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2010年2月 1日 (月)

【インタビュー】一枚の非球面レンズで最大1000倍の撮影が可能コンパクトデジタルカメラを顕微鏡に変える

― 非球面レンズによる高精度撮影 ―
株式会社オプトハイテック

 約27年前、初めて内視鏡手術用のレーザ集光非球面レンズの研削を行った株式会社オプトハイテック代表取締役 石附 英昭 氏。当時は早稲田大学と、修士課程の学生をしながら協力して開発を進めたが、その後、光学機器、X線解析研究、シンクロトロン加速器、重機械の開発などを行い、1997年に同社を設立。大手メーカーをも凌駕する技術で、様々な製品をラインアップ。非球面レンズを使った同社製品について話を伺った。

★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★

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代表取締役 
石附 英昭氏

■設立までの経緯についてご説明ください

石附:1968年に現在の筑波大学の前身である東京教育大学大学院光学研修所に入学し、同大学院にてノーベル賞受賞者で物理学者の朝永振一郎氏のもとで、物性物理学、真空蒸着のメカニズムについての先端的研究を行いました。その後、早稲田大学大学院に進み、X線結晶学とその光学研究を行い、同大学院の博士課程を修了し、電子機器を扱う企業に就職しました。
 東京大学物性研究所研究員も勤め、各研究機関、大手メーカーの蓄積技術を活かし独立し、1997年に有限会社としてオプトハイテックを設立、2000年に株式会社化しました。現在は光学機器の開発を進めながら、早稲田大学客員研究員の活動に加え、ほかの二つの大学で理工学部の学生の修士論文を指導しております。

■非球面レンズの開発に携わるようになったきっかけについてお話しください

石附:今から約25年前、早稲田大学の計測工学研究所と共同研究をしていたころ、修士課程の学生の指導をしておりました。その一環として、手術用の内視鏡に取り付けるレンズ設計の話を、早稲田大学の主任教授から受けました。当時としては画期的で、内視鏡で肺ガンの細胞を見ながらYAGレーザ光線で肺ガンを焼き切るというものでした。そこで初めて非球面レンズに携わり、そして現在に至っています。
 当時、レーザメスに使われていたのは球面レンズで、球面レンズは収差が多いため光が散ってしまうという問題がありました。球面レンズを光ファイバーに取り付けると端面が焼けてしまう問題も抱えており、水冷し対応していました。
 そこで、非球面レンズの設計を行うことになったのですが、私自身、物理学を専攻していましたが、光学に関する知識はありませんでした。設計を行うといっても当時は非球面レンズを研削できる旋盤もなく、設計ソフトもない状況でした。そこで、双曲非球面レンズの設計プラグラムを公式から自作し、ポケットコンピュータを用いて、一週間かけて最適な値を導き出しました。
 なぜ、非球面が優れているかというと、人間の目と同じ形状、構造で、レンズが一枚なので収差がないからです。そのレンズを光ファイバーの先端に取り付け、2mm程度まで被写体に近づけて画像を伝達します。この方法により、一昼夜使っても熱を発することはなく、水冷する必要もありません。これが非球面レンズに携わるきっかけでもありました。
 光ファイバーの先端に取り付けたのは、外径φ1.5mmの非球面マイクロレンズで、レンズの厚さは1mm、焦点距離は1mmとなっています。全入射画角が90度近くあり、ほぼ真横まで歪みのない画像を映し出すことができます。
 これらの設計技術、外径1mmまでの研削、研磨技術により精密製作されたレンズは、東京大学の先端技術研究所において、山羊の冠動脈の生体直接観察に使われており、長年の課題の解決に向けて役立っています。また、このカメラは東京女子医科大学の研究者にもご購入いただいております。

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外径φ1.5m

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外径φ1.0mm

■非球面レンズを使った御社の製品についてお話しください

これまで、非球面レンズを使った製品を多く開発してきました。その多くが、産業用ですが、個人レベルでも使える製品も開発しています。その代表となる製品が、一枚の非球面レンズをデジタルカメラに取り付けるデジタルカメラ顕微鏡システム『OPT-DGL』です。
 同製品は、両面テープでアタッチメントをレンズ部に取り付ける構造で、デジタルカメラのズーム比率にもよりますが、14インチモニタ換算で300~1000倍の高倍率を実現しています。解像度も非常に高く、最大解像度は数ミクロンでCCDの画素ピッチを観察することもできます。現在では、このカメラシステムと独自の照明装置により、大学院での卒論指導においてガン細胞の紫外線発光観察に成功しています。
 この製品の特徴はデジタルカメラが顕微鏡になるだけでなく、顕微鏡と決定的に違うことがあります。それは、顕微鏡はレンズと被写体を限りなく近づける必要がありますが、このデジタルカメラ顕微鏡システムは、少なくともレンズと被写体を2~3mm程度離して撮影することができ、被写界深度が非常に深いため、海中プランクトンやミジンコなどの微生物を容器に入れたまま、液中での三次元的動画像をリアルタイムで撮影することができます。また、通常のレンズとは異なり、立体的な被写体でも全体にピントの合った画像を撮影することができます。通常ズームでは手ぶれすることなく手持ちでの撮影も可能ですが、超高倍率ズームは三脚で固定して撮影する必要があります。超高倍率ズームでシャッターを切るときは、セルフタイマーなどのカメラの機構をうまく利用することをお勧めします。デジタルカメラを顕微鏡に変える同製品は、2007年4月に「中小企業優秀新技術・新製品賞」を受賞しました。
 最近の学生は理科離れが進んでいます。自宅にあるデジタルカメラや携帯電話に非球面レンズを取り付けて、簡単にマクロやミクロの世界が楽しめれば、理科に対する考え方も変わるのではないかと考えています。

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未装着

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『OPT-DGL』装着

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Dai17opt12_2
デジタルカメラ顕微鏡システム『OPT-DGL』


■デジタルカメラに装着するタイプのほかに、どのような製品があるのでしょうか

石附:OPT-DGLの元にもなった、接写用の超高被写界深度を誇る超高倍率『OPT-DB2』を2002年に開発しました。この製品は非球面レンズを複数枚組み合わせたシステム構成で、約9~50mmの物体距離を持つ近接拡大用レンズです。
 倍率を変えるには、単にレンズを取り付けた筒を回転などにより伸ばすことで高倍率化を実現させています。このレンズはアダプタを装着すればCCDカメラに取り付けることもできます。それが顕微鏡高倍率レンズシステム『OPT-HMAG』です。OPT-DB2を対物レンズとして用いたCCD顕微鏡で、対物レンズを固定し、CCDセンサーを鏡筒内部で上下することにより、通常のCCDカメラと異なりレンズ交換することなく、倍率を連続的に変えることができます。最大倍率は14インチモニタ換算で約1000倍、通常の顕微鏡に比べ、深度が深く立体的な画像を映し出すことができます。通常、高倍率で撮影した場合、レンズから物体までの焦点位置が異なるものはボケたように映ってしまいます。しかし、このOPT-HMAGに使用されているレンズOPT-DB2はある対象物にピントを合わせても、それとは異なる距離の対象物もはっきり映し出すことができます。これを使えば、コンデンサと基板表面のように、奥行きが1cm近く違っていても双方にピントが合うため、基板検査や半導体素子検査に向いています。
 実は、3年ぐらい前に、ある大手検査器メーカーの製品と当社の製品を使って、研磨研究所において金属表面の直径数ミクロンの窪みを撮影するという比較をしたことがあります。大手メーカーの製品は被写界深度を出すため焦点位置を変えて撮影し、それを画像処理で合成する仕組みをとっており、価格的も非常に高価です。ちなみに当社の対物レンズユニットは外径の直径10mm、長さ13mm、重さ2g程度の超軽量小型であり操作性も優れております。極めて容易な構造で、システムの価格は大手メーカーの数分の一ほどです。それにも関わらず、傷の拡大倍率にも優れ、深さ方向内部の細かいスクラッチまで観察が可能でした。
 当社の独自技術について、「ノウハウを教えてほしい」と、展示会などで多くの大手企業から要求があります。独自技術  というものは、あくまでも自分の努力によって達成できるもので、人の模倣のみの技術は実に恥ずかしいことかも知れません。自分で手を汚してレンズを研磨し、光学、機械工学を含めたあらゆる見地から製品を開発しないと、技術の達成は不可能であると、答えてあります。
 このほかに、顕微鏡高倍率レンズシステム『OPT-HMAG』同じく、CCDカメラに取り付けるタイプで『OPT-HANDY1』という製品があります。この製品は、高被写界深度で、無限遠から近接での高倍率撮影が可能な高性能レンズを備え、「平成13年度あさひ中小企業ベンチャー賞」を受賞しました。また、新開発のレンズを用いた、作動距離160mmと非常に長く、被写界深度の高い超高被写界深度『OPT-LLW100』というレンズもあります。作動距離が長く、26mmも高さが異なる基板表面とコンデンサ上部の両方にピントを合わせることもできます。

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顕微鏡高倍率レンズシステム『OPT-HMAG』

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超高被写界深度『OPT-LLW100』

■撮影関連機器についてお聞かせください

石附:レンズとは異なりますが、撮影関連製品も開発しています。暗視野装置『DKIII』という製品で、被写体の表面及び内部異常の検査に使用することができます。たとえば、ガラス、プラスチック表面の微細傷の検査では、表面にある傷を白く浮かび上がらせることができます。また、溶液中の汚れ、カビ、微粒子などをはっきりと映し出すことができ、飲料水などに含まれる異物を調べることもできます。そのほかの用途として、微小ランプのガラスの肉厚・内部検査や物体の輪郭を浮かび上がらせることもできます。
 この製品は産業界だけでなく、環境対策にも使うことができると考えています。たとえば、中性洗剤溶液中の微粒子、つまり泡を映し出すこともできるので、排水中の中性洗剤の濃度を調べるのにも使うことができます。

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暗視野装置『DKIII』を使った撮影


■今後の展望についてお聞かせください

石附:工業検査用途への展開だけでなく、さらに環境問題にも取り組んでいきたいと考えています。先ほど暗視野装置DKIIIで排水中の中性洗剤の濃度を確認できると言いましたが、実際、ある企業から排水や汚水を調べる装置を探しているという話を受けたことがあります。
 この方法の基礎実験は数年間、湘南工科大学の電気電子工学科で学部、修士論文のテーマとして私が直接指導し、実際の海、河川の水、工場排水を入念に調べたものです。水の汚れ、生息している微生物の3次元的動画を撮影し、思わぬ奇異な微生物と出会ったものです。暗視野装置DKIIIとデジタルカメラ顕微鏡システムOPT-DGLを使えば、高額な光学顕微鏡及び照明試験装置を使わなくても、手持ちサイズの軽量簡易装置で液中の汚れ、微生物などを調べることができます。当社の製品を使って、企業だけでなく個人レベルでも環境問題に目を向けてほしいと思っています。
 現在では、デジタルカメラあるいはCCD顕微鏡に、新たに開発した高輝度暗視野照明を施し、人間のコラーゲン細胞、子宮癌のHeLa細胞からの蛍光発光の観察に成功しており、今後さらに医療面で社会に貢献しようと考えております。
 また、今後は販売を強化しようとも考えています。私は根っからの研究者で、研究・開発に没頭するあまり、商売は二の次にしていました。そこで、製品を一通りラインアップすることができたので、これからは当社製品を広く展開することに専念しようと考えています。

■本日はお忙しい中ありがとうございました。

メカトロニクス2007年10月号掲載

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