【インタビュー】カーAV機器の調整検査に最適な複合計測システム
トム通信工業株式会社
トム通信工業はAV計測器『levear』シリーズの新機種として、カーAV機器の調整検査に最適な複合計測システム『AVマルチテスタ VP-7670T』を10月1日に発売した。パナソニックモバイルコミュニケーションズより計測器事業を引き継いでから3年半。同機種は同社が初めて1から開発を手掛けた製品だ。計測部部長の小暮好康氏と同技術チーム技術担当部長の小林良照氏に開発経緯と製品化の狙いについて聞いた。
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計測部部長 小暮 好康 氏(左)
同部技術チーム 技術担当部長 小林 良照 氏(右)
■パナソニックの計測器事業を引継ぐ
トム通信工業は、移動体通信機、無線通信応用機器、映像監視機器、情報処理機器、電子計測器などの開発・設計・製造・サービス事業を手掛ける。1963年の会社設立時から松下通信工業(現パナソニックモバイルコミュニケーションズ)の協力会社としてパナソニックブランドの計測器や電波関連機器を製造する一方、SDドライブレコーダや特定小電力無線モジュール、業務用無線機など自社製品の製造販売も行ってきた。
ターニングポイントは2005年4月。パナソニックの経営方針により、パナソニックモバイルコミュニケーションズが計測器事業を取り止め、同社がその事業を引き継ぐことになった。その際、すべての計測器を引き継いだわけではなく、強力な市場競争力をもつAV計測器、中でも信号発生器、オーディオアナライザ、オーディオ・ラジオテスタ、AVテスタの4分野10機種に絞った。それが『levear(レヴィア)』シリーズの始まりである。
今日までの3年半を、小暮好康氏は「1年目は工程を再編成するなどモノづくりに専念。2年目は機種のリニューアル開発を通しての技術の確立。3年目は販売力の強化などに取り組んだ」と振り返る。さらに3年目の中頃から営業強化と並行して進めたのが、新規の機種開発。それが今回発売した『AVマルチテスタ VP-7670T』である。
AVマルチテスタ VP-7670T
■コンパクトな筐体に3つの測定モードをもつ
最近はカーオーディオといっても、カーナビゲーションに代表される映像系製品が増えている。しかし、従来levearシリーズにはビデオ用計測器が1機種だけしか存在しなかったため、ユーザーニーズに的確に応えることが難しかった。そこで同社ではこの分野にターゲットを絞ったわけである。
VP-7670Tは主にカーオーディオメーカーなどの生産工程での利用を想定した製品である。コンパクトで小型、低価格、オールインワンで、ユーザーは計測にかかるトータルコストを低減できる斬新な製品だ。最大の特徴はダイレクト、アクティブ、パッシブの3つの測定モードをもつことだ。ダイレクトモードは各種の測定をマニュアル操作で行うモードである。パネルには操作画面はなく、本体にCPUを内蔵し、そこにディスプレイをつなげて使用する。マウスを使い、パソコン上の操作画面に従って測定条件を設定すれば、AM/FMSGやビデオ、オーディオ測定などが同時に行え、波形を見ることもできる。
アクティブモードは自動計測システムを構築する手段となるモードだ。ダイレクトモードではオペレータが必要だが、アクティブモードではパソコン上で専用のプログラムエディタを操作すれば自動計測のプログラムを簡単に作ることができる。そのプログラムをネットワークもしくはUSBメモリ経由で本体にダウンロードすれば、あとはパソコンがなくても本体のみで自動計測してくれる。
パッシブモードはずばり、LAN経由でパソコンと1対1でリモート制御できる機能だ。この3つのモードを使い分けることで、ユーザーはVP-7670Tをさまざまなプロセスで利用することができるという。
ダイレクトモードの操作画面
■アナログ回路技術がポイント
信号系とオーディオ、ビデオ測定を一つの筐体に取り込むことができたのは、回路構成をデジタル化したことが最大のポイント。従来、計測器の信号処理系はアナログ回路で構成されるのが一般的だったが、オーディオとビデオ測定に関するかなりの部分をデジタル化することに成功、これによりコンパクト化が実現できたという。もちろん、それだけ苦労を伴った。計測器はデジタルよりもアナログ方式の方が性能を確保しやすい。そこで、デジタル化しても性能を落とさないようするために腐心したのだ。「デジタル化するためにポイントになったのは、何を隠そうアナログ回路技術だった」と小林良照氏は指摘する。中でも、信号を低ノイズでADコンバータに持ち込むまでが大変だったとも。
同製品の価格はフルスペックでも105万6600円(希望小売り価格)と性能の割にきわめて安価だ。環境を配慮してスペースファクタは小さい方がよいと考え、機能をまとめた結果、省エネにもつながった。「価格も衝撃的かもしれないが、背伸びしただけの甲斐のある性能が確保できたことに満足している」と小暮氏。同社では来年3月までの半年間で200台の販売を見込んでいる。
エレクトロニクス電子計測技術2008年11月号掲載