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2009年8月 3日 (月)

【インタビュー】地域科学技術事業の新たな取り組み

— 産学連携はコーディネータが大事  ─
JST産学連携事業本部 地域事業推進部 部長 齊藤 仁志 氏

 早くから地域の発展に特化して取り組んできた科学技術振興機構(JST)。第3期科学技術基本計画に基づき、地域イノベーション創出総合支援事業について、JST産学連携事業本部地域事業推進部 部長 齊藤 仁志 氏に話を伺った。

★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★

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JST産学連携事業本部 地域事業推進部 部長
齊藤 仁志 氏

■地域事業推進部の支援事業についてお聞かせください

斎藤:第1期科学技術基本計画に我が国が科学技術立国を目指すことが謳われていますが、それに付随しまして都道府県の自治体のほとんどが科学技術立県を目指す意思表示をしました。国が色々な制度、重点推進分野を決めてやっていくことに対応し、各自治体も自分たちの大綱を作ったのですが、何をどうしていったらよいのかという戸惑いもあったようです。
 そこに対し、JSTは平成8年度に「地域研究開発促進拠点支援事業」略して「RSP事業」を行いました。これは地域が持っている潜在的な科学技術力を引き出すための活動を支援するコーディネータを配置し、その経費については予算をつけさせていただくという事業です。JSTは昔新技術開発事業団という名称でしたので「新技術コーディネータ」という名前で、いまの「科学技術コーディネータ」が行っていることをしていただきました。最近コーディネータといわれる方が様々なところにおられますが、私どもがその先駆けであったと自負しています。
 地域の根起こしをして素地を作ることが目的で、各自治体の認可財団などの機関に選んでいただいたコーディネータの方に大学のシーズ、企業のニーズの根起こしをしてもらい企業化する事業を進めていただきました。
 平成8年度から11年度までに「ネットワーク構築型」としての機関を26機関設置してきました。都道府県自治体ひとつに1機関設け、実施期間は4年間で、年間4,000万円ほどの支援をするものです。
 平成11年度から、より成果を求めたものにしていくため、同じRSP事業の中で「研究成果育成型」の支援事業を進めました。ひとつの機関を支援する金額も 7,000万円に増やし、期間も5年間というもので実用化につなげるための体制整備の推進活動を助勢してきましたが、今年の3月をもってこの事業は終了いたしました。この支援事業はかなりの成果が出でおり、結構実用化されているものもあり、地域の科学技術の根起こし、意識の改革については非常に良かった制度だったと思っております。
 RSP事業は地域支援事業のはしりとして平成8年度からスタートしたものですが、平成9年度から大型のものとして「地域結集型共同研究事業」の実施をしています。 同じ結集型ですが平成18年度から実施のものは「地域結集型研究開発プログラム」と名称が変わり、これを「新結集型」といっています。
 地域結集型とは、地域にとって必要性の高い分野の個別的研究課題を集中的に取り扱うものです。
自治体の中で必要としているテーマを、地域の産学官が知識と力を結集して取り組んでいくという地場に根ざした内容になっています。資金は1地域につき年間2.4億円、期間は5年間という大きなプロジェクトになっています。 地域事業推進部の活動は「RSP事業」と「地域結集型」の2つの大きな流れをベースとして、第1期の基本計画から地域に特化した事業に取り組んできたことが大きな特徴といえます。 しかし、社会や自治体も進化をしておりますので、制度も改良して進めていかなければなりません。そのような意味で、今年から「地域イノベーション創出総合支援事業」という形で事業展開をしていくことに致しました。これは平成13年から「重点地域研究開発推進プログラム」通称「プラザ事業」という事業を行ってきたものを中心に拡大したものです。
 それまでJST は研究施設を持たない研究機関といわれていましたが、地場に溶け込み支援していくには研究施設を持つ必要があるという考えが出てきました。そして、自らの施設「研究成果活用プラザ」を自治体の協力を得て作っていくようになり、現在全国で8施設となっています。ほかに自治体または地元の大学の研究施設をお借りして自主事業を行っている「JSTサテライト」が現在4施設あり今年新たに4施設増やすことになっています。
 このように地域事業推進部が現在行っている事業は大きくいって「地域結集事業」と「プラザ事業」ということになります。先ほどいいました「RSP事業」は地域の下地づくりが整ったということで、事業を終了させていただきましたが、その精神はこの2つの中に流れていっています。
 その成果を知るひとつとして、JSTの事業を利用して設立されたベンチャー企業をJSTの事業別に見ますと、平成17年11月時点で、総数155件のなかで地域結集型からは15件、RSP事業からは43件という結果が出ており、地域事業がベンチャーを起こしていることが分かります。

■「プラザ事業」の延長である「地域イノベーション創出総合支援事業」について詳しくお話ください

斎藤:第3期基本計画ではイノベーションの実現が謳われていますが、JSTにおいても全国における地域支援の拠点として「地域イノベーション創出総合支援事業」としてこの制度を作ることにしました。図にありますように、まず本部がありその下に地域連携推進のためのプラザ・サテライトが先ほどいいましたように 16施設があります。
 そして、ひとつの流れとして「シーズ発掘試験」というのがあり、これはポストRSP事業に当たるものです。当初はRSP事業でJSTがコーディネータの支援をさせていただいたのですが、10年経ちましたのでコーディネータも、地域も、自治体も独立できるようになったと考え制度はなくしてしまいました。しかし、地域の根起こしをするためにコーディネータが大学の先生などのシーズを発掘するときに、先生たちからもう少し研究したい要望があったときに応えられるような制度も必要です。それがこの制度で、シーズを実用化に向けて試験研究を実施するものですが、この申請は研究者とその仲介をするコーディネータの二人で申し込みをするという珍しい制度になっています。コーディネータも先生に斡旋するだけでなく、最後まで面倒を見るという内容になっています。 試験研究費としては200万円で、平成17年度の例でいいますと採択予定は500件でしたが、3,752件の応募があり510件採択させていただきました。非常に好評だったものですから、今年は1,000件採択へと倍増し、応募は5,621件ありました。この制度は先生一人につき1 件の応募しかできませんので、少なくとも5,621人の研究者が参画していただいていることになります。
 このように根起こしをさせてもらったものを、次にはプラザ・サテライトにおける「育成研究」という制度で支援いたします。この制度は1課題あたり年間3,000万円程度で、期間は2年から3年となっており、大学とそれを企業化する企業と私どもJSTの3者による共同研究スタイルで行う制度になっています。
 しかし、育成研究を3年やったとしてもすぐに企業化するには難しいものがあります。なかには育成研究からすぐに企業化した例も若干ありますが、なかなか大きなものに結びつけられません。そこで今年からですが、「地域研究開発資源活用促進プログラム」という制度を作らせてもらいました。シーズ発掘試験、育成研究が大学の研究室でプロトタイプを作るという位置付けでしたが、資源活用プログラムは企業が販売できる一歩手前までのプロトタイプまで作るというものです。この研究期間は1年から 3年で、試験研究費は幅が広く年間3,000万円から1億5,000万円までの支援をさせていただきます。
 以上のようにシーズ発掘で1年、育成研究で3年、資源活用で3年という7年間のシームレスでひとつの流れができています。ただし、これらは一つひとつが競争的資金ですので、各々審査をさせていただきますし、シーズをやっていいなくても育成に応募ができ、育成をやっていなくても資源に応募をすることができます。資源活用には文部科学省の「知的クラスター創成事業」「都市エリア産学連携事業」JSTの「地域結集型共同研究事業」などからも入ってくることもできるという位置付けです。

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■「地域結集型研究開発プログラム」についてご説明ください

斎藤:各都道府県または政令指定都市が地域として企業化の必要性が高い分野において研究開発課題を個別的に取り上げ、産学官による共同研究を行う事業で、JSTが1地域あたり年間2億 4,000万円程度の支援を行います。大学などの基礎研究から創出された技術のシーズを基にして、新技術・新産業の創出となるように企業化を目指して試作品の研究・開発などを行っていくものです。
 先ほどもいいましたが新結集型と旧結集型があり、旧結集型が現在14地域で実施しており18年度からの新結集型が2地域と、現在16地域でのプログラムが動いています。 各プログラムは自治体が認定した財団を中核機関として、JSTが委託して行っていただいている事業ですが、JSTのプラザ・サテライトの館長、コーディネータが中核機関と連携・支援をさらに強くして事業を早く企業化に結びつくように進めています。
 京都の例でいえば、京都府、京都市で結集型プログラムをやっていていたのですが、プラザとは連携していませんでした。事業内容が違う、運営手法が違うなどのことからなかなか連携が取りづらかったのかと思います。京都市では結集型プログラムの中核機関が設けた共同研究推進委員にプラザの館長を入れていただき、非常に密接な関係になっていきました。それにより事業が加速していくものと期待しています。
 そのほかにも理解増進、情報の普及、特許などの支援もやらせていただいています。今年の夏にも北海道プラザ、京都プラザ、広島プラザなどで理解増進事業をやっていただいています。そういう意味ではオールJSTの出先機関というような位置付けでプラザ・サテライトの活用を図っています。 各地域の先生方がJSTの色々な事業についての質問がある場合にも、プラザ・サテライトにご連絡いただければ速やかな対応を取らせていただけます。

■地域の中堅・中小企業の方々がJSTをどのように利用していくことができるのですか

斎藤:我々もこのように各地域に出先機関を持たせていただき、色々な成果報告会や発表会があって地域の企業の皆さんと話をさせていただく機会が増えました。地域の企業の人たちは、同じ地域にある大学の先生の所にもなかなか足が向かなかったようです。JSTには企業と大学をマッチングするコーディネータという制度があり、コーディネータの人たちが来てくれたおかげで非常に敷居が低くなったという話もお聞きします。これは色々な地域において中小企業の社長の方々からお話していただく非常に嬉しい話です。
 地域におけるものづくり技術の力、まさに職人わざといえる技術はすばらしいものがあります。ところがそれには文献とか、情報とか、特許などに裏打ちされたものを持っているのが少ないと感じます。日本の場合やはり特許を持っていないとだめなこともありますので、非常にもったいないと思います。そういうものにつきましても、プラザ・サテライトのコーディネータの人たちが大学と中小企業と結びつけて、中小企業の社長の方たちに対しても特許の制度が大事であるということを理解していただけるよう話させていただいています。
 JSTのデータベースでも約1,200人ほどのコーディネータが登録されています。そういう方が活動しやすいような、たとえシーズ発掘のようなものを拡げていけたら地域の根起こし、発展になっていくのではないかと思っています。
 我々も各地域で技術説明会・発表会もさせていただいておりますので、どんどん参加いただければありがたいなと思っています。

■JSTを知っていただくためにどのようなことをされていますか

斎藤:先ごろ全国地方新聞連合会と初めて懇談会をやらせていただいたのですが、「JSTは大学とか研究者には知れ渡っており、またいい制度もやっていますが、一般の方々にはなかなか理解されていない」というご指摘を受け、私どもも反省いたしました。そのようなこともあり、今年初めて北海道と福岡県で我々の部が中心となりシンポジウムを行いました。
 北海道で行ったとき、テーマを何にするかを北海道庁にお聞きしましたら、「食と健康」でやって欲しいということでした。そこで、RSPや地域結集型をとおし協力させていただいた企業、オリゴ糖の「ツイントース」とかハム、チーズなど食べ物の開発にかかわった企業などに声をかけ、展示、出展、試食をしていただいたところ、かなりの好評を得ました。
 福岡県につきましてはロボット特区ということもあり、「ロボット」をテーマに行いました。福岡県には理解増進事業としての「SSH」が2校あり、そことタイアップしてロボットの実演なども行い子供も大勢こられて好評でした。
 我々がようやく大学の先生方だけでなく色々な人に眼を向けて、JSTの制度を見てもらうことの必要に気づきました。実はシンポジュームでアンケートをとったところ、半数の人がJSTを知らなかったことが分かりました。これからはどんどん一般を含めた地域の中にも打って出ていく必要があることを認識しているところです。

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地域との密接な関係をはかるためJSTとしてはどのようなことをされていますか
斎藤:企業にJSTの催しに参加していただくため、各自治体と連携を図り始めたというのが現状です。今後はもっと、我々の動きを企業に早く流せるようなシステムができるようにしていきたいと思っています。実は東北経済連合会とはタイアップの仕組みを検討しているところです。
 地域との密着ということでは思い出深いことがあります。三重県の地域結集型研究開発プロジェクトに「閉鎖性海域における環境創生プロジェクト」というのがありますが、このきっかけはある一人の真珠貝養殖業者の方でした。その方は真珠貝が大きくならなくなったことの原因究明と対策について市を動かし、市は県に働きかけ、県は色々検討した結果JSTの結集型に注目しました。これも三重県のコーディネータの活動の賜物です。この創生プロジェクトはいま研究が進み文部科学省だけではなく、環境省、国土交通省などを含めた一大プロジェクトになりつつあります。 面白いスタートの事業だなと思うとともに、身近に困ったことがあっても相談する場所がないということも分かる話でした。一人の人の問題意識が市と県を動かし、県が私どもに相談を持ってきたという形ですが、実は三重県はRSP事業を一緒にやっておりましたので、JSTの制度利用という発想をされたのだと思います。このことからも我々の制度を理解し評価する先生方やコーディネータが増え、JSTの事業の活用の仕方を皆さんが分かってこられたと思われますし、このような姿がほんとうの地域事業といえると思っています。 そのためにも地域における自治体、企業、大学の先生という三者にアプローチをかけていき、常に情報の交換がなされることが大切だと思います。地域事業推進部としてはもっともっと推進を通してアピールをしていかなければならないと思っています。

■地域事業の拠点となるプラザ・サテライトについてもう少しお話ください

斎藤:RSPや地域結集型における事業で、地域活動の素地を育てさせていただいたと思っています。そうはいっても大きなプロジェクトに持ち込むというのは地方自治体にはなかなか難しいものもあります。そのためJSTが積極的に係り、事業の堀起こしを図ろうと考え平成13年からプラザ事業を行ってきました。 この大きな目的は3つあり、1つは地域産学官の交流です。これは科学技術コーディネータが、大学や企業などの研究開発情報を収集し、地域における試験研究や技術移転のためのコーディネート活動を行っていくことです。そして、研究者、技術者、経営者によるセミナー、フォーラム、研究会などを開催していくことです。このような出会いの場を提供していくことがポイントです。
 2つ目は諸事業との連携ということで、コーディネータが収集した研究開発情報や、研究成果をプラザ・サテライトだけでなく、JSTの各種事業をはじめ、国や自治体の諸事業への橋渡しを行うことです。 3つ目は大学や公的試験研究機関などの研究成果で実用化が望まれる技術について課題を募集し、大学などの研究者、事業家を推進する企業、JSTが雇用する研究員などが共同で、実用化に向けた試験研究を実施する育成研究などを推進することです。
 技術革新による地域経済の活性化、新規事業の創出を目指すとともに、プラザ・サテライトはJSTにおける地域事業の窓口としての役割を果たしています。
 これらのことを進めていくのにも、やはり地域で大事なのはコーディネータだと思っています。プラザ・サテライトはコーディネータが命だと思いますし、全国の自治体においても、素地を作っていただき制度を継続されているコーディネータは大切だと思います。
 コーディネータと先生とは信頼関係が大切ですので、マンツーマンで接していただいています。また、プラザ・サテライトにはコーディネートスタッフという人たちを育てています。プラザ事業には若手育成というのもひとつのミッションになっています。
 プラザ・サテライトも全国16箇所準備させていただいており、ひとつのプラザに科学技術コーディネータ、コーディネートスタッフと事務のスタッフで12 名、それに研究者13名ほどのスタフも揃っておりますので、大いに活用していただきたいと思っています。 前回の産学連携推進部長の話にもありました特許主任調査員も各プラザ・サテライトにおり、特許相談の日を設け地域の企業の方々に対し特許の説明、相談を行っておりますので、気軽にきていただきたいと思っています。
 また、プラザは地域における科学技術に関する集会・会議などがあった場合はおおいにご利用していただきたいと思います。

本日はお忙しい中ありがとうございました

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メカトロニクス2006年10月号掲載

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