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2009年9月15日 (火)

【インタビュー】262万分割絶対角度0.5秒の分解能を実現

ー新しい市場と製品を開拓、拡大して事業を展開ー
日本精工株式会社

2008年10月に精機事業から分かれ、独自の研究開発を行い市場の開拓を進めてきたNSKメカトロ事業部。新しい事業展開のさきがけとして、100℃環境下で絶対精度±10秒の高精度角度検出が可能なレゾルバ方式の角度センサシステムを開発、その新製品と事業部の展望を聞いた。

01
執行役 メカトロ技術開発センター 所長
長竹 和夫 氏

02
メカトロ事業部長 メカトロ技術開発センター 副センター長
森田 公一 氏

03
メカトロ技術開発センター メカトロ開発部 グループマネジャー
坂谷 郁紀 氏

04
メカトロ技術開発センター メカトロ開発部 副主務
桑原 昌樹 氏

■2008年10月に新事業部を発足

 日本精工(NSK)は1916年に創業し、産業機械軸受、自動車関連製品、精機製品の三つが事業の柱となっている。その中で、産業機械軸受と自動車の軸受が現在の売り上げの6割と大きなウエイトを占めており、自動車部品3割、精機製品が1割と続いている。メカトロ製品を扱うメカトロ事業部は、もともと精機製品事業の中に入っていたが、2008年10月に精機事業から分かれ、独自の研究開発を行い市場の開拓を進めてきた。
 同社全体のヘッドクオータは品川区であるが、メカトロ事業部のヘッドクオータは藤沢市になっている。同社の技術開発本部が藤沢に置かれ、R&Dの中心となっているからだ。「私たちが扱っているメカトロ製品は製品を売るだけというものではなく、ユーザーの用途に合わせたシステムを提供するもので、技術的なサポートが必要になります。そのため、技術機能がある藤沢に事業部の本部機能を置いています。そして、本部機能の中にマーケット部門を設けて技術者と営業が一緒になってユーザーの要望を聞き、市場に対応できるようにしています」とメカトロ技術開発センター所長の長竹和夫氏は、技術者がユーザーの情報と常に隣り合わせている体制を強調する。
 メカトロ事業部では、同社が『メガトルクモータ』と呼んでいるダイレクトドライブモータ(DDモータ)、ボールねじやリニアガイドとその組み合わせによる『XYテーブル』、非接触で高精度の『エアベアリング』を主な製品として扱っている。それ以外に、真空や水中など特殊な環境で使われる軸受『スペーシア』があり、高温、腐食、真空などの劣悪な環境に対応できる。この特殊な軸受は、DDモータ、XYテーブル、エアベアリングが使われている分野に近いところで使われるため同事業部の取り扱うところとなっている。この四つの製品とこれらを組み合わせたユニット製品を事業のメインにしていくという。

■メカトロ事業部の製品

 メガトルクモータは、減速機を使わずに低速回転で大きなトルクが得られ、インデックステーブルなどの位置決めなどに使われる。レゾルバの働きにより最大で262万分割の分解能をもっており、精密位置決めをできるのが特徴である。同社がメガトルクモータを市場に出したのは1983年である。海外のモータ会社と技術提携し、同社の軸受の技術で大きな負荷を支えながら精度良く回すことができるメガトルクモータを開発した。精密機械技術と軸受技術をコアに、開発を成功させたといっても良い。現在では8機種のメガトルクモータがあり、外側が回転するPSシリーズが7機種、内側が回転するPNシリーズが1機種である。さらに、今年の4月にPNシリーズが3機種加わるという。
 XYテーブルは、ガイドとボールねじに同社が優れた技術をもっており、その組み合わせにより高精度で剛性の高いものとなっている。また、3次元方向に組み合わせたロボットモジュールも、いろいろなバリエーションの要求に応じている。
 エアベアリング(静圧空気軸受)は、外部から高圧空気を絞り(流体抵抗)を通して狭い軸受隙間に送り、その圧力によって負荷能力を得ている軸受で、軸は非接触で回転することができる。絞りの方法にはいくつかの種類があり、一般的には細い穴で絞る自成絞りが多いが、同社では性能が優れている多孔質絞りを採用している。同社のエアスピンドルユニットは、静圧空気軸受で支持された回転ユニットで、多孔質絞りの採用により、高剛性、低消費流量などの特徴がある。また、軸受材に摺動姓の良いグラファイトを使っているため、焼付きトラブルの低減に貢献している。アプリケーションとしては、ガラスレンズ研磨、ウエハ研磨、ウエハ検査、磁気ディスク検査、ハードディスクドライブのサーボトラックへの書き込みなどの機器や静電塗装用スピンドルなど用途の幅が広い。ボール軸受に比べ、精度良く回転するため超精密が要求される最先端産業に貢献している。
 特殊環境用軸受スペーシアは、宇宙機器用の真空潤滑技術、材料技術、薄膜技術をベースに開発された。真空環境、腐食環境、クリーン環境、高温環境、非磁性環境、異物環境などに適合している。アプリケーションは、真空蒸着装置、真空用ロボット、スパッタリング用搬送装置、液晶パネル洗浄装置など各種用途に実用化されている。
 これらの4製品を軸に、メカトロ事業部ではさらに新しい展開を考えている。「今後、メカトロ事業部を当社の第4の事業の柱となるようにもっていきたいと考えています。そのためには、新しい開拓をしながら新しい製品をどんどん出して拡大を目指していきたい」と、メカトロ事業部長の森田公一氏は抱負を語っている。
 メーカーは完成された製品をユーザーに提供していくのが普通であるが、同事業部では完成されていない製品でもユーザーに見せ、提供していくという。「世の中に認知されていない製品でも、特徴をもった製品を作り、その特徴を展示会などでユーザーにピーアールすることにより、ユーザーから様々な意見がフィードバックされます。それを次の製品の開発に活かしていき、新しい製品、新しい市場を広げていきたい」と長竹氏は語る。
 機械における世の中の流れは、機械要素からメカトロニクスのシステムに動いてきている。メカトロニクスを作り売っているメーカーは多いが、同社は機械要素の技術をもっていることが強みだ。軸受とか直動モータなどの機械技術を核とした、他社とは違ったメカトロニクス製品の事業展開を進めていくという。
 その中で、今までもっていた同社の技術とメカトロ技術を活かして新たに開発した第一弾の製品が、『レゾルバ方式高精度角度センサシステム』だ。DDモータの中には、レゾルバセンサが使われておりその技術を取り出して新しい製品を開拓したのである。当然、同社の軸受の技術も最大限に活かされている。

■高精度角度センサシステム開発の背景

 同社がメガトルクモータで採用している位置検出器は、VR型多極レゾルバである。このレゾルバは、モータ本体と一体構造なので、カップリング、連結機構が不要なためバックラッシなどがなく高精度、振動、温度、オイルミストなどの影響を受け難く信頼性が高いなどの特徴をもつ。さらに、相対値を細かく読むことができる、高分解能ももっている。位置検出器の中には、光や光学半導体を使ったものもあるが、高温高荷重には耐えられない。同社が、高温、高荷重の環境で使えるメガトルクモータを開発したとき、そのような環境でしかも高分解能、高精度の検出器として、鉄と銅でできているVR型多極レゾルバを選びその技術についてのノウハウを積み上げてきた。
 同社のレゾルバの特徴は、“1相励磁3相出力”“ロータ側には捲き線を使用しない”“ステータ側は励磁巻線と検出を兼用”の三つを行っていることである。さらに、ロータの歯が80個という多極レゾルバ方式とRDCによる高分解能化という独自の技術がある。
 「新しい角度センサの開発を進めたのは、当社のレゾルバ技術を活かし、特殊な環境で使えるニーズがあるのではないかと考えたからです。そして、もともともっている軸受の技術と合わせ、レゾルバ式角度センサシステムが生まれました。ユーザーのニーズから作られたものではなく、当社からユーザーへのご提案という形の製品になります」と長竹氏は話す。

■262万分割0.5秒の分解能を実現

 角度センサとは、回転体の角度/速度状態を検出するもので、DDモータ、NCテーブル、フイルム製造装置のローラの角度測定など産業機械用に多く使われる。今後、産業機器製品の高性能化、生産性向上に伴い、高分解能/高精度化の要求が高まると予想される。同社の調べでは、現在の産業機械に使われる角度センサの分解能は数10万分割以下が主流で、角度精度は高いもので20〜40秒だという。
 今回、同社が開発したレゾルバ方式高精度角度センサシステムは、高精度化アルゴリズム(誤差補正)により同社従来比1/10の高精度を実現している。耐環境温度も、光学式は高温環境下では使うことができないが、レゾルバを使用することにより100℃下で絶対精度±10秒以下を達成している。また、従来の角度センサは荷重を直接受けることは難しかったが、高剛性軸受を採用することにより直接負荷を受けることができる。許容回転速度も600rpmを確保し、262万分割を達成することにより絶対角度の最小分解能は0.5秒を実現している。
 高精度ということは、例えば物が90度動いたとき、本当に90度ぴったり動いているかを測れるかどうかである。従来の角度センサは、90度動いたものに対して±20秒の誤差があった。それに対し、開発した角度センサは90度動いたときに±2秒の誤差の範囲に収まっている。
 高温環境下では、様々な要因により測定精度は劣化するものである。従来のセンサは、環境温度は80℃くらいまでは謳われているが、絶対精度は常温で±20秒から温度が上がるにしたがって±30秒に近づいていく。開発されたセンサは、環境温度100℃を謳っておりそのときでも絶対精度±10秒以下であることが測定の結果として出ている。
 同社は、環境配慮型の製品開発を基本方針としており、角度センサシステムでも高分解能の角度センサで高さが35mmと薄型化を実現している。
 モーメントを直接受ける用途、アキシアル荷重を受けるところの用途に強いのも特徴である。従来の角度センサは荷重に弱いため、カップリングなどの機構部品で補って複雑化しているが、開発されたセンサは直接荷重をうけながらでも角度が測定できる。角度センサが付いた軸受として使うことができるのである。
 「これらの特徴を活かし、あらゆる産業分野の高精度角度検出に使っていただきたいと思っています。現在は、ニーズ探索をしている段階ですが、他社にない性能と機能でお客様のニーズにお応えできると思います」とメカトロ開発部グループマネジャー坂谷郁紀氏は開発した製品への自信を語ってくれた。
 開発にあたって、レゾルバ方式の角度センサとして製品にするためには、従来のメガトルクモータのレゾルバ技術では精度的には追いつかないことは分かっていた。±20秒の精度を一桁上げて、±2秒の精度にするために何をすればよいのか、本当にその精度が出ているのか、そのための補正技術、その補正で問題がないのかという確認などという開発と検証に時間が掛かったという。また、材料によって膨張率が違うので温度が上がるとそれぞれに膨張するが、温度が元に戻ったとき、それぞれが元の位置に戻るかという再現性の問題など解決しなければならないことが多くあった。角度センサの提唱から約2年、開発に1年掛かったという。直接開発に携わったメカトロ開発部副主務桑原昌樹氏は、「開発に取り掛かるに当たって今までに当社にはない高い精度を追求したわけですが、それを証明する計測器もないわけで、できたのかどうか確認するのが難しい問題でした。そのために、その精度を測れるように測定器を改良することから行いました」と語る。

■今後の展開

 同事業部は、先に述べたように新しい展開を目指している。レゾルバ方式角度センサシステムは、これから製品をどんどん出していこうという一つの例の製品になる。「この角度センサは、新しいコンセプトで作っているので、新しいコンセプトを受け入れられる未知の市場性がまだまだあると考えます。それを事業として、どう捕まえながら展開していくかということが重要になります。今はお客様に持ち込みながら様々なご意見をお聞きし、他のメカトロ製品も含めた新しい商品を企画し出していくためのツールとしていきたいと考えています。さらに、今後の新商品も新しい今までなかったコンセプトで出していく姿勢をもっていきたい。NSKのメカトロのコアを使いながら、社内社外を問わず周辺の製品を取り込みながら、新しい拡大としての事業を展開していきたいと思っています」と森田氏は展望を語ってくれた。

メカトロニクス2009年4月号掲載

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