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2009年9月14日 (月)

【インタビュー】耐久性ある光ファイバセンシングで長期モニタリング可能に

レーザック株式会社

 あらゆる産業で利用されているセンシング技術だが、岩盤斜面やトンネル内の損傷検出モニタリング、船体やスペースシャトルなどの宇宙飛行機の歪みのモニタリング、災害や事故の防止に欠かせない技術となっている。今号ではセンシング技術の中でも光ファイバを用いて耐久度を高めた技術で、これまで困難だった長期モニタリングを可能にした(株)レーザックの町島祐一代表取締役社長に技術の特徴と今後の展開を聞いた。

★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★

Dai00
代表取締役社長
町島 祐一 氏


■技術の特徴と用途を教えてください

 光ファイバを利用して歪みや振動、温度、圧力を測るセンシング技術です。従来の加速度計、歪みゲージ、地震計、圧力計、温度計を使った計測領域の長期のモニタリングに適しています。技術は東京大学工学系研究科の影山和郎教授ほかからいただき、製品化したものです。
 現場環境に幅広く対応できるのが特徴で、高絶縁性、電磁ノイズ、防爆性、長距離への対応ができるほか、-200℃~+250℃と広い温度域にも対応可能です。光ファイバを使用しない現行の検査は、操業を停止して1ヶ月程度かかる場合がありますが、それに比べて当社の光ファイバセンシング技術は、継続的に実施するもので、長期のモニタリングに適しています。これまで長期にモニタリングをする際の課題として、歪みゲージや地震計が1年に1回は故障するとか、落雷によって破損することがあり、過酷な条件に曝される現場に対応するセンシング技術が求められていました。その点で光ファイバはガラス製ですから落雷で破損することもなく、故障も少ないため、長期モニタリングに適しています。長期モニタリングの需要が期待できる現場向けに営業を展開しています。 

■どのような現場に光ファイバセンシング技術は適応しますか

 当社の光ファイバセンシング技術にはいくつか種類がありますが、動歪みや振動、音響など動きが早いものには光ファイバドップラー(FOD)技術が利用されます。光ファイバの伸縮で対象物の振動や超音波を計るもので、数百キロヘルツの超音波も計ることができます。例えば、光ファイバーセンサを少し高温な部分に置いて、常温の場所から放たれた弾性波をみた時、何もなければ弾性波が変化しませんが、途中にクラック(裂け目)が入ると弾性波が変わります。その変化した弾性波のモニタリングが可能です。橋脚の強度を測定する際は、自由振動※1の変化で剛性の低下をモニタリングすることもできますし、過酷な温度条件が要求されるロケットの燃料タンクをモニタリングした場合、亀裂が入るとAE※2が出ますがそれを感知することも可能です。タンクは過酷な温度下に置かれますから-160℃でも凍らないセンシング技術が求められます。
 もう一つは光ファイバで中性子を感知する「光ファイバ型中性子センサ」と呼ばれる技術です。光ファイバの先端にある薬品を載せておきますと、そこに中性子が飛んできて接触するとその薬品が発光します。シンチレータ※3という現象で、発光回数を数えると中性子の量が測定できます。もともと放射線医療のための技術ですが、これを原子炉の放射能漏れのモニタリングに適用できないかと考えています。 

■音の変化をモニタリングすることで発生前に音を発するといわれる土砂崩れや地震の予兆観測にも需要があると思いますが対応できるでしょうか

  確かに土砂崩れなどの前兆には音が出るのでしょうが、予兆を捉えるのはどうでしょうか。どの部分で音が出るのかがわかりませんから、センサをどの部分に設置するのかがはっきりしません。私どもの技術で対応するとすれば、どちらかといえば、静歪みをモニタリングする光周波数リフメクトリ(OFDR)で対応すると思います。

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光ファイバでモニタリング可能なパラメータ

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光ファイバーセンサの性能

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耐熱型FODセンサ

■事業の立ち上げから現在までの会社の経緯を聞かせて下さい

 私は商社で原油や天然ガスなどを担当していましたが、物を流通させるよりも物を製造することに興味がありまして、技術開発に携わりたかったのです。光ファイバーによるセンシング技術は趣味のラグビーを通して懇意にしていただいている東京大学TLOの山本貴史氏から紹介されたものです。2002年に経済産業省の大学発ベンチャーの育成事業に採択されましたが、製品化するのに2年半を費やしました。その期間はほとんどノウハウを蓄積するインハウスの状態でしたが、その後、マーケティングを始め、2004年の終わり頃から製品化して現場で適用を開始しました。
 現場に製品が導入し始めると、色々な用途へ対応してもらえないかと要望が出てきまして、2005年の後半からは光ファイバセンシング以外の技術にも着手し、現在は他のセンシング技術を統合し総合モニタリング事業に取り組んでいます。

■印象深いエピソードはありますか

 振り返ってみれば、インハウスの時期は製品化に向けて、収益はありませんでしたが、投資も続ける必要もあるなど、こなさなければならないことが多くありました。性能面では感度が出ないなど問題もありましたが、絶縁性や防爆性など、求められている方向がはっきりしていたため迷いなく開発に取り組めたことは良かったです。関係者の方々にもお世話になり、とくに、ユーザーである建築・土木関係の企業からも応援していただきました。
 また、影山教授の応援は有り難かったです。大学教授の中には、開発してしまった後は、ほかのことに興味を持ってしまう場合が多いようですが、影山教授とは設立以来、共同研究を行っており、良い距離感で関係を保てています。それにまつわる話として、ある時、企業が求める光ファイバセンシング技術について影山教授と検討しましたが、良い緊張感の中で議論ができました。大学教授が推奨する技術と民間企業が欲しがる技術は異なることがありますが、それをつないでいくのが私達の役目だと思います。

■新しい市場をつくっていくことになるのでしょうか

 展示会に出展するたびに、来場者は光ファイバセンシングの製品の存在に驚いています。いかに光ファイバで行うセンシングについて認知している人が少ないかということですが、認知していただいている企業からは、色々な機種を開発してくれと注文がきます。注文にはお応えしたいのですが、当面は既存技術を応用してアプリケーションを広げていこうと思います。
 今後も、光ファイバセンシング技術の認知度を上げていくことは重要ですが、いくら認知度が上がったとしても従来の歪みゲージ、加速度計などのマーケットを浸食させていくことはないと思います。その原因のひとつは、コストがかかるということです。光ファイバのレーザの光源は高価なのです。
 こうした光ファイバセンシング技術の置かれている立場を踏まえて営業していくとなると、既存のセンシング技術で十分行えるモニタリングに光ファイバセンシングを用いたらコスト面で競争になりませんので、大きい構造物への適用でコスト面のメリットを出そうと考えています。スケールメリットを狙うわけです。具体的な構造物としては約千点の検査箇所がある発電所、千点以上の検査箇所がある精油所のポンプがありますが、これらの構造物をオンラインでつないでモニタリングします。
 さらに、現状のセンシング技術のもつ課題に対処するのもひとつの方法です。たとえば、技術者を定期的に現場に送り、装置が正常に作動していることを目視する必要があるモニタリング作業現場から、現場に人を送らずにオンラインでリアルタイムに現場の状況を把握したいという要望があります。これらの要望には、光ファイバの耐久性を活かし、長期に大きな構造物のモニタリングが可能できることをアピールしていくことになります。また、根本的なことなのですが、モニタリング事業全般の周知が必要です。光ファイバーセンシング技術を使ったモニタリングを理解してもらう以前に、モニタリング会社はどんな事業を行っているのかピンと来る人少ないのも現実です。ですから、非破壊検査や各種材料の試験を行う企業に対して、構造劣化の検査として我が社の解析技術を提供していきたいと思います。
 いずれにしても新しい需要先を見つけていくまでは、光ファイバーセンシング技術の特徴である。防爆性を求める石油関連やガス関連の事業を対象に基盤を作っていきたいと思います。

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AEモニタリングフロー

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熱中性子束モニタの装置構成概略図

■今後の具体的な事業プランをお聞かせ下さい

 現実的なことを言えば採算を改善していかなければなりませんから、投資分の回収をして3年後には収益をプラスに転換していく予定です。
 3年後の目標が決まり、需要先も掴んでいますので、次は需要先である企業とといかに接点をもてるかが重要になります。我が社には十分なキャリアを持つ社員が12名おりますが、彼らは企業や大学とコネクションをもっており、これまで、企業や大学から応援していただいたというのも、彼らによるところが大きくありました。
 技術的な展開ですが、個人的には現場でよく求められる無線化を実現したいと思っています。現状の有線タイプでもメリットはありますが、線があるということと管理が面倒だということもあり、無線には魅力があります。ただし、無線の場合、遮へい物があったり、現場に出入りするトラックのラジオ電波やトラック無線などと交錯したり、色々なデメリットもあるのも事実です。我が社としては将来的に4,5年の期間で現状のセンシング技術での無線化を考えています。
 事業促進を図っていくうえで、顧客に対してモニタリングを実施する意義をアピールしておく必要がありますので、最後に、そのことについて触れておきます。構造物の維持管理は損傷の有無にかかわらず一定期間ごとに点検を実施するTBM(タイムベースメンテナンス)から、施設の状態変化に応じて必要な対処をするCBM(コンディショニングベースメンテナンス)へ移行しつつあります。このCBMの実施は、維持管理、施設や装置の廃棄費用などのライフサイクルコストの削減につながるものですが、よく考えてみると、構造物を長寿命化させるためにはある程度の維持管理費が必要ですから、維持管理費を削減してしまうと、長寿命化の妨げになり両立させることには矛盾があります。そこで、必要なのがモニタリングです。モニタリングすることで長寿命化に向けた必要最低限の維持管理方法を示すことが可能なのです。

■ありがとうございました

※1 自由振動:外力が作用せずに起こる振動
※2 AE:アコースティック ミッション(音響の放出)の意味。
固体が変形、破壊する時に発生する音を弾性波として放出する現象で、破壊に至るはるか以前に小さな変形や微小クラックの発生展に伴って発生する。
※3 シンチレータ:放射線エネルギーが吸収され発光する現象


メカトロニクス2007年1月号掲載

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