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| 実装技術 工場レポート 第3回 |
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放送・通信機器を製造する ジェイビルサーキット御殿場 |
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ジェイビルサーキット御殿場 |
ジェイビルサーキットは、米国フロリダ州セントピーターズバーグ市に本社をおくEMS(電子機器委託製造サービス)会社である。自動車、コンピュータ、ストレージ、家電、計測機器、医療機器、ネットワーク、周辺機器、テレコミュニケーションなどの国際的なメーカーに、全世界42拠点で、回路設計、基板設計、試作、電子回路基板の量産、完成品アセンブリ、修理・保守などのサービスを行っている。その日本法人である、ジェイビルサーキットジャパン鰍ヘ、2001年2月に設立され、日本のメーカーに対し、設計、新製品導入(NPI)、資材調達、技術供与を含め包括的な電子機器製造サービスを世界規模で提供する窓口となっている。
ジェイビルサーキット御殿場鰍ヘ、日本で唯一のジェイビルの工場で、放送システム・映像機器を受託製造している。今回、同工場を取材し、ジェイビルサーキット御殿場 代表取締役社長である井上 裕就氏にお話を伺った。 同工場で製造している主要製品を表に示す。同工場は、静岡県御殿場市駒門に位置し、敷地面積は、98,010m2、2階建ての工場は床面積12,681m2を有している。同工場は1985年に日本電気ホームエレクトロニクス(株)のVTR量産工場としてスタートし、1992年に日本電気(株)の通信機器を製造する子会社、御殿場日本電気鰍ニして再スタートした。2003年6月にジェイビルが日本電気鰍ゥら買収し、現在は常駐会社の社員も含め450名が働いている。 ジェイビルとして、電子部品実装サービスが事業の得意分野であるが、同工場に限っては特殊なEMS事業を展開している。これは、ジェイビルが日本に工場をもち、これまでの電子回路基板製造だけでなく、ボックスビルドも含めたトータルソリューションを提供していきたいという意向が反映されている。そのため、従来のジェイビルとは製品群がまったく異なっており、EMS業界全体でみても同工場は特殊な立ち位置を呈している。
放送・通信機器は、非常に大型の製品で、いわゆる普通のエレクトロニクス製品の中では異質な存在である。しかも市場がニッチで、メーカー数も限られており、生産量に大きな変化のある市場でもない。放送機器は、電波が止まったり、不体裁を出さないように、非常に高度な信頼性を要求される。不体裁とは、テレビが1秒間に何十枚かの映し出す画像のうち1枚でも欠落してしまうことを指し、オンエア事故として、メーカーは責任を問われる。そのため、当然のこととしてデバイス、基板、ユニットアセンブリ、ユニットを組み込んだ装置のアセンブリまで何回も検査をして、信頼性の高い商品を作りこんでいる。そして、同工場はこの信頼性を極限まで高めるために実装基板は100%社内で作ろうと尽力している。 こうして高い信頼性をもって作られた放送機器製品は、1回納入されると送信機の場合15〜20年以上使用される。ラジオ用機器やスタジオ設備は10年以内に設備の交換が行われ、特にスタジオ機器は様々な技術革新があり、放送局間で番組制作競争をすることからいち早く新しい技術の導入を希望するために、交換時期が早くなることもある。 放送設備も以前は真空管が用いられていたが、現在はすべてトランジスタで構成されている。放送機器の電力効率はいわばヒータのようなもので、高周波のUHFでは100kWの電力を入れても20kW位しか電波を出力しない。中波だと600kW入れて500kWである。周波数が高くなればなるほど効率が悪くなり、出力されたもの以外は全部熱に変わるため、冷却の問題がついて回る。冷却は蒸発冷却方式を採用していたが、水の取り扱いの問題が生じたので、トランジスタに変わってからは、ほとんどが空冷に移行した。しかし、空冷方式では送排風用に大きなダクトが必要になる。そのため、パイプを2本を通して循環させ、熱交換器及びポンプ関係は別の場所に配置することができる水冷方式がユーザーに採用されるケースがデジタル放送機器において生じて来た。
同工場では、クライアントから受注した製品の部材発注から製造、場合によっては据え付け、メンテナンスなどのアフターサービスまで行っている。同工場で製造した送信機は、世界100 ヶ国以上に出荷されており、月産30〜50台(出力の大きいものほど少量生産)で、多品種少量生産を強いられている。
工場の2階部分にSMTラインがある。SMT工程は一つの部屋に仕切られており、富士機械製造とJUKIのセル生産タイプのモジュラマウンタが組み込まれたSMTラインが2ライン稼動している。ここでは日に20回ほどの段取り替えが行われ、中には1枚しか流れない基板もあるが、平均では1種類の基板が10〜20枚流れている。オフラインでアジレント社製の外観検査装置が置いてあり、これで検査して疑わしいものは、ラインのすぐ横にあるテーブルでリペアが行われる。最近では、放送機器用の基板でもBGAが使われるようになってきたため、X線検査も行われている。基本的にはこの部屋の中で信頼性の高い基板を作り、外部に不良品を出さないよう作業している。段取り替えが非常に多いため、ラインが止まっている時間が長い。また、世界中に製品を出荷するため、ヨーロッパ向けのものは鉛フリー実装に切り替える必要が出てきている。
この部屋は段取り替えがすぐにできるように様々な部品やメタルマスクが所狭しと置かれている。また、部品が全部ストックされているので、酸化などの問題で、室温に気を遣っている。精度を要求されるので、温度と湿度の管理は徹底している。 設計上、スクリーンマスクの板厚と開口面積、そしてデバイスの種類によって、製造上ではんだ印刷に不具合がでることもある。その際には、クライアントの設計部隊にフィードバックをかけて、一番最適なはんだ量にするにはどうしたらいいかを一緒に作りだしていく。不良が出るとコストアップになるため、トータルで如何にいいものを作っていくかクライアントとともに考えている。 SMTラインは2交代制で24時間稼動しているが、実際動いているのは20時間ほどである。1シフト18人ほどで、昼間は部材の配給や治具の管理担当者もいるので人数が多いが、夜間はマシンオペレータのみである。段取替えの多い現場教育は、OJT(On the Job Training)で行っている。技術の継承は徒弟制度で行わないと放送機器のような複雑な機器の対応をするのは難しいそうである。
この部屋のすぐ横にディップはんだ槽があり、手付けはんだのテーブルが何台も置かれており、作業者が挿入部品をはんだ付けしていた。放送機器は大きな装置だが、電子回路基板は高密度で大きな部品と小さな部品が混在している。例えば、コンデンサは家電用ではなく、工業用のコンデンサが搭載されている。実装ラインには挿入機はなく、挿入部品はすべて手付けされている。 また、本年1月後半に導入したというフライングプローブテスタがディップはんだ槽の横に置かれていた。機種が多いので、インサーキットテスタでは治具のコスト負担が大きくなるためフライングプローブテスタを導入して、現在は調整中である。
電子回路基板を作り終えた後、ユニットアセンブリに移る。その後、ユニット検査、ベア(筐体)に入れて放送局に納める形にして最終検査をする。最近では、CPUの能力も高くなり、膨大な量のソフトウエアもインストールできるようになっている。そのため、検査ではハードウエア単体のチェックより、ソフトウエアをインストールして検査をする工程が圧倒的に長く、長いものでは数ヶ月間考えられる試験をすべて行ってから出荷される。現場は製造担当よりも試験と調整の担当者が多い。
1階では送信機の組み立てまでが行われている。電波を発信するため、部屋全体に防磁シールドがされている。また、放送機器は通常、人間が生活する環境ではないところに設置されるため、過酷な温度条件にさらされる。そのため、巨大な恒温槽の中に入れられ−10〜+45℃の温度試験が行われている。また、工場内にはあらかじめ水冷の設備製造用に水道配管がしてある。 同工場のラインバランスは非常に悪く、滞留時間や工数などに、一般的な数値が当てはめにくい。また、非常に高額な部材を大量に購入するため、部材在庫を削減するため納品はジャストインで、生産のプロセスを見ながら納入の時期を指定しないと、抱える資産額が大きくなってしまう。そのため、資材責任者は、発注伝票を一枚一枚チェックしている。長く、放送機器などの構造設計を行っていたので、部材在庫を減らすためには構造をよく分かっている人がチェックするのが一番とのこと。最近ではほかの人も伝票を見れるようになり、部品在庫が減ってきている。 今後、日本のテレビは地上波デジタル対応になり、放送システムもデジタルに移行していく。テレビ局は2006年12月までにデジタル波を送信する必要があり、日本中にデジタル波を飛ばすには多くの中継局が必要となるため、今後は送信機から中継機に市場が移っていくことになる。日本では、送信機市場は、2、3社が占有している。中継機になると、さらに複数のメーカーが加わってくるため、より競争が激しくなっている。 地上波デジタルへの移行が終わると現在の繁忙が収束に向かうため、同工場は多くの業種から受注を得るようにしていかなくてはならない。これまで主として日本電気の生産システムで管理してきたが、今後はグローバルに対応できるようにジェイビルスタンダードのSAPシステム、ものづくりシステムのMES、また、JISやISOといった規格対応にも取り組む方向で組織化しようと考えている。 同工場は、大電力で外的要因に強い大きな機械の製造を得意としており、無線技術と画像技術を保有している。ハイビジョン画像に必須の圧縮伸長技術や放送局の館内に敷設される信号ケーブル光伝送技術にも対応しているが、VTRの生産だったため量産技術ももち合わせており、当時の人材も現役で活躍している。このように高度な技術をもった人材が、試作製造からクライアントと一緒に製品を作りこんでいく。また、ジェイビルグループにはJTSという設計部隊と、JGSという保守の会社もあるため、トータルソリューションを提供できる。 製造において同工場を利用しない場合でもジェイビルグループの窓口として利用すれば多用なニーズに合わせた生産が可能である。量産でコストを低く抑えたければ、御殿場から中国・インドの工場へと製造指示を出すことができる。また、商品を出荷する土地の消費地に近い場所での製造も可能である。そのためにジェイビルでは何処でも生産データが瞬時に移せるようなシステムを組んでいる。クライアントは自前の工場なしで、様々な生産方法を選ぶことが可能となる。このように同工場は、生産現場というだけではなく、戦略的なパートナーとしても存在している。クライアントは日本にいながらグローバルビジネスを展開できるのである。
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