【インタビュー】未知なる世界のフロンティアは『光の新たなる可能性』を求め続ける
─ 光周波数の分野でオンリーワン企業を目指す ─
株式会社光コム
間隔が極めて正確な“光の物差し”として、光の周波数を計測するのに利用されている光コム技術。その技術を応用して、通信分野から多方面へと展開している株式会社 光コムの代表取締役 工学博士 朝枝剛氏、常務取締役 工学博士 興梠元伸氏に同社の技術と企業展開について話を聞く。
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代表取締役 工学博士
朝枝 剛 氏
■光コムの技術をもつ御社ですが、設立の経緯についてお聞かせください
興梠:私は東京工業大学の研究室で助手をしており、そのころから起業化したいという思いがありました。光コムはドクターのころからの研究テーマで、この技術を何かに展開したいと考えているとき、JST(科学技術振興機構)のプレベンチャー事業が始まりました。ちょうど第一期の応募があり、運良く選定されました。その後、3年間は開発を行い、現在の元となる技術ができあがり、2002年に起業化に踏み切りました。今振り返ると、光の発生器という装置自体はできましたが、未完成の部分は多かったように思います。現在も製品を販売していますが、開発の余地はあると感じています。
起業して約1年後、会社の専属となり、大学の研究室を出ることになり大岡山のキャンパスのベンチャー・ビジネス・ラボラトリーに移りました。1年目は何とか黒字でしたが、企業としては未完成の状態でした。売り上げがあるといっても、メンバーが少ない分、経費がかからず黒字だったという程度でした。
■御社が誇る光コム技術と光コム発生器とはどんな装置ですか
興梠:光コム発生器とは、レーザの周波数の基準となる目盛りを作っているような装置、という表現が分かりやすいと思います。もちろん、レーザの目盛りはありませんが、それを人工的に作ったのがこの光コムです。単一波長のレーザから周波数軸のメモリに相当する一定間隔に並んだレーザを広帯域に発生します。当社は、この間隔を正確に制御することが可能な光コムモジュールを開発、販売しています。光コムは間隔が極めて正確なので、レーザ周波数の物差しとして利用することができ、またこれを使うことでレーザの周波数を直接カウントが可能です。
起業当時、光コムの展開についてはそれほど考えていませんでした。当時は、光の計測器というイメージで捉えていたので、光コムモジュールを活用した製品開発を行っていました。当社で光コムモジュールやその周辺モジュールを作り、計測器メーカーが必要なモジュールを利用し、光コムモジュールを搭載した製品が世の中に出ていくという感じでした。今では計測以外の用途にも応用されているので、通信分野を含む様々な分野で使用されています。光コムモジュールは、起業当時から開発を続け、最近では性能も信頼性も上がり、当社の武器となる光コムモジュールができました。さらに、この光コムモジュールを各種用途向けに開発を続けています。
今の光コムモジュールの波長は光通信帯(Cバンド)ですが、今後は色々な波長帯に展開しようという計画を進めています。電磁波ですと、周波数・位相を制御していますが、光の領域の場合、周波数・位相の制御は難しく広く実用化されていませんでした。当社は、周波数・位相制御が誇る技術でもあります。起業当時、通信分野の開拓を中核事業にしていたときもありましたが、通信バブルがはじけたのをきっかけに広い波長域への展開を進めています。
■主力商品の光コム発生器に対して光パルス発生器とはどのような装置ですか
興梠:光パルス発生器と光コム発生器は表裏の関係です。時間領域で考えると光パルス発生器で、周波数領域で考えると光コム発生器です。調整方法が多少異なりますが技術的にはほぼ同じです。
通信は光波長多重が進みましたが、光時分割多重(OTDM)は実用化されていません。当社の光パルス発生器はこのOTDMの実現を目指しています。OTDMの研究機関から高い評価をいただいています。
■御社製品を使うことによってどのようなメリットがあるのですか
興梠:光コムモジュールを使うことで単純な構成により、制御がしやすく、安定したノイズの少ない光超短パルスを発生します。また通信分野では、光コムモジュールを搭載した世界初となる可搬型全自動光周波数カウンタを実用化しています。精度は波長計の1,000倍以上と高く、精度の高さが最大の特徴です。
光コムモジュールでレーザを制御するというのは当社の最高技術ですが、光コムモジュールに限らず、それから派生する技術を応用して、お客様の問題を解決しています。今後も、ソリューションを提案し、製品化していきたいと考えています。
■御社製品のユーザーは主にどのような分野の業種ですか
興梠:現在は、主に光を研究している機関、企業からオーダを受けています。そして、その研究所から応用例が発表されています。今後は、当社で用途ごとに製品化していきたいと思っています。
完全製品化という意味では、近々の展開として、バイオイメージングや医療分野を考えています。医療は治療と診断に分かれますが、当社としては診断用に力を入れ、特に画像を使った診断をターゲットとし、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)の分野を考えています。当社の製品には高速性能という特徴があり、診断を早く行うことができるので、患者の負担を大幅に軽減することが可能です。
また、テラヘルツ(THz)波の活用を考えています。現在、このようなマーケットがあるのか定かではありませんが、5年後くらいには確実にマーケットが立ち上がる分野だといわれています。
朝枝:IEC(インターナショナル・エレクトロ・コミッション)というユネスコの機関があるのですが、そこでは電機製品に関する世界の標準を作っています。IECは光通信の部門で、光の周波数を正確に測る規格を作ろうという動きがあります。そこで、当社の光コム発生器を産業技術総合研究所に1台納入した経緯があります。これは起業した年に納めた製品ですが、その装置を使って、レーザメーカーから依頼を受けレーザの周波数校正をしています。測定が終わると校正証明書が発行されるのですが、当社の製品が日本のレーザ周波数の標準器として使われていることになります。
当社で実用化した可搬型全自動光周波数カウンタは、そこに導入されている製品の次世代品です。校正対象レーザを光ファイバでその光周波数カウンタに繋いで測定開始ボタンを押すと、高精度で周波数が表示されるという世界初となる光の周波数カウンタです。この装置は、光通信の波長多重通信で、周波数の間隔がより狭くなると部品の精度を高く測らないと意味がなく、波長計では間に合わないということで製作しました。
■光コム以外の技術を含めた今後の展開についてお聞かせください
朝枝:大学発ベンチャーは1,300社くらいあり、その中には様々なタイプの企業があります。起業自体簡単ではありませんが、なかでも、ものづくりの会社というのは立ち上げるのが難しいといわれています。その理由として、最先端の技術のため製品化するまでに時間がかかってしまうからです。たとえ製品になってもマーケットまでが遠い、つまり、もの作りに対する突出した技術はあるが、マーケットに繋げるところが難しいということです。当社は、これまで光計測をターゲットに展開してきましが、光通信のデバイスとしては、まだ可能性はあると思っています。商品として大きく展開するというところまでは達していませんが、チャンスがあれば、いつでも対応できるところにはいます。
現在、高精度な光源が欲しいというニーズが非常に高まっています。その理由に、医療などの分野でも光源が重要ということが認識され始めたからです。質の良い光源はふらつきが少ないため、早く測定することができます。また、周波数や位相を含め、光を高精度に制御できることで、より質の高い測定をすることが可能です。それが医療などの分野で応用されることで、より高精度なデータが取れるようになります。 当社は、この分野でもソリューションを提供していきたいと考えています。しかし、光源だけ良ければいいというものではなく、プラスαが必要となります。プラスαとは、その分野で基礎的に必要な機能のことです。プラスαの技術を併せ持てば、ビジネスとしてさらに展開できると感じています。当社は現在、単なる光源メーカーではなく、プラスαの技術も含めて事業展開していこうと考えています。
また、テラヘルツに関しても同様のことがいえます。テラヘルツも、安定的に発生させる技術があれば、質の高い光を作ることができます。その展開も、当社の事業に組み込んでいます。光通信用、光測定用は企業に納められる段階ではありませんが、市場が立ち上がり、高精度の計測がいつ必要になってもいいように準備を進めています。また、応用分野を広くする計画です。医療分野で使われる光源を中心としたコアな技術を作って、各企業に展開していこうと考えています。
光通信の市場が2002年前後に崩れてから、光計測器の需要は増えてないのですが、通信の容量は毎年2倍に伸びています。市場が崩れたといっても、計測に対してはより高い精度が求められているので、当社はそれに対応できる準備を整えています。さらに、テラヘルツに関しては、今まで使われていない周波数帯ということで、これまで測定できなかった計測が行えるので注目を集め、当社としても準備している段階です。
当社は、ものづくりの企業として立ち上げたわけですが、光技術を背景に手探りで始め、光計測や医療用、またテラヘルツを展開してきました。非常に高い技 術を具現化した製品ですが、徐々に市場を作ることができていると感じています。ベンチャー企業1,300社中何社が成功するのかといわれていますが、当社 は近い将来、この分野で必ず成長できると実感しています。
■ありがとうございました
メカトロニクス2007年7月号掲載








