【インタビュー】食の安心/安全に応える充填機用電磁流量計
— コアの技術を活かしてソリューションを提供し、ユーザーのさらなる生産性向上を目指す —
株式会社山武
食の安心、安全が求められる現在、飲料の充填機に使用される流量計にも洗浄耐久などの衛生面が求められるとともに、高速充填に対応する高い充填精度など
も必要とされる。変換器と検出部を一体化し、飲料と接液するライニングには高温殺菌・薬品洗浄にも耐久するための専用処理を実施。さらに、矩形励磁式の進
化形である高速矩形波励磁方式を採用した電磁流量計による高再現性を実現した、株式会社山武 アドバンスオートメーションカンパニーに充填機用電磁流量計
『MGR11A』の技術を中心に話を聞く。
アドバンスオートメーションカンパニー マーケティング部
プロダクトマーケティング部長
泉頭 太郎 氏
アドバンスオートメーションカンパニー マーケティング部 IP2グループ
グループマネージャー
野沢 文峰 氏
■山武の目指すもの
山武は、製品だけを提供する会社ではなく、ソリューションを提供しユーザーの問題を解決していくことをコアとしている。同社グループのシンボルはazbil(Automation-Zone-Builder)であり、『「人を中心としたオートメーション」で、人々の「安心、快適、達成感」を実現するとともに、地球環境に貢献する』というグループ理念を表わしている。
同社は、アドバンスオートメーション事業(AA)、ビルディングオートメーション事業(BA)、ライフオートメーション事業(LA)の三つの事業の柱がある。AAは、石油、化学、食品、自動車といった産業に携わった事業で、2007年度の売り上げは1,054億円である。BAは、ビルディングの空調、制御などで、売り上げは1,005億円。LAは、生活セキュリティーの提案、介護/健康支援のための提案を行い、売り上げは365億円である(売上金額はすべて2008年5月9日決算説明資料による)。それぞれの事業において、ユーザーの問題を解決するソリューションを提供する中で必要なものを作る、そこにメーカーとしての仕事があるという。各事業の中で、必要に応じて制御機器、コントローラといったデバイスをそれぞれが作っており、事業のニーズに合った用途の製品の開発と、ものづくりを行っている。
「『人を中心としたオートメーション』というのが我々の事業を進める上での理念となっており、生活や製造現場など人が活動する空間にどれだけ快適な環境を提供できるかをポイントとし、必要なすべてのソリューションをお客様に提案することを理念としています。そのため、製品の提供だけではなく生産性向上・製造現場環境の向上など、お客様の建物や工場の仕組みそのものの提案を行うことが多くなります。そういう意味で、メーカーでありソリューションカンパニーでもあるというのが当社のスタイルですね」とAACプロダクトマーケティング部長の泉頭太郎氏は同社の理念を語る。
山武 電磁流量計の変遷
■アドバンスオートメーション事業の流量計
ものづくりのメーカーの工場ではいろいろな生産プロセスが考えられているが、生産プロセスの制御系統の製品とソリューションを提供しているのがアドバンスオートメーションカンパニー(AAC)である。工業用オートメーションの現場計器としてセンサ、コントローラ、アクチュエータの三つを機軸に製品を展開しており、商品的には、温度発信器、流量計、圧力発信器、自動調節弁、コントローラ、指示調節計などを扱っている。今回はその中で、電磁流量計を中心に話を聞いた。
山武は2009年で創業103年目となるが、もともとは山武商会という技術商社だった。国内における石油・石油化学・化学業界、主に石油からものを作っていく工程のオートメーションのため、新しい技術を海外から導入していた。その中で、日本のメーカーが使い易い製品を作っていく必要を感じ、メーカーとして製品の一部を自社で作るようになった。まず、米国ブラウン社と技術提携し、コントローラや指示計などを導入し、それをカスタマイズして日本市場に提供。さらに、1952年には米国ハネウエル社とも技術提携し、やがて日本市場におけるハネウエル社のライセンスを獲得し、制御機器やセンサの技術を保有するようになった。共同開発も行い、例えば差圧圧力発信器においてはセンサをハネウエル社、コアのメータボディ部は山武が設計・製造していた。そのような開発製品の中で、電磁流量計は山武が独自で開発し、逆にハネウエル社が山武の電磁流量計を世界に販売してきたという歴史をもっている。
山武は、公害対策基本法注1)に基づいて1971年に排水総量規制注2)が開始されたとき、本格的に電磁流量計を開発して参入している。同社の参入は、世界的にも日本においてもかなりの後発になるが、最初に開発し1970代後半に発売された潜水型電磁流量計は、2009年になった今も販売され、同様の商品が他社から発表されていない点など、技術の高さを物語っている。
同社の電磁流量計販売が急成長を遂げたのは1981年で、2,000台近い台数で初期のピークをなしており、その後も順調に売り上げを重ねてきている。「2007年に電磁式流量計事業30周年を記念してまとめた資料ですが、電磁流量計の世界販売台数シェアはARCレポートによれば2005年に4.5%で7位、一方、日本における統計結果によれば国内販売台数は2006年で37%の1位となっています」と、IP2グループグループマネージャーの野沢文峰氏は語る。1992年に7,000台の販売台数であった電磁流量計が2007年には19,500台まで拡大している点からも大きな成長を果たしていることが伺える。
電磁流量計のラインアップは、水や食品などあらゆる導電性流体を量る一般用、ビルシステムの空調用、工業用水用、食品充填機用、紙パルプなど固形物の入っているもの用などバリエーションがある。その中で、充填機用電磁流量計は、食の安全、高速充填などの要求により最近ニーズが増えてきている。そもそも、初期における缶などの充填用流量計は電磁式ではなかったが、1995年ころからニーズの声が高まり同社も開発に取り掛かったという。
注1)公害対策基本法 1967年8月3日施行。日本の4大公害を受けて制定された公害を規制する法律。1993年11月19日、環境基本法施行に伴い廃止。
注2)排水総量規制 総量規制制度(東京湾などの広域的な閉鎖性水域を対象に、汚染負荷の総量を統一的かつ効果的に削減することを目的として制定。この制度は、水質汚染防止法(1970年施行)の1978年の改正により導入された)に基づく産業/生活廃水の規制。
世界的に見ても、タービン式などの伝統的な機械流量計の売り上げはまだ多いが、ここ10年くらいからの傾向として、電磁式、コリオリ(質量)式、渦式、超音波式、熱線式などの新しい原理の流量計に変わってきている。機械式の流量計は安くて使い易いためメジャーではあるが、様々な制限が存在する。耐久性の問題や、飲料充填に使うときは部品が多いことから詰まりの発生や洗浄性の悪さなどが挙げられる。そのため、飲料関係においては、食品の安全や環境規制などユーザーのニーズや社会的要請から、機械式でない流量計が求められるようになった。電磁流量計のコア技術をもっている同社では、それらのニーズに応えていくことができる。
「食料分野においては、メーカーから販売会社、消費者へと渡るときに、取引という観点から見れば定量取引がなされなければなりません。そのため、缶やビンに詰められるのは一定の量であることが求められ、定量測定の再現性が高い新しい方式の流量計が必要とされています。しかし、今まで使い慣れてきた安価な機械式に代替するだけのメリットがあるのか、お客様の一番問題となるところです。そこに対して我々は、耐久性があり正確であることなどのメリットを説明しています」と泉頭氏は話す。
今後も、新原理の流量計の使用は伸びていくと見られている。伸び率からみれば規模が伸びきっていないコリオリ、超音波流量計が伸び、すでにある程度の市場を獲得している電磁流量計がその次に伸びていくとの予測がある。これには、食の安全、トレサビリティーが社会的に求められていることも、大きな要因になっているという。
■山武における電磁式の変遷
山武の電磁流量計の変遷を見てみると、1970年代に発売した潜水型電磁流量計は世界で初めて矩形波励磁方式を採用している。今でこそ、世界の電磁流量計メーカーが使っている技術だが、当時はユニークな原理であった。同社が後発ながら今のシェアを獲得できたのは、この原理が優れていたからに他ならない。
電磁流量計は、流体の微弱な電流を検知するものだが、流体そのものがノイズをもっており、流量信号とノイズ信号の誤差を分離する能力が高くなければならない。「矩形波励磁方式は、従来の電磁流量計のようなサンプリングタイミングの電圧変化がなく、ノイズと信号の切り分けがきっちりとできるようになっています。現在、世界の電磁流量計の95%で使われている基本原理であり、産業系の流量計は一気に測定領域が広がりました。それまでの電磁流量計は、安定して信号を得ることができなかったのですが、矩形方式にすることで安定した信号を得る技術が確立されたわけです。」と野沢氏は語る。
1985年には、軽量でコンパクトな流量計を発表し、その10年後にはユーザーが配管工事をすることなく容易に流量計をリプレース、取り付けできるタイプのものを開発している。
また、1981年にはマイコン搭載型の電磁流量計を開発しているが、当時はマイコンを積んでいるから良いという評価はされず、まったくヒットしなかったという。マイコン搭載が日の目をみたのは1987年になってからで、励磁方式が良いうえにハイレベルなノイズ処理、デジタル処理された出力が安定的に得られることが評価された。「この頃は、計測業界においてもアナログ時代からデジタル時代に変換する時期でした。当社としても、デジタルインテグレーションをスタートさせ、『スマート』をキーワードに展開しました」と、泉頭氏は同社の流量計デジタル化のスタート時を語った。
その後も、コアの技術を基にユーザーのニーズを商品として展開し、時代に合わせた製品とともに同社の電磁流量計の売り上げは伸びている。
■充填機搭載用電磁流量計
山武は2008年11月に、変換器/検出器一体型のサニタリ型充填機搭載用電磁流量計『MagneW3000Hyper MGR11A』を開発、販売を開始している。飲料などの充填機に搭載し、ペットボトル、缶、樽などに清涼飲料水、炭酸飲料、ビールなどの酒類といった液体を定量充填するための流量計で、1本あたり1〜10秒程度の短時間の充填において、高い再現性と環境に対する耐久性を実現した。
同社は流量計において、電磁式の技術が優れていることは先に述べたが、充填機用になぜ電磁式が良いのか、その優位点を述べてみる。
現在は、飲料、ビールなどの酒類は多品種かつ大量に作られている。最高速のマシンでは、1分間に900本以上のペットボトルを充填するものもあり、充填機メーカーがそのようなニーズに直面しているため、高速で正確な充填機用流量計のニーズもでてきている。飲料メーカーも多品種の飲料を切り替え作っていくため、流量計はあらゆる流体に対応できなければならなくなっている。
そのような中で、流量計におけるシリンダ式、容量式、タービン式など従来の機械方式のものは、可動部があり、液溜りがあるため洗浄が難しいという問題がある。入り組んだ構造は、メンテナンス性の向上や洗浄性、高速充填に適さないのである。
また、同じ従来式において重さで測るロードセル式があり、速くて正確であるが、炭酸飲料においては風袋ができないため基準となる0点を取ることができず、すなわち炭酸飲料は測れないという欠点がある。そのため、新しい流量計測のシステムが求められ、従来から欧州では電磁流量計式の採用実績が多くあった。
電磁流量計は、可動部、液溜りがなく、パイプ内部は突起物がなく自動洗浄ができメンテナンス性が高い。直接流量を計測するので信号出力も早く、高速充填が可能である。また、炭酸飲料の充填にも適した測定原理であるなど利点が多い。「量や正確さということもありますが、今は食の安全に関しては消費者の目が厳しいですから、洗浄性など衛生に対して食品メーカーが神経を使っており、そこが絶対的な要求になっております」と泉頭氏は語る。
『MGR11A』が、変換器/検出器を一体型にしているのも、ステンレスケースであることもそうした衛生面への配慮からで、溜りをもたせないことや外観の洗浄耐久性などを考えてのことだ。さらには、製品の表面にシールや塗装などは使われておらず、ねじにおいても穴付きねじは使われていないなど、流量計の外観に関しても衛生面における要求を十分に考慮している。
飲料などの売られ方も昔に比べれば変化しており、透明なペットボトルに入れられたものがコンビニなどに並べられているなど、中身の液面の高さなどがエンドユーザーに見られることが多い。そのため、同製品が実現している高い流量変化追従性と高い流量再現性による精度が重要になっている。飲料メーカーによって若干差異があるが、管理基準はだいたい500mℓの容器に対し数mℓということであり、流量計の精度がかなり求められる数字である。
衛生面においてはライニングの洗浄が重要だが、同製品のPFAライニングは、CIP(薬品と約85℃の温水による管内洗浄)とSIP(約140℃のスチームによる管内殺菌)に強い構造と材料を選定し、特殊な工法を使って自社で成型まで一貫生産している。材料は購入しているが、どのような樹脂を使いどのような工程で成型するかは同社独自の生産技術だ。液が通る内側は成型による鏡面仕上げになっており、面粗度は世界でトップであるという。
「充填機用電磁流量計のポイントは、いかに食品の安全を守り、耐久性をどこまで高めて、お客様の使い方の厳しさに対して応えられるかだと思います」と、野沢氏は語る。
電磁流量計『MagneW3000Hyper MGR11A』
MGR11Aの前機種として、2000年に発売を開始した『MGR11U』があり、国内において3,500台近い納入実績がある。変換器と検出器が分かれており、ボックスの中に4台のスロットを納めることができる。しかし、スロットを納めるボックスは防水ではなく制御盤に入れることになるが、ユーザーからはボックスを置く場所がないなどの問題もあった。また、今のニーズは、装置をいかに小さくするかでありそれを含めて一体構造を検討していった。
充填機は円状に配管が並んでいるため、設置された電磁流量計は放射状に並ぶために、一体構造のMGR11Aは内側にくる変換部に微妙な傾斜をつけている。また、同社は、社内の開発基準があり従来製品の環境負荷を、CO2に換算した総合エネルギー支出で30〜50%押さえなければならない。設計段階から意図して材料選定をし、設計をするかの基準を設けているのである。そのため、MGR11Aは電気使用量も1台6Wと前機種の半分ほどになっている。
■今後の展開
昨年開発されたMGR11Aは現在、テストフェーズのユーザーと採用フェーズのユーザーがいる。ユーザーが装置に組み込んで評価して、結果が明らかになってから採用となるパターンが流量計には多い。装置の中には様々なエレクトロニクス機器が組み込まれており、ユーザーが他の付帯設備と合わせて総合精度を見るためにテストフェーズから入って検討する必要があるからだ。
同社では、MGR11Aは国内における充填機用電磁流量計の要求度を満足しており、MGR11Uの開発から今までの半分の4年ぐらいで販売台数はMGR11Uを確実に超えると考えている。
また、MGR11Uは、まったくの国内向けモデルであるが、MGR11AはCEマークなど欧州規格を満たしており今後は海外への展開も考えている。同社は、2009年4月には京都に新工場が立ち上がる予定で、そこでは、国際基準に合わせた電磁流量計の校正装置を備えている。「充填機はもともと欧州から発展したものですから、本場でも採用されるように必要な規格は全部備えています。当然競合も多いし、価格においてもきびしい面はありますが、耐久性が倍であれば評価も変わってくると思います。また、充填機メーカーばかりでなく、エンドユーザーであるボトラーや飲料メーカーの方からも評価をいただき、その声が充填機メーカーに反映される、といった両面で攻めていきたいと考えています」と野沢氏は抱負を語る。
同社では昨年、電磁流量計を19,500台生産しているが、3年後には1.5倍以上の生産台数になるだろうと見ている。一つには、食品、飲料の業界はまだ広がっていく可能性があり、その中で飲料の流量計の必要性は今後も増加が見込まれるからである。また、初めに述べたように、従来の機械式流量計の市場規模は全体の半分以上あり、機械式の課題を解決することにより、その分野に展開していくこともできるわけだ。さらに、新分野に向けた電磁流量計を開発し、市場を広げていくことも考えらえる。流量計の進化により、量れるものが増えていっているため、限界値を超えていくなど測定領域の拡大も考えられる。
電磁流量計の用途は拡大していくが、測定できない領域もある。電磁流量計は体積流量計であるため、直接質量流量を量りたいときにはコリオリ式やマスフローが最適である。「当社としては、お客様の問題解決をご提案させていただいておりますので、測定対象に対してベストなものをご提供するというソリューションパートナーを目指しています。最適な流量制御をするために、配管やセンサにいたるまでコンサルし、お客様の課題解決を図るのが我々の使命だと思っています。コアの技術、製品をもちながら、自社にないものは外部から購入してでもお客様に満足していただくことが基本と考えています」と泉頭氏は、『お客様とともに現場で価値を創る』、という同社の理念を語ってくれた。
■ センサ活用事例集 充填機用電磁流量計
一体型充填機用電磁流量計の取り付け例
メカトロニクス2009年3月号掲載
