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2009年10月14日 (水)

【インタビュー】理論を積み上げた上に『ひらめき』ゾーンはある

─ 冷間鍛造法『EDF法』でクラウニング付きヘリカルギアを製造 ─
株式会社クリアテック

 世界で初めて金型の弾性変形活用冷間鍛造法(EDF法)を開発、歯車の歯面に微妙なふくらみ(クラウニング)を持ったヘリカルギアを製造。車に採用されるための量産に向けて開発を進めている株式会社クリアテック 代表取締役 石田 均 氏に、EDF法の技術と企業経営の考えを伺った。

★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★

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代表取締役 石田 均 氏

市場における使用量が多いギアの製造を目指す

■御社についてお話ください

石田:私はもともと部品製造の会社でエンジニアの仕事をしていました。そこで17年間仕事をした後、独立を考えるようになりました。一つには、“人 ”に対する思い、人はどうすれば満足することができるのか、幸せを感じることができるのかということを思うようになったからです。二つには、技術を追求したかったからです。利益を上げるために大量資本をかけることよりも、技術そのものを追求していくことが、ものづくり、製造業においてはいいのではないかと考えていました。三つ目には、その会社の中でものづくりのトップになってきますと、皆がちやほやし自分がうぬぼれに入って自分がつぶれてしまうのではないかと考えたからです。
 資本も少なかったので、金型の設計製造からはじめました。金型を使ってもらうためにお客様に売るということは、責任の上で仕事をしてお客様の要望に応えようとしますので、技術も上がってきます。今でも金型の設計製造を行っていますが、それは技術を伸ばすために行っています。 6、7年前からは、少しずつですが量産品の製品も始めています。
 市場において今までも、またこれからも量が求められるのがギアだと思い、ギアには非常に力を入れてきました。人間が幸せを感じて生きていくためには、まず仕事がなければなりません。その意味で、絶対的に量の多いものを対象にしていかなければならないと思い、それを目指してきました。
 そのギアを、冷間鍛造で作ることの開発に成功したわけです。これは世界でも当社だけの技術です。冷間鍛造で作ったギアは、面が滑らかで接触面積が大きく耐ピッチング性の向上が考えられますが、現時点では実際の証明はなされていません。証明はギアを使う側に頼っていますが、極限の状態のテストをしてもらいたいと思い、証明してもらえるところを探している状態です。

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金型:冷間鍛造で造った金型

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金型:機械加工された金型など

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冷間鍛造プレス

■冷間鍛造とはどういうものですか

石田:まず、物体に一定以上の力を加えると物体は変形し、加えた力を除いても変形が残りますが、このような変形を永久変形といいます。永久変形を残すような変形は『塑性変形』とよばれ、塑性変形を利用して物体を成型する加工法を『塑性加工』といいます。板状のもの以外の金属を、工具を使用して塑性加工する加工法を『鍛造』といいます。鍛造の分類方法は、変形方法によるものと鍛造温度によるものに分かれています。
 温度による分類では、一般的に600℃〜900℃で行う鍛造を『温間鍛造』、それ以上の温度の鍛造を『熱間鍛造』といっています。『冷間鍛造』は常温で行う鍛造をいい、熱間鍛造に比べ精度の高いものを生産することが可能です。常温で鍛造するため、加工されるワークの硬度が高く大きな成型圧力が必要となります。また、金型の設計が難しい上に、目的の形状を得るために何度も鍛造を繰り返すため、理論に裏打ちされた高度の技術と経験が必要になります。当社では、冷間鍛造と温間鍛造の開発、金型設計製作、冷間鍛造品の製造および関連技術指導を行っています。
 冷間鍛造は切削加工に比べ材料も少なくなり、強度も高くなります。歯車の場合、強度が2倍あれば半分の歯幅で済むことになり環境にもやさしいことになります。車に使われる回転体の重量を減らすことにもなり、燃費もよくなることでまた環境によいことになります。
 鍛造ギアに関してはまだ開発段階ですが、国内の車メーカー関係、米国の車メーカー関係、欧州の車メーカー関係、ロンドンの開発会社などと開発を行っています。近い将来米国のメーカーが実験を終え量産に入っていく可能性があります。鍛造ギアの魅力は耐久性であり、ギアに関わっている人、ミッションの人たちの期待感はあると思います。しかし車の心臓部に近いところでもあり、入念なチェックが必要であり、現在その結果を待っている状況です。

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冷間鍛造品

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冷間鍛造EDF法で作ったギア

金型の弾性変形、摩擦を利用した冷間鍛造の新技術を開発

■冷間鍛造によるクラウニング付きヘリカルギア製造技術についてお話ください

石田:ヘリカルギアの油圧プレスによるトライアルは12年ほど前から行っています。この技術の発端はスパーギアにあって、18、9年前にアイデアがあり特許もとっています。12年ほど前にヘリカルギアの話があったとき、スパーギア製造の技術でヘリカルギアもいけると思い、取り組みはじめました。ただし、ねじれている歯車を鍛造技術で作るということは、簡単なことではありません。
 以前の会社で冷間鍛造に取り組んで7、8年したころに、冷間鍛造を使って製造する最も価値がありそうなのはギアではないかと感じました。そして、冷間鍛造によるギア製造の技術を考え続けてきました。
 普通に考えますと、鍛造のためのプレスの力、パンチ押圧は上から力を与えますので、ダイ内面の摩擦の影響を受け、上のほうに一番力がかかり下に行くにしたがって圧力が下がってしまいます。したがって、ワークの上下面に形状差、直径差ができるため、精密な歯車はできません。そこで、上から圧力をかけるのではなく、歯形ダイを横から圧力をかけることにより摩擦の影響がなくなると考えアイデアをまとめたのが19年ほど前ということになります。
 ところがこれも単純なことではありません。横から圧力をかけたとき、中が柔らかく上下がフリーだとしますと、金型の弾性ひずみはワークに0.3%ほどのひずみしか発生させることができず、力を抜いたときほとんどが弾性領域なためワークは元に戻ってしまうことも分かりました。アイデアを実現するためには、またほかのアイデアやノウハウが必要になってくるわけです。横からの圧力と、ダイ底部、および上からのパンチ押圧をすることにより、スパーギアの冷間鍛造品を作ることができました。また、押し出し成形ですがヘリカルギアも依頼があった形で作り、何とか形はできていました。

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 それから6年ほど後にクラウニング付きのヘリカルギアの話がきたわけです。その3年後にトライアルの繰り返しの中から、偶然に近い形でサンプルをつくることができましたが、理論としては完璧に成り立っていないものでした。それは、金型の弾性変形を利用した冷間鍛造という意味で、世の中でも新しい技術でした。その5年後、大学の教授に引き上げてもらって学会でも発表させてもらい、『EDF法:金型の弾性変形活用冷間鍛造法』は平成14年度日本塑性加工学会の学会賞も受賞しました。
 クラウニングは中が膨らんでいる形状になっているので、普通は鍛造できたとしてもワークの排出ができません。ワークにクラウニングを付与した後、内径方向に収縮した歯形ダイを、ワーク排出時に元の形に戻さなければなりません。そこで、歯形ダイの弾性回復を利用してワークを排出するという、金型の弾性変形を活用したEDF工法の冷間鍛造技術を開発したわけです。

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金型の弾性変形

 しかし、そのときの技術では量産には向かないと感じていましたし、コスト的にも問題がありました。数社と共同開発をしましたが、コスト的に量産には行きませんでした。冷間鍛造の性能の良さを評価して使ってもらえると思っていましたが、それは甘い思い違いで、どうしても値段をクリアしなければ量産に持っていってもらえないことを知らされました。
 コストをクリアするためには、ギアの歯と内径の同軸度が100分の2から3の鍛造品を作ることです。当社では、3年ほど前からやっと同軸度が100分の2の鍛造品を安定的に作ることができ、学会発表時の技術レベルをさらに向上させることができました。今まで冷間鍛造で100分の2を出すことはありえない技術で、せいぜい0.1とか100分の5といったところです。穴抜き、ギア成形と毎回プレスをし、同軸度を狂わせない技術というのはかなり難しく、普通は怖くてやれないものでほかではどこもやっていません。当社ではもともとそういう技術を持ってやってきましたから、金型同士の圧入の繰り返しや金型とワークによる摩擦力を成形圧に利用しました。焼きつかない範囲の摩擦であれば利用できるということです。当社の技術は、摩擦も含め、鍛造で出てくる力を利用していますので、油圧ユニットなどの付属装置は何も使っていません。
 EDF工法によって成形されたギアは、従来の切削工法によって作られたギアと比較して、次の二点において耐久性が優れています。一つは曲げ疲労強度の向上です。切削ギアの場合は歯元破損の対策として、歯元部にショットピーニングを施すことで、圧縮応力を与えていました。鍛造ギアの場合は、歯面に沿った鍛流線により曲げ疲労強度が向上することが一般的に認識されています。二つ目は、耐ピッチング性の向上で、切削ギアの歯面には仕上げ工具の刃跡が残り、微細な凹凸が形成され、突起部同士が接触し軟化抵抗が下がります。EDFで成形された歯面は突起が少なくプラトー表面構造であり、接触面積が大きくなります。
 耐久性が上がればギアの小型・軽量化にもつながっていきますし、ギア騒音もしにくいものとして、ギアに関わっている方々からは大いに期待されています。

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切削ギア

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鍛造ギア

難しい仕事にチャレンジしていく姿勢に会社への求心力を求める

■水平型組織の会社とうかがっていますが、会社の運営、経営についてお話ください

石田:最近社内で言葉にして言っていることは、『企業は人のためにあり』ということです。この精神を続けていってもらいたいと思っていますので、繰り返し話しています。
 人のためにならないような企業はやるべきでないと思っています。人というのは、働く人とその家族を含めて考えています。人間が生まれてから死ぬまでの間にやるべきことは、自分自身の人格を形成していくことだと思っています。人格とは、人にない能力を持ったり、評価されるような人間になっていくことだと思います。評価されることがあって、初めて人格が形成されることだと考えています。個人の能力を高めることが人格を形成していくことになっていくと考えていますから、会社の運営も人を育てることが経営だと考えています。『経営とは人を育てることである』という言葉がありますが、その思いは昔から持っており10 年ほど前にこの言葉に会ったとき、自分の思いは間違ってなかったと感じました。
 人を育てるということは、その人の人格を形成させてあげることだと思います。ですから、社員には自発的行動の下に仕事をやって欲しいと思っています。組織もピラミット型の組織ではなく、フラット型の組織にしています。会社が成長してくれば、フラット型を基本に編成し直していきますが、命令系統は使いたくないと思っています。命令されなければ動けないのはだめだと思っており、自分で動ける人を多く作っていきたいと考えています。会社はより難しい仕事の目標を示し、難しい仕事があれば人間はより上のものをやろうと目指していくもので、そこに求心力を求めています。
 社員は基本的に全てエンジニアと考えています。設計をする人も金型を磨いたり、鍛造プレスを打ったり、営業をやってもらったりと複合的にやってもらっています。金型だけをやっている人もいますが、難しい要求をどんどん与えていきます。それをこなすことによって達成感が生まれると思います。社員一人一人の意識が常に高いところに向かっていなければ、その人は落ちていってしまいます。個人の能力が上がっていかなければ、日本における仕事は減ってきます。なぜなら、安い労働力のところは世界にいっぱいあるからです。
 当社は社員と役員しかおらず、社員27人に役員が3人です。役員も自分の仕事を持っていますが、役員というのは会社の精神を維持していくのが最大の目的だと思っています。会社が大きくなったときにはユニット化をしていき、そこにリーダーを置くようにしたいと考えています。リーダーとは後輩の模範になる人のことで、人を評価する人ではないと思っています。その、模範になる人を育てていきたいと思っています。
 新しい技術を創造するときも、枠を決めると良いものができません。形を決めずに自由な状態の方が良いアイデアが出てきます。ひらめきの出る人、世の中に無かったものや行われていないものをアイデアとしてぱっと出せる人が欲しいのですが、個性もありますのでなかなか育てていくということはできません。ひらめきは、理論を積み上げて、積み上げて、積み上げてきた上にひらめきゾーンがあると感じています。したがって、理論を積み上げられない人は、単なる思いつきがあるだけでひらめきはできないと思っています。思いつきだけでは、技術的な仕事はできません。理論を追っかけていってできるものもありますが、それはレベルが高いものではないと思います。会社の人たちにもどんどんひらめいていってもらいたいと思いますし、できるだけのアドバイスをしていきたいと思っています。

■今後の展開についてお話ください

石田:鍛造ギアを仕事として膨らませながら、さらに開発資金を作らなければならないと思っています。開発資金ができたなら、鍛造ギアのユニット化ができるように、会社に力をつけていきたいと思います。先々は、ユニットメーカーになっていきたいというのが目標です。車の中では、ユニットということが一番技術の必要なところであり、その核となる部品加工技術が必要なところの道に行きたいと考えています。そのためにも、特徴のある個性のある人、ひらめきの人をもっと採用して行きたいと思っています。

■本日はお忙しい中ありがとうございました。
 自動車の中で鍛造ギアが実用化される日を楽しみにしています。

メカトロニクス2007年10月号掲載

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