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2010年1月 4日 (月)

【インタビュー】世界の技術と提携し世界レベルの製品を

—家庭紙用抄紙機の市場に特化しナンバーワンを得る—
川之江造機株式会社

 四国中央市の産業は紙パルプ関係が80%を占め、富士市を抜いて日本一という。
そのような地域から生まれた、家庭紙用の抄紙機で国内シェア60%。
ニッチトップを維持し、絶え間ない技術成長に努力する川之江造機株式会社 代表取締役社長 篠原 正能 氏に抄紙機の技術と展開について話を聞く。

★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★

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代表取締役社長 篠原 正能 氏

地域産業とともに製紙機械の分野へ

■御社についてお話ください

篠原 :当社は1944年(昭和19年)11月の設立ですが、当時は戦時中で呉海軍工廠の特定工場として魚雷の部品を製作することから始まりました。翌年には終戦になり仕事がなくなったわけですが、地域が紙の産業の盛んなところでしたので、製紙用の機械部品を作ることを始め製紙機械の分野へと入っていきました。
 製紙の機械といっても様々ですが、ここの地域は手漉きから始まった製紙業の会社が多く、手漉きから機械抄きに変わっていく中で、その中小製紙会社が扱う機械を手がけていきました。地元の川之江市、伊予三島市や高知県伊野町が紙の産地の集積地で、この地域から取引が始まり段々と全国に広げていきました。
 最初は紙の幅も1.2mと狭く、スピードも遅い円網式の機械でした。昭和30年代後半の高度成長期以降
は、製紙会社は生産量の大きなものを求められるようになり、機械も紙幅が広くスピードが速いものが求められるようになってきました。当社もユーザーのニーズに応える機械作りを目指していきました。当時の四国、川之江は都市部から見たら、今の海外みたいなものでしたから、ユーザーに当社の話を聞いていただくとか、工場を見てみようと思っていただくためには良い機械を作らなければならないというのが、先代からの当社の考えでした。富士地域にも製紙の機械メーカーがありますので、大阪、東京のユーザーを海外のような川之江にきていただくには、とにかく良い機械を作らなければなりません。その様な気持ちで努力し、地元
へ機械を提供していたのが少しずつ全国からも評価されてきました。
 1970年ころから、現在主力製品となっている家庭紙用の抄紙機の開発に取り掛かりました。需要が増える中で、ユーザーの製紙会社も効率の上がる抄紙機を要求してきましたので、それに応える高速の家庭紙
用抄紙機に取り組んでいったわけです。家庭紙用というのは、トイレットペーパとかティッシュペーパなどですが、日本の国民の生活レベルも上がっていき、生産量も増えてきたわけです。
 同時に、抄紙機で抄いた紙を最終的に製品にするための紙加工機械、設備も手がけるようになってきました。抄紙機、紙加工機のメーカーはありますが、一社で両方をやっているのは、現在でも世界的に珍しいと思います。

常に改善改良を加えたものづくり

■抄紙機における他社と違う技術はどこでしょうか

篠原 :当社の製品は、和紙を抄く抄紙機のスタイルで、それを高速化したものです。フォーマという抄紙機中枢にあたる部分があり、紙の原料液である紙料を網に吹き付け、水分を吸い取ってシート状に形成する仕組みになっています。当社の抄紙機はそのフォーマのシリンダ部分が円網タイプになっており、吸収の早さと地合の均一性に優れています。他社のは、長網タイプといってベルトコンベアのようになっており、ワイヤーを走らせますのでワイヤーの寿命が短く問題をかかえていました。円網タイプは、和紙抄紙機用として以前からあったのですが、速度が遅いものでした。
 円網シリンダタイプでは、瞬間に紙層を形成しようとしたら自然の力だけではだめで、シリンダの中を真空にすることにより、網に乗った紙料から水を内側に吸うようにします。これは当社が考え出した方法で、特許も取っており、円網シリンダタイプの高速化をできたのは当社の製品だけです。これが『ベストフォーマヤンキー抄紙機』です。
 抄紙機は、機械だけを売るというものではなく、ひとつのプラントになっています。作った機械を社内でテストするわけにはいきませんので、ユーザーに納めてユーザーの意見を聞き、操業状態を見て、少しずつ少しずつ改善、改良を加えていくことになります。抄紙スピードも始めは分速200mぐらいでしたが、300、500、 800、1,000mになり、今は1,500mになっています。これは、常により良いものをこしらえるという、創業当時からの精神を受け継ぎ、常に改善改良を加えるという姿勢で仕事に取り組んできた結果です。そのために、当社の社員約190名のうちの3分の1が設計を中心とした技術者という体制で行っています。そのほかに、製造技術者、プラント関係の技術者などの技術者もおります。技術を重視した会社というのが、当社の特徴だといえます。
 当社のもう一つの特徴として、全て自分たちで設計し、全ての部品を自社で製作していることです。そして、社内組立、現地での据え付け、試運転を行い、ユーザーと約束している性能を実現して引き渡しています。引渡しの時は、必ず設計担当者も所定の性能が出るところまで一緒に立会っています。そうすることにより、ユーザーからの声を直接肌で感じることができますし、自分で設計したものを自分で試運転することにより次の製品への発想の手助けにもなるからです。この姿勢を繰り返してきたことにより、製品も少しずつ性能アップしてきました。

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ベストフォーマヤンキー抄紙機

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円網サクションシリンダ

■『ベストフォーマヤンキー抄紙機』についてもう少しお話ください

篠原 : ベストフォーマヤンキー抄紙機は、1973年に第1号機を作りました。同じクラスの抄紙機のなかで
もあらゆる面で最先端を歩んできており、特許『ベストフォーマ』によってえられる紙質は高品質で、ユーザーからの信頼と評価のもとに現在まで約140台の納入実績があります。
 先ほど、円網タイプのシリンダで話したことが大きな特徴ですが、もう少しほかの特徴を述べてみたいと思います。
 ベストフォーマにより、設定坪量に対しての均一地合を保つため高坪量から低坪量まで広範囲において良好な抄造ができ、パルプの使用量に無駄がなくなります。ベストフォーマの真空源はウォータレグと真空ポンプの併用型で、消費動力は大幅に削減し、小容量化されるため騒音も低くなります。また、特許のインレット構造のマイクロタービュレンス効果により、従来機に比べ高濃度抄造ができるようになり、ポンプおよびスクリーンの動力は少なくすみます。ブロースルードレネジーシステムと熱風乾燥装置を合理的に組み合わせているため、蒸気の有効利用がなされ原単位が低くなります。ほかにも、クレーピングおよびクリーニングドクターの長寿命、ワイヤー・フェルトの長寿命、コンピュータ制御集中操作装置により操作性の良好などの特徴があります。

■加工機にはどのようなものがあるのですか

篠原 :紙を『抄く』ことをした後の加工機としては、『巻く、切る、折る、包む』という紙を製品にしていくための機械があります。例えばトイレットロール加工機では、トイレットペーパの太さに巻きなおし、長い幅のものをトイレットペーパの幅に合わせてカットするものがあります。また、ティッシュペーパやペーパタオルを折りたたみ、箱に詰める機械のラインがあります。印刷用紙や新聞紙のロールを、全自動で包装する機械も当社で作っています。
 ティッシュの折りたたみ機を使った箱入りのティッシュペーパは、日本では1963年ごろに日本の製紙会社と米国の会社の合弁会社で出されました。当社も需要が出てくるだろうと開発に挑みました。社内では何
回も作っては壊しを繰り返し、できたものをユーザーに納めたところ使いものにならないと3日で返されたこともありました。試行錯誤の上、当社独自の技術を取り入れたものを開発しました。しかし、今のティシュペーパのように生産量が多く安く消費者に供給されるものは、ロールから紙を供給する装置を200台並べて行うラインで作られるので、大手しか使うことができません。そういう意味では、当社の折り機は大量生産に移る前の小、中量生産に利用されました。今は、その技術を活かし、ペーパタオルや脂取り紙の折機などに応用しています。

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ボックスティシュー全自動加工ライン

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トイレットロールワインダ『90K-H型 全自動高速機』

■全自動巻取ロール包装機についてご説明ください

篠原 :製紙メーカーがロールを出荷するときは、それまで手で包装していました。それを、当社が全自動で受け入れストッパから表面包装、耳折り、側面包装、ラベラーまで全工程を自動で行う装置を開発したわけです。今では、大手製紙メーカーのほとんどで使っていただいています。
 包装能力は1時間に170本処理することができ、異幅、異径ロール製品が混入された場合でも、径と幅を測定しそれにあった包装紙を繰り出してきて各行程の幅、径が自動的にセットされ、ロール製品を完全に包装することができます。
 この製品の1号機は1966、7年で、1985年に異種ロール対応タイプの全自動巻取ロール包装機を開発しました。ユーザーの処理量にあわせて、半自動や特殊型などいくつかのタイプをそろえています。

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JW巻取包装機 『JW II 型』

世界の最先端と技術提携し世界レベルへ

■『クレセントフォーマ抄紙機』についてお聞かせください

篠原 :ベストフォーマヤンキー抄紙機の1号機の製紙スピードは分速350mほどでしたが、1986年に分速1,400mの抄紙機を開発し、今は、1,500mになっています。しかし、1,500m以上は出すことができません。世界的には、1,800m、2,000mという抄紙機があります。当社もそういう技術を取り入れていかなければならないと考えました。
そこで世界の最先端と技術提携をし、当社の技術と合わせ抄紙機の開発をしました。それが『クレセントフォーマ抄紙機』です。これは、この分野で世界トップクラスの開発実績と技術力を持っているスウェーデンのメッツォ社と技術提携をすることによって開発することができました。抄造スピードは分速2,200mと、世界最高水準になっています。シートフォーミングはソフトながら強さを持ち、脱水能力が高くプレス機構も高精度なものです。
 抄紙機関連機器においても、GL&Vカナダ社と技術提携を行っています。BTF全自動セントラルディストリビュータの導入で、既設ヘッドボックスに対して全幅均等な原料供給を行うことができます。さらに、既設ヘッドホンボックスを全自動ダイリューションコントロールヘッドボックスへとグレードアップすることにより、幅方向プロファイル、マシン運転効率を向上させることができます。この技術も世界レベルのものであり、関連製品においてもその技術を取り入れていくことにより、世界で通用する製品にしていかなければなりません。
技術の提携により、家庭用紙製造においてあらゆるニーズに対応できるという体制になりました。そのことにより、さらにユーザーの信用信頼を得ることができるようになったと思っています。そして、家庭紙用抄紙機においては、アジアナンバーワンに手が届くところまでくることができました。

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クレセントフォーマ抄紙機

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BTFダイリューションシステム

■今後の展開についてお話ください

篠原 :今の時代は世界レベルで性能が評価される時代であり、世界レベルの製品を持たなくては当社のような地方の中小企業は勝ち残っていくことは難しいと思います。そのためには、当社の力だけでは及ばないので、海外先進企業とタイアップすることにより、足りないものを補い、市場のニーズに応えていかなければなりません。
 日本における製紙産業は、成熟産業であり生産高もずっと変動はありません。当然、設備投資も少なくなっています。そこで、現在伸びている中国市場への開拓に注力を注いでいるのが現状です。当社は、ベストフォーマヤンキー抄紙機の中国への輸出実績が30台以上あります。中国が輸入している家庭紙用抄紙機の台数は、世界のメーカーと比べても当社の製品がナンバーワンになっています。
 背伸びをせず、当社の規模に合った家庭紙用抄紙機という大手が介入してこないような小さな市場を狙っていくのが、当社のような中小企業が残っていくために必要なことだと思っています。

■本日はお忙しい中ありがとうございました。
   さらなるご発展を期待しています。

メカトロニクス2008年1月号掲載

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