【インタビュー】環境負荷低減に貢献する製品づくり
─ ウッドフリー液面センサ/センサ応用製品の開発 ─
株式会社MRT
成熟されつつあるセンサ/計測機器市場でユーザニーズに近づいた製品の開発に力を入れている株式会社 MRT。今回は環境をテーマにした製品開発について、代表取締役 塚本 耕也 氏にお話を伺った。
★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★
代表取締役 塚本 耕也 氏
■今回開発されたフロートセンサについて、まず開発背景からお聞かせ下さい
塚本:当社が扱うセンサ分野は、一定の規模がありかなり成熟した市場になってきています。そのなかで隙間用途をみつけ、従来のローテク製品に付加価値を付け、面白い新製品を出していこうとしています。
現状の先行メーカーは、超音波やレーダなどといったハイテクに目を向けていますが、昔からあるフロートスイッチというローテクにちょっと一捻り加え開発したのが、今回の新製品である簡易ディスプレーサ式フロートセンサ「FLD」です(写真1)。コンセプトは“環境に貢献する”ウッドフリーセンサです。
フロートスイッチは、産業機械/水処理/工場設備といったところで使用されていますが、水処理/工業設備に使用される場合の主な用途は、2m以上のタンク内を計測する水位計測です。
従来製品は、タンクの深さに合わせてパイプを切断/溶接し、パイプの長さに合わせた磁気センサを内蔵する構造でした。その場合、工場からユーザーに納入する際、2m以上のセンサについては、それらの長さに合わせた木箱を作って納品されています。本来、環境を守るための設備に使用されるものが、環境資源である木材を浪費しているという矛盾が発生していました。
この矛盾を解消するきっかけになったのは、当社が環境マネジメントシステム(KSE)の認定を受けたことが大きな要因となっています。毎月、環境に関する目標を立てて取り組んでゆくのですが、数値目標等で結構苦労しており、そのような中で、ユーザーも同じように苦労しているのではと思い始めたのです。
製品のためだけに作られる木箱は、納入後には産業廃棄物となり、製品/輸送に加えて木箱を廃棄するにもコストが掛かっている状況です。
この無駄なコストを含め、製品/輸送コストの削減も図れ、さらに環境に貢献することができないかというのが、今回の新製品開発における背景となっています。
写真1 簡易ディスプレーサ式プロートセンサ「FLD」
■「FLD」の特徴についてお聞かせ下さい
塚本:大きな違いとしては、従来製品はパイプを採用していましたが、「FLD」はワイアを採用しています。これによりコンパクトな収納が可能となり、木箱を使用せず、再利用可能な段ボールに梱包できるようになりました。
パイプからワイアという小さな発想転換で、従来、大きな割合を占めていた輸送コストや、木箱を廃棄するコストまでも削減できるという大きな効果を得ることができます。また、付属のワイア5m巻きを使用するため、タンクの深さが5mまでは同一価格となり、製品コストも削減できるようになりました。このように、見えないコスト、見えるコスト両面での削減が可能になります。
動作原理としては、液面の変化に応じてワイアに固定したマグネットが、同じく内蔵されている磁気センサをオン/オフさせることにより、水位を検出するという仕組みになっています(図1)。 また、ワイア上端にはスプリングが取り付けられており、ワイアおよびフロートの重量を支えると同時に、リード・スイッチ動作のばらつきを調整します。さらに、磁気センサには自己保持回路を付加していますので、ワイア終端のウエイト効果とも合わせ、液面の波立ちによるチャタリングを抑制し、安定的な出力を確保することができます。 このようにセンサ部を製品上部に格納したことで、副産物として耐熱180℃/耐圧1MPaが標準仕様として実現できました。過酷な環境下での動作も可能となります。
従来のセンサで問題となる異物の付着については、ワイアにフロートを固定しその浮力を利用しているため、フロートそのものに可動部がなく、従来製品と比較し、付着に対する影響は軽減できます。さらに、磁気センサ装着部分は接液しないため、磁性体の付着による影響は受けません。
■設置作業は今までに比べ簡単になったのですか
塚本:従来製品はパイプの中に磁気センサを入れ、その入れた位置に合わせてフロートを設定していました。「FLD」では、フロートはワイアのどの位置に設定しても構いません。
フロート数は最大6個まで、ワイアにネジで締め付ける構造ですので、ドライバ1本で簡単に任意の位置に変更できます。
この構造は短納期をも可能にします。従来製品はオーダメードですから2〜3週間の納期が一般的でしたが、「FLD」は部品単位でも在庫ができますし、特に検出位置の設定が自分でできるためユーザーにとっては納期が大幅に短縮できます。
設置作業をするスペースにしても、地下や屋内設備などでは天井までのスペースが狭く、2m以上もあるパイプをタンク内に入れるのは困難でした。「FLD」は作業スペースを気にする必要はありません。
■ユーザーからの反響はいかがですか
塚本:今年の2月に発売してから、月を追うごとに受注量も増えてきました。また、お買い上げ頂いた理由についても「FLD」の基本コンセプト通りの反応です。大変有難いことです。
■今回、ユニークな新製品をもう1つ開発されたそうですが、その新製品の概要をお聞かせ下さい
塚本:異業種交流からの依頼で、“水”“光”栽培のセンサ部を担当しています(写真/図2)。
最近よくマスコミで取り上げられる太陽光を使わずに工場の中でLEDや蛍光灯の光を使用し、植物を計画生産する植物工場がありますが、その家庭版と考えて頂くとわかりやすいと思います。
製品の特徴としては、太陽光を使わず家庭で簡単に野菜や果物づくりを行なえ、種を蒔いてから約2〜3週間で収穫できる状態になります。閉鎖型ですのでクリーンルームのように細菌を寄せ付けず、無農薬で栽培できます。「食の安全」に関心の高い個人や、小規模店舗に10〜20万円でこのケースを提供できるべく開発中です。
製品開発のきっかけは、3年前に植物工場の理論を確立された千葉大学の教授が、八尾市中小企業サポートセンターで開催された、セミナーを受講したことから始まりました。
最近、この分野に参入する大企業もどんどん増え始め、大きな工場レベルで展開していますが、コンパクト化し家庭で水耕栽培が楽しめる方向で、㈱みらくるグリーンを中心とする異業種交流グループで製品の実現化を行なうこととなりました。当社は、製品の自動制御を担当します。
写真2 閉鎖型・家庭用水耕栽培ケース(試作)
図2 家庭用栽培キット
■水栽培育成ケースに使用されているセンサの種類と使用目的をお聞かせください
塚本:温度センサ/液面センサ/導電率(ED)センサと、3つのタイプのセンサを使用しています。温度センサは、野菜や果物の作物別の溶液温度を設定し、ケース内の温度を一定に保ちます。液面センサは、育苗ベッドの水位を安定させて専用の培養液を自動供給します。導電率(ED)センサは、作物の根腐れを防ぐため、培養液の状態を管理します。
これら3タイプのセンサにより、電源を入れるだけで簡単に育成プロセスを自動制御してゆくことができます。
■今回の製品開発は会社同士の連携で行われているようですが、連携の内容についてお聞かせ下さい
塚本:野菜や果物などの栽培に関することを担当している(株)みらくるグリーン、筐体のデザイン/設計を担当している(株)マール金属製作所、センサ/制御関連を担当する当社という3社で連携を行なっています。その他、技術指導で千葉大学等といった学術分野、八尾市/堺市/大阪府立産業技術総合研究所といった官の分野の方々にもご協力頂いております(図3)。
きっかけは3年前のセミナーでしたが、実際に試作品をつくり本格的に開始したのは今年の4月頃になります。現在は、9月にインテックス大阪で開催される「2007NEW環境展」に出展するため、最終的な調整を進めています。
図3 産学官の連携構成
■今後の事業展開についてお聞かせください
塚本:当社は基本的にセンサ・計測分野の企画会社ですので、アイデアを如何に形にしてゆくかが重要になっています。当社のホームページでも紹介していますが、現在開発中の製品が色々とあり、他社がやろうと思えば出来たであろう製品ばかりです。ローテクにちょっとした工夫をすれば、他に無く、面白い製品になるものは、まだまだたくさんあると思います。
今後もこのような製品をどんどん企画し、つくる場所は国内外を問わず、様々な場所で展開してゆきたいと考えています。
■本日はお忙しい中ありがとうございました。
メカトロニクス2007年10月号掲載

