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2009年9月14日 (月)

【写真入り記事】秋季応用物理学会学術講演会プレビュー発表を開催

社団法人 応用物理学会

 社団法人 応用物理学会は、9月1日、東京・九段下の九段会館において、9月8日から9月11日の4日間にわたって富山大学で開催される『第70回 秋季応用物理学会学術講演会』のプレビュー発表会を開催した。
 本講演会では、同大学キャンパス内の各所において、放射能、光、薄膜、表面、超伝導、有機分子、半導体、結晶、非晶質、スピントロニクスなど多岐にわたるテーマで約4千件の発表が行われ、参加者は6千名を越える。
 今回はこれに先立つプレビュー発表会であり、まずは一般講演の中からバイオ技術応用の話題を中心に選んだ自選による研究発表が行われた。

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   (写真1)
   開会の挨拶、並びに学会の挨拶を行う
   社団法人 応用物理学会会長(東京工業大学)石原 宏氏


 以下は、レビュー発表で紹介されたその4件の研究発表である。

 ■新化学レーザの発振に成功
  ◎発表者:東海大学歯学部物理学科准教授/遠藤 雅守氏

 同准教授の研究室は『アミン系全気相型化学沃素レーザ』の実現に成功した。
 この新化学レーザは、従来がもっていた化学レーザの欠点(スイッチを入れてもすぐに発振しない、など)を克服し、原理的にメガワット級の大出力にスケールアップが可能である、というもの。沃素原子は光ファイバで導光できる波長1.3μmの光を発し、また励起状態の寿命も長いため、レーザの大出力化が容易であるなどの特徴がある。
 研究ではこの沃素原子を励起する新しい化学反応を見つけることに非常な困難が伴ったそうであるが、水道水のカルキ臭の原因ともなっているごくありふれた物質で安定貯蔵も可能な『トリクロロアミン』を用いての反応研究を実施、トリクロロアミンの他に、水素原子、沃化水素の3種の化合物を、適切な圧力において、また適切な順序で混合したときに限り、光の増幅利得が得られることが判明した。そこからまた研究を重ね、ついに本年4月に初めてレーザ発振を確認した。 
 得られたレーザ出力は平均で20mVとDVDレコーダに組み込まれる半導体レーザと同じ程度であるものの、これからの研究で大出力の発振につなげる、としている。
 本レーザの今後の展開として挙げられたのは、人類の宇宙活動における大きな障害として懸念されるスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去への活用である。除去のためには軌道上から大出力レーザで打ち落とすのが最適とされており、この新沃素レーザはその候補の一つとして最適な特徴を有している、という。

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   (写真2)
   東海大学・遠藤 雅守氏による発表


 ■磁気シールドなしで脳磁場を計測する技術を開発
  ◎発表者:株式会社日立製作所/関 悠介氏

 株式会社日立製作所 基礎研究所は、地磁気の約1億分の1以下という微弱な脳磁場を、従来必要だった環境磁場を遮蔽するシールドを用いることなく計測できる技術を開発した。本技術は、環境磁場を効率的に排除しつつ、脳磁場を選択的に検出する新方式の磁場検出用コイル(2次元グラジオメータ)の開発によって実現したものである。
 神経活動に伴って流れる微弱な電力によって、頭部の表面には地磁気の約1億分の1以下となる数100フェムトテスラ以下の微弱な脳磁場が発生している。この脳磁場の計測により、脳の活動を無侵襲(傷をつけず無害に)かつ非接触で計測することができるのであるが、これまでの技術では、計測対象がきわめて微弱な磁場であることから、環境磁場を遮断する磁気シールドが必要とされており、利用の現場は大規模な病院や脳神経科学分野の研究機関などが主であった。
 今回開発された2次元グラジオメータは、頭部の表面に対して垂直並びに水平方向の2つの方向の磁場の差分を検出することによって、環境磁場を効果的に減少させることが可能であるというもの。
 さらに、近年の報告で、認知症について、聴覚機能が刺激されてから脳磁場信号が発生するまでの時間(潜時)に特徴的な傾向を示すという報告がなされていることから、今回、頭部をはさむ形で右脳用と左脳用に2次元グラジオメータを2個ずつ搭載した可動式のクラオイオスタットを設け、右脳と左脳の聴覚機能誘発脳磁場信号を同時に計測することが可能な脳磁計を試作。そして、試作したシールドレス脳磁計を国立循環器病センターに設置し、同センターの協力の下で聴覚機能誘発脳磁場の計測を実施し、その信号の計測に成功させた。さらに従来型装置との比較を行い、その結果でも妥当性が検証され、2次元グラジオメータを用いた脳磁計の有用性を実証した。
 なお本開発は、コスト面やその大きさ(省スペース)などの従来の装置がもっていた課題も克服するものである、としている。

 ■マウス脳内深部に埋植して記憶や学習などの脳活動を多角的に
  ◎発表者:奈良先端科学技術大学院大学教授/太田 淳氏

 奈良先端科学技術大学院大学・科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業の太田淳教授らの研究グループは、マウス脳深部の神経活動を、蛍光と電位変化によって多角的に計測することが可能な超小型半導体センサを開発し、脳模擬材料(ファントム)を用いてその機能実証を成功させた。この超小型半導体センサを使うことで、これまで解明されていない記憶や学習などに密接に関わっている脳深部の機能が、将来、明らかにされることが期待されるとしている。
 急速な進歩を遂げている脳機能イメージング技術において、人や動物の脳内での脳内活動(循環代謝状態を始めとする生理現象)については、陽電子放出型断層撮影法(PET)や機能的磁気共鳴画像法(fMRI)などにより無侵襲に観察することが可能となっているが、マウスに代表される実験用小動物の脳深部にある海馬や大脳基底核などのリアルタイム観察については、応答時間や空間的な分解能が不足しており、困難であるとされてきた。 これまで同グループでは、マウス脳内埋め込み型高機能CMOSイメージセンサを実現させることで、生体内での脳深部の神経活動を蛍光や電位変化などで記録することを提案しており、試作センサをマウス海馬内に埋植し、蛍光のリアルタイム計測に成功していた。さらに、脳活動の指標として、蛍光だけではなく細胞電位などの変化も同時に記録できるデバイスが求められていたのである。
 今回開発された、蛍光・電位同時計測用超小型半導体センサであるCMOSイメージセンサのセンサチップは横1.3mm、
縦3.846mm。画素アレイ上には90μm角の10個の細胞を刺激する金属電極を搭載。また電極によってフォトダイオード (PD)が遮光されないよう、PD上のみ開口させている。画素近くには励起光源であるLEDを実装。センサの形状は、脳組織内へのスムーズな埋植のために先の尖った形状に可能にできるようにしている。通常は、電極部には光が入射しないため撮像されずに画像に欠損ができるのであるが、このセンサの場合はPD部を開口しているため、画像に欠損がなく、しかも電極として機能する。
 また、ターゲットとして青色光で励起され緑色の蛍光を発する緑色蛍光タンパク(GFP ※他のたんぱく質と融合することで、特定のたんぱく質の蛍光標識として用いられる)を想定し、外形か交互のチップ上には、300μm角の青色LEDを実装し、画素アレイ上には緑色のフィルタを搭載し、その後、電極メタルのみを露出させた。
 そして、生体模擬材料を用いて蛍光・電位同時計測評価を実施。完成させたCMOSデバイスの画素アレイ上には、GFP に近い特性をもつ直径約10μmの蛍光ビーズを敷き詰め、脳組織と同等の光学特性をもつ脳模擬材料(スキムミルクと寒 天で構成された脳ファントム)を被せた。さらに、脳ファントムに挿入したワイヤ配線によって20mV、振幅100Hzの正弦波 を入力して、電極エリアで蛍光・電位の同時計測を成功させた。 
 今後は、今回開発のセンサを用いて動物実験を行ってその有効性を実証するとともに、さらにデバイス埋植をしたマウスを自動行動させ、迷路学習などにより記憶・学習の機能の解明に向けた研究を行う、という。また、完全無線化を進め、パーキンソン病などの機能性脳疾患への応用についても検討を行う予定、としている。
 説明を行うプロジェクタスクリーン上には、本センサが埋植されたまま元気に歩き回るマウス実験の様子をとらえた動画も映し出された。肉体的負担が少ないとのことで、そのマウスの様子に出席者は驚いていた。

 ■体外受精卵を客観的に安全に評価できる半導体バイオセンシング技術の研究開発と
  その生殖補助医療分野への新たな展開
  ◎発表者:東京大学大学院工学系研究科/坂田 利哉氏

 東京大学大学院工学系研究科では、同研究科が推進する半導体バイオセンシング技術 によって、受精卵を安全かつ客観的に評価することを可能にした。この研究によって、これまで異分野で平行して発展してきた生殖補助医療分野と半導体分野が交差し、新しい原点と座標軸をもった分野の創出、改革が起きた、としている。
 生殖補助医療技術(ART)が不妊治療に導入されるようになったことで、産婦人科医以外の技術者の役割もまた重要なものとなった。ARTでは体外受精-胚移植の実施にあたり、いかに良好胚を選択するかがもっとも重要であるが、速やかな移植が必要であることから、顕微鏡下での形態的特徴によって判断することが一般的である。しかし、この選択法は技術者の熟練された技術が必要となり、また主観的な手法であるため、選択後の着床率及び発生率については十分な確証が得られておらず、客観的、定量的で安全性に優れた新たな評価方法の提案が望まれていた。
 一方、半導体デバイスについては、小型化・集積化とは別に、異分野への応用が議論されており、バイオ分野への展開が期待されていた。
 同研究グループではこれまで、シリコン(Si)を基板とした電界効果トランジスタにより、遺伝子、タンパク質、細胞の機能
計測を実施し、半導体バイオセンシング技術によるバイオ分析の可能性について実験的において明らかにしてきている。
 半導体バイオセンシングデバイスは、Si(n型あるいはp型)をベースに、厚さ100nm程度のSiO2/Si3N4をゲート絶縁膜とした構造。本デバイスがもつ原理を用いることにより分子やイオン固有の電荷を検出できるため、非標識での検出が可能となり、特に、細胞の膜表面から出入りする分子やイオンの電荷を非侵襲で直接モニタリングすることが可能となる。また、従来の半導体加工技術を利用すると、一つの小型チップの上に複数の検出部をアレイ化し、複数のサンプル並列解析が可能で、測定回路を組み込んだ安価な測定系を実現できるため光学系など高価な装置を必要としない、などもこのデバイスの利点である。そしてこの『細胞の膜表面から出入りする分子やイオンの電荷を非侵襲で直接モニタリングすることが可能』という技術がまさにARTで求められている、
  ・良好な胚移植の選択のためには短時間でかつ非侵襲で実施される必要があること
  ・客観的、定量的で安全性に優れた新たな評価法の提案
という課題を克服するのに最適なバイオセンシング技術であるとしている。なお、体外受精卵では、その状態による電気シグナルの相違が検出可能となる、という。

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 さらに、本講演会で開催される太陽光発電に関するシンポジウムや、次世代ディスプレイ技術、産官学連携と応用物理学などの話題が紹介され、それぞれについて、限られた時間内で簡潔かつ分かりやすい説明が行われた。
 出席者はメモを取りながら話に聞き入り、また発表の終了後には熱心に質問をしていた。

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   (写真3)
   発表後の質疑応答では、熱心なやりとりが行われた

http://www.jsap.or.jp/pressrelease/press_090901.html

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