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2009年10月 7日 (水)

【インタビュー】光合成の原理を利用した色素増感太陽電池で業界に旋風

ペクセル・テクノロジーズ株式会社

 日本では1974年のオイルショック以降本格的な開発が進めらた太陽電池。これまで灯台や山岳地帯など、電力供給が困難な場所に設置される観測装置に採用され、今では様々な電子機器や、家庭、工場などの発電にも実用化されている。太陽電池に使用される素材の多くはシリコンであるが、現在注目を浴びているのは薄く軽量で柔軟性あるフィルム型色素増感太陽電池である。技術開発をしたペクセル・テクノロジーズ株式会社代表取締役社長の宮坂 力 氏に話を聞いた。

★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★

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代表取締役社長
宮坂 力 氏

色素増感太陽電池はどんな太陽電池なのでしょうか

 色素増感太陽電池はシリコンを使わない太陽電池で、植物の光合成の原理を利用し発電する太陽電池です。植物が太陽光を吸収し電気エネルギーに変えて空気中の二酸化炭素と水から炭水化物を合成するのが光合成の仕組みですが、この中の太陽光を吸収して電気エネルギーに変換する仕組みを利用しています。発電までの工程は、色素増感型太陽電池に光が照射されると色素が反応して電子を放出し、放出された電子が酸化チタンを通り基板に流れて発電されます。色素増感太陽電池に関する特許は約1,100件ありますが、当社の技術は素材にプラスチックを使用し、厚さは0.4mmと非常に薄くて軽く曲げても折れず、持ち歩きも楽で価格も安いのが特徴です。携帯電話やノートパソコンを駆動させるのに充分な発電が行えますが、蓄電もできるため使用時に光源がなくても大丈夫です。

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プラスチック製の色素増感太陽電池に用いる電極の製造フロー

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色素増感太陽電池の光発電のしくみ

■開発に当たって留意した部分を教えてください

 材料は導電性をもつプラスチックフィルム基板で、PEN(ポリエチレンナフタレート)と呼ばれる素材を使用し、色素としては貴金属などに使用されるルテニウム、そのほか、酸化チタン、電解液などを使用しています。これらの材料から色素増感太陽電池を製造しますが、とくにポイントになるのは酸化チタンです。まず、ペースト状にした酸化チタンをフィルム表面に薄く塗布し150℃以下の温度で乾燥させます。その後、約40℃の色素の溶液に浸して色素膜を作り、もう一枚のプラスチックフィルムとで挟み、隙間に電解液を注入し封印して完成となります。酸化チタンはガラス基板で作る場合は約450℃で焼結しますが、プラスチックフィルム基板を用いた場合は450℃という高温では融けてしまいます。そこで、150℃以下で固まる低温成膜用のナノ酸化チタンを開発しました。ここでは、酸化チタンをペースト状にする際の粘度が問題で、乾燥した際に粒子同士をつなげるために通常バインダ(接着剤)が使用されるのに対して、バインダが電子の通りを妨げる可能性があることから、当社では特殊な粒子結合剤を使用しました。
 当社が販売するのは、製品としての色素増感太陽電池と色素増感太陽電池を製造する装置で、製品の注文時には多少のオプション生産にも応じています。薄くて軽いことから、携帯電話をはじめとする小型電子機器などへの適用が考えられますが、これまで、意外なところでは被服メーカーやコンビニエンスストア業界からも相談があり、私が予想できない産業への適用もこれから出てくると思います。さらに、酸化チタンの塗布には印刷技術を用いることで大量に製造することが可能なので、シリコン製の太陽電池と比較してコストを約10分の1に抑えることが可能ですから興味をもつ業界は増えると思います。

■これまでどのような研究に取り組まれましたか

 20年間写真フィルム会社に在籍していたのですが、企業に在籍していますと役職に就いた場合は経営管理の仕事が忙しくなって研究者として割ける時間が限られてきます。また、在籍していた企業は大きな組織でしたので、研究を進めたいと思ったテーマが出てきても決裁までに時間を費やしてしまうことがありますから、試してみたい研究にすぐに取りかかるのは難しい状況でした。そのような状況の中で桐蔭横浜大学への教授の仕事があったため、会社を退職して大学での研究者の道を歩むことにしました。
 担当は医用工学科と呼ばれる分野で、バイオエレクトロニクスの研究や医療器具の開発に取り組んでいる学科です。最初に取り組んだテーマは目の不自由な人の視覚を補うセンサ『人工網膜』の研究です。その研究はすでに終了してまして、その後、DNAの検出装置や色素増感太陽電池の開発に取り組みました。

■会社設立のきっかけは何ですか

 研究発表した段階で曲がる太陽電池として新聞発表され注目を集めて、様々な分野の企業から問い合わせがありました。会社を起こすきっかけになったのは、問い合わせにきた様々な企業の方と面談する中で当社の製品は従来の太陽電池と比べて製造コストが抑えられているため、製品価格を安くできることを実感したからです。そのような状況下で、大学の研究成果の早期事業化を推進している横浜産業振興公社産学連携推進部から大学発ベンチャーとして支援してくれるという話をいただきました。設立に当たって登記関連の業務費用、投資家から資本金を集める資本政策を行う会計士の人件費、さらに光熱費や通信費といった部分まで費用を支援してくれました。設立のために当社が負担したのは各種申請に掛かる実費費用などです。
 会社の設立は2004年3月1日、資本金は880万円でした。資本金の内訳は私が100万円、桐蔭横浜大学からは大学発ベンチャーを推進したかったこともあり、事務所や開発に係わる部屋の提供とともに300万円を資本金として出資していただきました。そのほか、教授仲間と私が元在籍していた会社の上司、さらに、会社設立前から共同研究を行っていた企業数社から出資していただきました。ちなみに出資していただいた企業は電極、色素、粒子結合剤、プラスチック素材など部材を製造する企業で、出資については投資目的ではなく開発を一丸となって進めていくことを目的に参加していただきました。

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色素増感太陽電池の使用される主な部材

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これまでの太陽電池にない特長

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曲げても割れたり折れたりしない

■売上げは順調なようですね

 設立が3月でしたので、直後の期末決算ではそれほど売上は出ませんでしたが、2期、3期では毎年20%増で売上を伸ばし、昨年度の売上は6,500万円で、今年も20%増で推移する予定です。このように売上げが順調に推移していますが、特別に色素増感太陽電池について営業活動したからではなく、私が学会などで技術をわかりやすく紹介することが利用者の拡大につながったものだと思います。費用が安価なことも理由のひとつとして考えられますが、学会などでは色素増感太陽電池の講演は立ち見が出るほど好評で、講演後に多くの企業から技術指導の依頼がきます。技術指導依頼をしてくる企業は装置を使って研究することが目的ですから、これによって需要も増えるのです。

■色素増感太陽電池技術に着眼した理由を教えてください

 色素を使った太陽発電の理論は1970年代に確立されていましたが、この技術を使って曲げられる製品の開発に着眼したのは私でした。従来の太陽電池は屋根に取り付けた場合などは雹が降っても壊れないほど頑丈なものが望まれていました。しかし、携帯電話などの小型電子機器の普及に伴って機器に使用する電池を交換不要にしたいという要求が出てきます。産業での汎用に期待ができたわけです。最近『プラスチックエレクトロニクス』という言葉が出てきていますが、これは今回のように素子をプラスチックで作る電子技術のことです。これまで有機ELディスプレーや電子ペーパーや印刷で作るプリンタブルトランジスタなどがあり、今後、太陽電池の登場が期待されています。

■会社の経営者として今後はどんな展望をお持ちですか

 社員は現在パートを含めて10人でそのほか学生も在籍しています。現在はマンパワーが足りないぐらい忙しい状況ですが、さきほどもいいました通り営業に人材を割く必要がなく開発することが営業力に繋がるというのが当社の運営上のメリットです。社員には開発にじっくり取り組んでもらいたいと思います。私は講演を通して技術をアピールしていきます。企業として考えれば技術内容を公表することで失うものがあるかもしれませんが、逆に色々な企業から用途や応用の提案をいただくことで得ることも多く、この方法を続けていくつもりです。販売はこれまで通り製品と装置を販売していきますが、企業に技術供与していく形も視野に入れています。

■ありがとうございました

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メカトロニクス2007年2月号掲載

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