■御社について簡単にご紹介ください
立花:当社は電源、通信、スタジオの三部門を柱として事業を行っています。もともとはスタジオ機器から始まったのですが、今では電源が主力で次に通信、三番目がスタジオという売り上げになっています。 1950年の創業ですから今年で57年目に入りますが、その間時代の流れがあり製品の比率にも変化がありました。1970年代から1990年半ばまでは通信の世界が活況で、半導体の集積化、マイコンの発達、通信の高速化などがどんどん進んでいた時代で、通信分野が売り上げの半分を占めていた時期もありました。 現在は、ITの技術が発達したおかげでハードウエアを生産する物量が減ってしまっているのが現状です。たとえば、電話でいえば昔は交換機という大きな機器を使っていたのですが、今は、ルータとかスイッチあるいはコンピュータで賄えてしまいます。当社もある時期LSIの開発に必死になって力を注いだこともありますが、そのおかげでそれまでの大きな装置が1個のICになってしまったこともあります。我々のようなセットメーカーは、そのようなICを使うことにより、作る物量は激減してしまうわけです。
逆に最近は、エネルギーに関わる仕事、自動車関係ではハイブリット自動車の開発、エネルギーでは分散発電のコージェネレーションやガス発電機といったところが、従来に比べて増えてきている気がします。当社も大きなエネルギーを扱う電源関係の仕事をやっていますので、IT関連のエレクトロニクスからパワーエレクトロニクスの方に軸足を移してきている現状です。 IT関連は今後も伸びていくと思われますが、よりソフトウエアに近い領域が伸びていくと思われます。通信やパソコンの速度が今よりも速くなっていくことよりも、今のハードウエアを応用して快適で安心な生活ができるようなソリューションといったところが伸びてくると思います。 それに対し、パワーエレクトロニクスは今まで進化の遅かった分野なので、これからが進化していく時代だと思っています。パワーデバイスは、マイコンのように30年前は2MHzだったが今は何GHzだというような大きな進化はないと思いますが、パワーデバイスを応用していく技術が発展していくだろうと考えており、我々としてはパワーエレクトロニクスに力を注いで世の中の流れを先取りして新しい製品を出していきたいと思います。
■電源の沿革についてお聞かせください 立花:当社は1959年に、それまで真空管を使っていたものに換え国内初の半導体を使った電源を開発しました。その後、1975年にスイッチング電源を開発し、1991年にはズーム型直流電源を出し、少しずつ進化したものを出してきました。特に目指してきた方向としては電気メーカーの研究室、学校の実験室に使われるような汎用電源、ノイズも小さくて安定度も高いといった電源装置の開発をしてきています。1996年に開発したアナライジング交流電源はどんな波形でも出だすことができ、電力アナライザ、高調波アナライザ機能など様々な測定機能を持っている電源ですが、このように機能が多彩な電源を開発してきています。 2002年からは電力回生形システム電源、2003年からは回生型直流電子負荷装置に力を入れています。これは、電源のように出力する側と、電子負荷のように電気を吸い取る側があるわけですが、吸い取った電気を電力ラインに戻すというのを電力回生といいます。電池の試験装置などに使われ、電池は充電と放電をしますが放電した電力を普通は熱にしてエネルギーを捨ててしまいますが、それを工場の電源ラインに戻すことができる装置で、省エネルギー化が図れるものです。 最近では電池の評価用のほかに、電気自動車のモータやインバータの評価用にも採用されています。お客様のモータ、インバータ、電池などに電気を供給し、そこで発電(蓄電)した電気を吸い取るという双方向の電源の需要が増えてきておりそれに対応しています。 また、電気を供給する、吸い取るというだけでなく、当社の精密なコントロール技術を活かし、たとえば、電気をもらって回転しあるときは電気を発電するというモータの代わりの動きをするものが欲しいという需要もあります。というのは、モータを駆動するためのインバータを開発されているお客様は、そのテストをするときにモータを設置し軸にトルクメータをつないだりすることも大変であり、固体によって特性が変わったりします。そこで、モータと同じものを電子的にシミュレーションして欲しいということです。コンピュータ上でのシミュレータなどは存在しますが、実際に電力を発生することはできないわけです。そこでコンピュータ上のシミュレータからの指示にしたがって、実際に何百ボルトの何百アンペアといった電力を出し入れする装置の需要も増えてきています。 これらを私はシミュレーション電源と呼んでいますけれど、大きな電力を使う様々なメカトロ部品を電子的に模擬する。こういったことがこれからの我々のひとつの領域かなと思っています。 今はモータ、インバータの研究者の方々が使われる試験実験用ですが、生産ラインにも使いたいという要望が出てきています。
■通信の技術は電源製品にどのように活かされているのですか
立花:最近の電源はボリュームもロータリーエンコーダになっており、表示も液晶ディスプレーになって、当然中にはコンピュータが入って複雑な機能を実現しており、パソコンとつながってリモート制御もできるようになっています。先ほどモータの代わりの動きを要望されることを話しましたが、そのときは高速演算性能が求められますので、高速なDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)が必要になります。お客様のシミュレーション用のコンピュータとも高速でつながなければなりません。そういったところに、コンピュータの技術、通信の技術が必要になってきます。当社の通信のコア技術とアナログのコア技術が合体し、さらにコンピュータシミュレーション技術と実際の電気を出し入れすることができる電源部分の技術とを組み合わせた総合技術になると思います。
■御社の電源に関する特質すべき技術は何ですか
立花:精密アナログ技術と、大きな電力を扱うという一見反対のようなところを、うまく融合できることが特徴ではないかと思っています。 大きな電力を扱うということは、配線の長さ、配線と配線の間隔といった物理的な要素が性能に影響してきますし、パワーデバイスにおいては内部の寄生容量とか、素子の特性みたいなもの、そういったものを良く理解していなければなりません。電気の物理特性を良く理解して、使いこなしていくということが重要だと思います。学校で習ったことや、回路図には表われない要素、実際に創ってみた経験知からのノウハウが当社においては50年間分培われてきていると思います。
■今後の電源のあり方と御社の方向性についてお聞かせください
立花:電源は大きくて重たいので邪魔にされるケースが圧倒的に多いので、小さく軽いものにしたいと考えています。なぜ大きいかというと、熱が出るということから放熱器の部分が結構な体積を占めているからで、それを小さくするには熱を出さないようにすることです。そのためには、変換効率を上げていかなければなりません。スイッチング電源ではスイッチングロスを少なくすることであり、当社のソフトスイッチング方式をさらに極めていく必要があると思っています。トランジスタや半導体などの部品の進化も必要ですが、低消費電力の変換効率のいい電源ができていくだろうと考えています。そうすることにより、熱も出なくなり必然的に小さくなってきます。またソフトスイッチング方式はノイズの発生が少ないという利点もあります。 また、お客様にとってより使いやすい、痒いところに手が届くと感じられる高機能性に磨きをかけていく必要があると思います。当社におけるズーム機能付き直流電源「ZXシリーズ」は様々な機能を設けてあります。 ズーム機能とは、例えば「ZX-400L/LA」では、10Vまでしか使わないお客様は40Aの電流まで使え、80V必要な方は5Aの電流が使えるという一台で定格出力電力のラインのなかで出力を選べるものです。普通は80V、5Aの電源ですとその出力しかなくそこで400Wの電力を得ます。同じところに同じ400Wで40A欲しいときは、10V、40A出力の別の電源が必要になります。たとえば、ヘッドランプの試験において12Vのバッテリーと24Vのバッテリーを使われるものであれば、12Vの場合は電流がたくさん必要で24Vの場合の電流はその半分しかいりません。そのようなところには、ズーム直流電源一台で済むことになります。 また、電圧の立ち上げや立ち下げのとき、速く立ち上げたりゆっくり立ち上げたりすることを設定できるスルーレート可変機能もあります。これは、ランプや大容量コンデンサなどのテストに必要な機能です。 シーケンシャルON‐OFF機能は、ZXシリーズを複数台組み合わせて多出力電源を構成したときに、各電源出力のON‐OFFに時間差を付けることができるものです。パソコンを使わずにマルチ接続ケーブル(オプション)を接続して、各電源に遅延時間を設定するだけで組むこともでき、パソコンなどの通信で制御することもできます。 こういった機能のほかに、さらにお客様が喜んでいただける機能を盛り込んでいきたいと思っています。
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■直流電子負荷装置「FK/Uシリーズ」についてご説明ください
立花:これは電気負荷ですので、電源と反対に電気を吸い取る装置になります。先ほど紹介したような電気を回生する機能は持っていません。吸い取る電力量が少ないことと、電力回生よりもスピードの速さといったような、機能中心のものです。 燃料電池に対応したスルーレート可変が可能な電流遮断法により、燃料電池の特性試験を行います。配線が長いときに電流を急激に変化させると配線のインダクタンス分が影響し、オーバーシートが出てしまいます。そういうことを避けるためにゆっくり立ち上げる必要があり、配線が短いときは早く立ち上げることもありますので、スルーレート可変の機能を持たせています。電流遮断法とは、燃料電池から電気を吸い取ってあげながら瞬時的に電気を吸い取らないようにし、そのときの電池の発電状況を、電圧を観測することにより計測し評価する方法です。 交流法も燃料電池の評価方法の一つで、発電した電気を吸い取とるときに一定の電流で吸い取るのではなく電流を任意の交流成分で振って吸い取り、そのときに燃料電池が発電している電圧の交流成分を測定することによって電池の交流インピーダンスを測定する方法です。 この二つが燃料電池評価の主な方法ですが、これらにより燃料電池の電解質膜の劣化状況等で寿命などが分かります。FK/Uシリーズは、この二つの測定が容易に可能な機能を盛り込んでいます。 三番目は0V入力という機能で、従来の製品では1V以上の電圧しか吸い取れないのですが、それを0Vまで吸い取れる機能にしました。従来の集積回路の電源電圧は5Vでしたが、最近は動作速度を上げつつ消費電力を抑えるため、電源電圧3.3Vとか1.8Vなどに下がってきています。そうした高速半導体用の電源を作っておられるメーカーは低い電圧の電源を作ることになります。その電源をテストするときに、低い電圧でも完全に吸い取れる機能を持たせました。 従来からあった機能もありますが、そのほかにもさまざまな便利な機能を持たせています。長年電子負荷を扱ってきた中で色々なお客様からの要望を聞いて、現時点でできる限りのことを全て盛り込んだつもりです。
■今後の展開についてお話ください 立花:二つの点から言えると思いますが、一つは会社の進むべき方向で、我々は大きなエネルギーを扱う装置を作っていますので、省エネルギーに貢献しやすい事業であると思っています。我々のお客様もハイブリット自動車や省エネルギーに向けた商品、コーゼネレーションなどを開発されている方が多く、そこに益々貢献をしていきたいと思います。そのためには、先ほどお話したシミュレーション電源に新しい技術を投入し、ハイブリットのモータとかインバータといった部品の開発が加速できるように貢献をしていきたいと思っています。 もう一つは、汎用電源は部品と一緒で、どのようなお客様がどのような使い方をされているのかなかなか見えにくいものです。その意味で、もっとお客様の懐に飛び込んでよりアプリケーションに近い商品に仕上げていかなければいけないと思っています。
■本日はお忙しい中ありがとうございました |