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【インタビュー】ロボットは“Man”ではなく“Superman”

牧野オートメーション研究所 牧野 洋 氏

—機械の動きにおける正確さの追求と、速さの追求は矛盾しない—
 1978年に産業用ロボットSCARAを提唱・開発、スカラ研究会を通し、今では、世界に10万台以上が作られているスカラロボットを産業界に推進。1980年からメカトロニクス誌に自動化こぼれ話を連載されていた牧野オートメーション研究所 牧野 洋 氏にメカトロニクス、ロボットについて語っていただいた。

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牧野オートメーション研究所
牧野 洋 氏

■はじめに、現在の“メカトロニクス”をどのように感じておられますか

牧野:昨日もある委員会でメカトロニクスという言葉が話題になりまして、メカトロニクスと自動化とFAとロボットとごっちゃになっている、どう違うのかという話がでました。
 私は、メカトロニクスの言葉の中にコンピュータを入れたほうが、本当の意味になるのではないかと思っています。
 『コンピュートロメカニクス』という形で、機械と電気とコンピュータ、この3者が融合したものだと考えます。一般には、この三つを含めてメカトロニクスといっていると思いますが、コンピュータにはソフトウエアが含まれますが、機械と電気というとソフトウエアが抜けてしまいますので、それを含めてメカトロニクスという言葉を使いたいと思っています。
 この考えからしますと、ここ30年を考えたとき三つの中でコンピュータがすごく伸びています。ハードウエアはどんどん小さくなる一方で、ソフトウエアは拡大を続けており、小さい中に多くの情報が入っているわけです。そこに通信という要素が入ってきて、いろいろなところから様々な情報が瞬時に見られるようになってきています。
 それに比べると、私の専門である機械は一番遅れているかなと、こう思うのですね。だから、機械をどのように発展させていけば、コンピュータ技術とマッチングがとれて伸びていくのか、ということをいろいろ考えています。
 私は、ユーザーの立場でコンピュータをツールと考えており、仕事をやっていく上で必要なものであると考えます。ツールが便利になれば、機械技術、電気技術が益々発展していくだろうと思います。ただ、我々の努力が足りないのかどうか、若い技術者の機械離れがあるように感じられるのです。
 その中で、ロボットは…ロボットもいろいろな捉え方がありますが、普通いわれているロボットの意味で考えても、ロボットが機械技術に対して目を向け直させる切っ掛けになっていることは良いことだと思います。『私でも作れます』というロボットがどんどん発展してきて、機械技術や昔からのいろいろな技術に対して興味をもたせ、再び取り上げさせる動機になっていると思います。そこへ最新のコンピュータ技術を組み込んで、もっといいロボットにしていきたいと考えています。同じ歯車であっても、何十年前のものと今のものとは違うよという形にしたいですね。

■違いとはどういうものになるのですか

牧野:一つには精度の問題ですね。昔は、加工誤差がmmの単位であったものが段々0.1mmになり、μmになり、今ではnmの加工誤差を議論するような時代になってきています。ある機能を実現するための理論に対して、そのとおりのものを作れるようになってきているのではないかと思います。
 サーボなどもそうで、ロボットのアームを動かす動作でもロボットの出たてのころに比べると、早く正確に動かすことができます。それは、サーボに関係するフィードバック技術が、アナログからデジタルになって益々精度が上がってきたからです。フィードバック技術に理論的なことを組み入れ、その精度を高めることにより思うとおりに動かせるようになってきていると思います。
 正確に動かせるということと、速く動かせるということは、実は技術的には同じことなのです。私も軌跡制御をやっていますが、例えば漫画のスヌーピーの絵を描くにしても、正確に描くことを確実にやろうとすると、意外にもそのことによって早く描くことができるのです。これは最初予想しておらず、正確さを重視すると速度が落ちるだろう、速度を上げると不正確になるだろうと思っていたのですが、どうもそうではないらしいことが分かってきました。正確に描くための技術というのと、スピードを上げるための技術はおそらく同じではないかと今は思っています。だから、速度と精度は矛盾しない、同じ方向の技術で解決できるというふうに今では考えています。

■メカトロニクスの捉え方は変わってきているのでしょうか

牧野:多分変わってはいないと思いますが、膨らんできていると思います。メカトロニクスという言葉を最初に使われたのは、安川電機の森徹郎さんだと伺っていますが、その前から通商産業省(現、経済産業省)でも機電一体化を進め、機械と電気が一緒になってものづくりを進めていく必要性を主張・主導していました。それが、メカトロニクスというもう少し素人分かりのする言葉になり、さらにカタカナ言葉にしたことによって何となくコンピュータ技術のイメージも入り込んできて、という流れになっています。
 ですから、メカトロニクスという言葉ができた頃とどこが違うかといえば、一番大きいのはコンピュータ技術だと思います。メカトロニクス技術の中で、コンピュータ技術がものすごいスピードで進歩してきています。
 機械関係の学会でも、実際のツールはPCであったりセンサであったりする論文も多く、どこが機械の論文なのかという論文もたくさんあります(笑)。

■メカトロニクスの行き着くところは何かと考えたとき、一番分かり易いのはアトムのようなロボットではないでしょうか

牧野:そうだと思います。メカトロニクスという言葉と、ロボットあるいはロボティクスという言葉は同じように使われています。ただ、ロボットの理想があたかも人間と同じ形であるように捉えられがちですが、私はそうではないと思っています。
 人間の歴史は何千万年かの歴史がありますが、機械産業は多く見積もっても200年の歴史しかなく生産、ものづくりは最近のものになります。人間の歴史の中で工業生産との関わりはすごく短いわけですから、工業生産を行うにあたって人間の姿が理想だとはいえないわけです。人間は工業生産を行うように進化してきたのではない、ということです。
 ロボットを作られる方には、ロボットは人間らしくするのが一番いいのだといわれる方が多くおられます。例えば、指は5本なくてはいけないとか、腕は2本がいいとか、目があって鼻があって耳があってというのがロボットの理想の形だ、と思われている方がたくさんいます。専門家だけではなく、一般の人も結構そう思っていると思います。人間が長い歴史の中で進化してきたから、これが最高の形であると思っている人が多いのです。野山で、狩猟、採集、農耕をして生きていくには最高の形かも知れませんが、例えば、半導体を作るのにもっとも適した形かというと、そんなことはないでしょう。車を作るのに、10本の指で作業するのが理想的かといえば、もっと多い方がいいのかも知れません。あるいは、指の長さ、腕の大きさなど寸法的なものまで考えていくと、もっと自由にロボットというものを捉えなくてはならないと考えます。産業用ロボットはこのようなものを作るにはどういう形がいいか、こういうことをやるには何が最適かということで発展してきていると思います。
 私は、ロボットは“Man”ではなく“Superman”だといっているのですけれど、“Superman”で工場のものづくりを行いたいわけです。今までの作り易いということは人間にとって作り易いことにこだわっていないか、作業するのも人間の動作にこだわっていないか考え直すことが必要です。人間がやって上手くいくような仕事を機械にやらせようとするから上手くいかないではないかと思います。そうではなく、アッセンブリ以前の工程であれば、例えば薬を作る、食品を作るのに人間的な機械はないと思います。実際にものづくりの技術というのは、ロボット化の技術ではないと思います。
 ただ、一つのものしかできなかった機械から、いろいろな形のものができる、サイズ的にも品種的にもいろいろなモデルが作れるという機能をもった機械が求められてきています。機械そのものが、ロボット的な、あるいは人間的な機能をもっていないといけないというように変わってきています。しかしそれは、必ずしも5本の指で作れということではないということを分かって欲しいと思います。
 災害救助ロボットで考えても、人間的な形のロボットでは何もできないということがあると思います。ロボットを作って災害救助に役立てようというのではなく、災害救助のための機械はいかにあればよいかと考えるべきです。場合によっては人間の形のようなロボットになることはあるかもしれませんが、大抵はブルドーザ的であったり、あるいはねずみ的であったりするものが必要になるかもしれないということです。
 私もロボット屋ですが、ロボットを作ってから何かをやろうという考えではないのです。私がスカラロボットを作ったときも、自動組み立てはどうやったらできるかを考え、ねじを締めたり部品を組み付けたりするためにどういう機械だったらできるか、しかも専用機ではなくて多機能機でなくてはいけないということを考えました。そのためには、コンピュータで制御しなくてはいけない、マイクロコンピュータの出始めでしたが、コンピュータで自由に位置決めができるようにしたいというところからスカラロボットができてきたのです。形は最終的にはいわゆる産業用ロボットになっているのですけれど、ロボットを作ってこれで組み立てをやってくださいという流れではなく、組み立て作業をする機械として開発をしてきたら、たまたまあのような形になったのです。これは機械と呼んでもいいのですが、ロボットとした方が機能をよく理解してくれるのではないかということでロボットと呼んでおります。
牧野:機械装置とロボットの違いは、機械の内のあるものをロボットだという人と、ロボットの内のあるものを機械だという人と両方おられます。どちらが意味として広いかは、ちょっと分からないのですが、機械の定義、ロボットの定義を詰めていかないとどっちがどうと言い切れないと思います。

■ロボットは今後どういう形に変わっていくのでしょうか

牧野:ロボットに関しては、ここ10数年か20年ほどは人間型ロボットにシフトしてきていますが、それはあくまで一つの分野であると思います。今は、災害救助ロボットとか、地雷除去ロボットとかロボットらしくないロボットも活躍するようになってきています。そういう人間の形にとらわれない方向が、今後ますます発展するのではないかと思います。
 産業用ロボットは必要なものですが、その分野の進み方は早くなかったと思います。しかし、工場の中で使うロボットも今後発展すると思いますが、どのようになっていくか…一口で言うといろいろな形で発展すると思います(笑)。 こうなっているのがロボットだいうものではなく、ロボットと機械の中間的なものであったり、ロボットと人間の中間的なものであったりというものも出てくると思うのです。
 スカラロボットはどう発展するのですかと、よく聞かれるのですが、最初に作ったときにはある程度の大きさの作業を想定して作っていますから、今のような大きさになっていますが、機械の機構としてみれば大型のものも小型のものも必要だと思います。現在は、液晶ガラスの搬送などにおいて大型のものが作られていますが、小型のものにはあまり良いものは無いと思います。これは、我々設計の立場からすればアクチュエータに良いものが無いからです。小型で、パワフルで、なおかつ制御しやすいというアクチュエータが無いのですね。そこで、『メカトロニクス』誌にもっと期待しなければならなくなってくるわけですね。
 ロボットの指を作りたいという人はたくさんいますが、片手に20とか21の関節がある指を作ろうとしたとき、まずアクチュエータが入りきらないのです。そこで、ひもで操ったりしますがあまりうまく動いてくれないのです。やはり、小さなアクチュエータというのが発展してこないとできないのではないかなと思います。
 私はスカラロボットのメカから入ってきて、これをどううまく動かすかを考えてきましたが、始めは点から点への動きのピックアンドプレースで、いろいろな組み立てをやりました。それから軌跡制御に入ってきて、2次元で平面図形のとおり速くきれいに動かすにはどうしたら良いかを考え、そして3次元に移ってきていますが、2次元、3次元でクロソイド(Clothoid)曲線を使った制御の開発をしてきました。線がまっすぐに進めば直線であり、一様な割合で曲がれば円弧になります。クロソイドは、先に行くほど曲がりがきつくあるいは緩くなるもので、だんだん渦を巻いていく線です。クロソイドの曲線を使って制御をするとうまくいく、いや、うまくいくのではないかということが期待されるわけです(笑)。理論どおりににものを作ると、もっと良く動きますよというのが我々の今考えていることなのです。
 幸い、NCのおかげでだんだん我々の思っている形にものが作れるようになってきましたから、それらを使えばもっと良いメカができると思っています。現に、部分的には実験をやっており、昔と比べれば桁が違うほど速く動かせるようになってきています。基本は、動きをいかに正確に行うかということだと思います。そこに、コンピュータ技術が必要なわけです。昔のサーボのようなアナログで制御するのではなくて、デジタルで精密に制御することで速く動かすことができるということです。
 スカラロボットも、クロソイドを使って速くきれいに動かすように、人間のように滑らかにふわっと動かすように研究しています。ふつうの人は、滑らかにふわっと動かすと遅いと思われるでしょうが、そうではなく、そう動かすことによって速く動かすことができるのです。

■今後のロボットまたはメカトロニクスに期待していることは何ですか

牧野:全体を統括する技術はずいぶん進んできていると思いますが、個々のもの、要素技術が遅れているのではないでしょうか。特にメカが一番遅れていると思います。
機械的要素を組み合わせたものや機械要素とエレキを組み合わせたもので、もう少し良いものが欲しいなと感じています。また、エレキというのは幅が広く、昔の電気とは意味が違っており超音波振動なども含まれます。それを利用して、あるいは物理的な原理で動くアクチュエータを使って、ロボットのメカやアクチュエータとして使えるものをもう少し開発して欲しいなと思っています。コンピュータの進展に比べ、エレクトリックとメカニカルが遅れており、もう少し発展することを期待しています。
 ロボット工学においては、新しい原理に基づくメカ、アクチュエータ、センサというのはどんどん開発されており、それらが実用化に近づいてくればもっといろいろなことができるはずです。
 ただ、我が国の公的機関で、大学などロボットを研究している研究室はありますが、ロボット研究所は一つもありません。自動化研究所、メカトロニクス研究所もありません(笑)。それで、ものづくりをやりなさいといわれても、少し違うのではないかという気がします。
 ある程度人を集めるということは必要だと思います。一人、二人で研究をやっているより、同じようなことをやっている人が20人集まればすごい効果が上がるのですが、そういうことはやられていませんね。
 米国や欧州には、ロボット研究所は結構あります。一つの大学の中に研究所があり、そこで10とか20のプロジェクトが平行して研究しているという例がたくさんあります。中国においても、私が顧問教授となっている上海交通大学、ハルピン工業大学を始めいくつかの大学でロボット研究所が設けられています。
 我が国においても研究所があれば、ロボットにおける総合的な研究が進むのではないかと思います。現状では、例えば北海道と東京と九州の研究者がコラボレーションして、というのは無理があると思います。
 今後の動きとして、MEMS、NEMSは、先ほどいいましたアクチュエータの発展に大いに寄与すると思います。しかし、こういうものは実際に動いているロボットに利用されるようになるには、時間がかかります。その時間がかかるということさえ認識していただければ、それで話はだいぶ解決しますが(笑)。研究をやって、すぐに成果を出せというから上手くいかないので、研究は本来時間がかかるのだということを知っていただきたいと思います。
 研究・開発というと、どうしても、トピックス的なものが注目されそこに補助金などが与えられがちで、基礎的なもの、古いと思われるものにはなかなか投入されません。メカは古い、電気は古いということで補助の対象になりにくいのですが、そのうちエレクトロニクスも古いとなってくるかもしれません。しかし、基礎技術の上に発展があると思いますので、もう少し基礎的なものを大事にしなければならないと考えていただきたいと思います。そして、まじめに、こつこつ研究されている方に十分な時間とお金が与えられて、新しいものがどんどんできてくるようになって欲しいと思っています。

■ロボットは今後どういう形に変わっていくのでしょうか

牧野:ロボットに関しては、ここ10数年か20年ほどは人間型ロボットにシフトしてきていますが、それはあくまで一つの分野であると思います。今は、災害救助ロボットとか、地雷除去ロボットとかロボットらしくないロボットも活躍するようになってきています。そういう人間の形にとらわれない方向が、今後ますます発展するのではないかと思います。
 産業用ロボットは必要なものですが、その分野の進み方は早くなかったと思います。しかし、工場の中で使うロボットも今後発展すると思いますが、どのようになっていくか…一口で言うといろいろな形で発展すると思います(笑)。 こうなっているのがロボットだいうものではなく、ロボットと機械の中間的なものであったり、ロボットと人間の中間的なものであったりというものも出てくると思うのです。
 スカラロボットはどう発展するのですかと、よく聞かれるのですが、最初に作ったときにはある程度の大きさの作業を想定して作っていますから、今のような大きさになっていますが、機械の機構としてみれば大型のものも小型のものも必要だと思います。現在は、液晶ガラスの搬送などにおいて大型のものが作られていますが、小型のものにはあまり良いものは無いと思います。これは、我々設計の立場からすればアクチュエータに良いものが無いからです。小型で、パワフルで、なおかつ制御しやすいというアクチュエータが無いのですね。そこで、『メカトロニクス』誌にもっと期待しなければならなくなってくるわけですね。
 ロボットの指を作りたいという人はたくさんいますが、片手に20とか21の関節がある指を作ろうとしたとき、まずアクチュエータが入りきらないのです。そこで、ひもで操ったりしますがあまりうまく動いてくれないのです。やはり、小さなアクチュエータというのが発展してこないとできないのではないかなと思います。
 私はスカラロボットのメカから入ってきて、これをどううまく動かすかを考えてきましたが、始めは点から点への動きのピックアンドプレースで、いろいろな組み立てをやりました。それから軌跡制御に入ってきて、2次元で平面図形のとおり速くきれいに動かすにはどうしたら良いかを考え、そして3次元に移ってきていますが、2次元、3次元でクロソイド(Clothoid)曲線を使った制御の開発をしてきました。線がまっすぐに進めば直線であり、一様な割合で曲がれば円弧になります。クロソイドは、先に行くほど曲がりがきつくあるいは緩くなるもので、だんだん渦を巻いていく線です。クロソイドの曲線を使って制御をするとうまくいく、いや、うまくいくのではないかということが期待されるわけです(笑)。理論どおりににものを作ると、もっと良く動きますよというのが我々の今考えていることなのです。
 幸い、NCのおかげでだんだん我々の思っている形にものが作れるようになってきましたから、それらを使えばもっと良いメカができると思っています。現に、部分的には実験をやっており、昔と比べれば桁が違うほど速く動かせるようになってきています。基本は、動きをいかに正確に行うかということだと思います。そこに、コンピュータ技術が必要なわけです。昔のサーボのようなアナログで制御するのではなくて、デジタルで精密に制御することで速く動かすことができるということです。
 スカラロボットも、クロソイドを使って速くきれいに動かすように、人間のように滑らかにふわっと動かすように研究しています。ふつうの人は、滑らかにふわっと動かすと遅いと思われるでしょうが、そうではなく、そう動かすことによって速く動かすことができるのです。

■今後のロボットまたはメカトロニクスに期待していることは何ですか

牧野:全体を統括する技術はずいぶん進んできていると思いますが、個々のもの、要素技術が遅れているのではないでしょうか。特にメカが一番遅れていると思います。
機械的要素を組み合わせたものや機械要素とエレキを組み合わせたもので、もう少し良いものが欲しいなと感じています。また、エレキというのは幅が広く、昔の電気とは意味が違っており超音波振動なども含まれます。それを利用して、あるいは物理的な原理で動くアクチュエータを使って、ロボットのメカやアクチュエータとして使えるものをもう少し開発して欲しいなと思っています。コンピュータの進展に比べ、エレクトリックとメカニカルが遅れており、もう少し発展することを期待しています。
 ロボット工学においては、新しい原理に基づくメカ、アクチュエータ、センサというのはどんどん開発されており、それらが実用化に近づいてくればもっといろいろなことができるはずです。
 ただ、我が国の公的機関で、大学などロボットを研究している研究室はありますが、ロボット研究所は一つもありません。自動化研究所、メカトロニクス研究所もありません(笑)。それで、ものづくりをやりなさいといわれても、少し違うのではないかという気がします。
 ある程度人を集めるということは必要だと思います。一人、二人で研究をやっているより、同じようなことをやっている人が20人集まればすごい効果が上がるのですが、そういうことはやられていませんね。
 米国や欧州には、ロボット研究所は結構あります。一つの大学の中に研究所があり、そこで10とか20のプロジェクトが平行して研究しているという例がたくさんあります。中国においても、私が顧問教授となっている上海交通大学、ハルピン工業大学を始めいくつかの大学でロボット研究所が設けられています。
 我が国においても研究所があれば、ロボットにおける総合的な研究が進むのではないかと思います。現状では、例えば北海道と東京と九州の研究者がコラボレーションして、というのは無理があると思います。
 今後の動きとして、MEMS、NEMSは、先ほどいいましたアクチュエータの発展に大いに寄与すると思います。しかし、こういうものは実際に動いているロボットに利用されるようになるには、時間がかかります。その時間がかかるということさえ認識していただければ、それで話はだいぶ解決しますが(笑)。研究をやって、すぐに成果を出せというから上手くいかないので、研究は本来時間がかかるのだということを知っていただきたいと思います。
 研究・開発というと、どうしても、トピックス的なものが注目されそこに補助金などが与えられがちで、基礎的なもの、古いと思われるものにはなかなか投入されません。メカは古い、電気は古いということで補助の対象になりにくいのですが、そのうちエレクトロニクスも古いとなってくるかもしれません。しかし、基礎技術の上に発展があると思いますので、もう少し基礎的なものを大事にしなければならないと考えていただきたいと思います。そして、まじめに、こつこつ研究されている方に十分な時間とお金が与えられて、新しいものがどんどんできてくるようになって欲しいと思っています。

Scara2_2
国立科学博物館の重要科学技術史資料(第1回、平成20年度)
に認定された。山梨大学のショールームに展示されている。


牧野 洋 プロフィール

山梨大学教授として1978年に産業用ロボットSCARAを提唱・開発。メカトロニクス誌に、1980年から『自動化こぼれ話』として『裏返しのメニュー』『シーバス・リーガル・ロボット』を連載。工学博士・技術士、山梨大学名誉教授、上海交通大学顧問教授、ハルピン工業大学顧問教授、牧野オートメーション研究所所長

メカトロニクス2009年2月号掲載

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