータネットワークにおいてもオープンなものとクローズなものが明確に区分けされ、その使用シーンに応じた信頼性の高い情報共有システムの必要性がますます高まると考えています。 ソフトウエア開発では、まだまだ勉強不足ですが、「W.I.C-BL」に関しては、既にたくさんのユーザーの方から色々な意見をいただいており、今年の3月末をめどにバージョンアップを予定しています。このようにユーザーの方々とのキャッチボールに耳を傾けながら、今後も積極的な提案が出来るソフトウエアを開発していきたいと考えています。
本日はお忙しい中ありがとうございました
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