【インタビュー】創業以来蓄積した固有の技術で、高精度高速回転機器を展開する
株式会社ナカニシ
歯科及び外科など医療用回転機器から、一般産業用モータスピンドル、マイクログラインダなどの工業用回転機器の製造販売も手がける(株)ナカニシ。
今回は、同社のこれまでの歩みと今後の展望について、特に実装技術市場に関連のある工業用回転機器にフォーカスしたお話しを専務取締役・機工本部長の中西賢介氏に伺った。
■『堅牢・優美・廉価』が、当社製品のものづくりの礎に
当社の創立は1930年で、今年で80年近くになります。創業者の中西敬一が歯科用工具の製造会社から独立し、中西製作所を立ち上げたのがそのスタートです。1953年に中西歯科器械製作所に社名を変更し、1957年にはその名に由来した名前をもつ自社ブランド『NSK』を立ち上げ、NSKブランドの製造・販売を開始しました。な
お社名は、1982年に現在の(株)ナカニシとしました。
当社は創業以来、『堅牢・優美・廉価』をモットーに、品質にこだわりながら、安くて良いものを市場に提供するため、いち早く最新機械を導入するなど設備投資を積極的に行ってきました。他社に負けない製品開発にチャレンジしていくことが、今日の当社のものづくりの礎になっています。
■工業用製品への進出とその背景
1982年、一般産業向け製品の先駆けとして工業用ハンドグラインダの製造、販売を開始しました。歯科用回転機器で培った独自のノウハウと技術を活かしつつ、工業用に対応できるように、精密部品の加工、各種バリ取り、彫金関連の加工にまで範囲を拡張したのです。
さらに1984年には、既存のNC旋盤に取り付けることによって、研削加工や穴明け加工、スリ割り加工、面取り加工、バリ取りなど、様々な加工用途に対応できる機械装着用モータスピンドルを開発しました。また、市場における加工精度のニーズに応えるべく、高精度な回転検出機能を搭載した電動式ブラシレスモータスピンドルやエアタービン式/エア軸受け式スピンドルを展開し、大手旋盤メーカーや専用機メーカーでの搭載実績を重ねて、今日に至っております。
現在では、各種グラインダを始め、機械装着用モータスピンドルとしてCNC旋盤、専用機、ロボット、基板加工、マシニングセンタに装着するスピンドルから、超精密高精度加工向けのエア軸受けスピンドルまで、幅広く取り揃えております。
その中でも当社は、主に高精度な小径高速スピンドルを中心に開発しているのですが、実は開発当初は、その必要性があまり高くありませんでした。しかしながら、たとえば携帯電話などのダウンサイジング化や上市の迅速化が叫ばれ、製品や部品が小型化するという市場の流れに従って、それらの要求に対応できる当社製スピンドルの実用性が評価されていきました。
当社が工業用製品を開発するにあたって留意していることは、多岐に渡る加工対象をもつという点です。歯科の分野では、歯そのもの、陶材、そして金や銀の金属など削るものが限られているわけです。しかし工業用では、鉄やアルミ、真鍮、木、ガラス、石など対象は千差万別ですから、それらに十分対応できる加工能力を満たさなければなりません。
加えて、お使いいただいているユーザーからも、その加工精度・スピードについて、より高いレベルのものが求められています。その詳細な内容を目の当たりにすることは、我々にとって、次の開発チャレンジへのステップとなっています。
■基板加工への製品展開
実装業界の方々には、当社が、基板加工用スピンドルをラインアップとして取り揃えており、当アプリケーションに積極的に取り組んでいることについてまだまだ十分にご認知いただいていない点もあるでしょうから、ここで改めてご紹介させていただきます。
近年では、基板自体の軽量化・薄型化に伴って、基板分割時のストレスが課題となっており、高速スピンドルでの分割のニーズが高まっていますが、この点については、当社がこれまで築いてきた小径高速スピンドルでの市場における実績から、ルータ方式による基板分割の主軸スピンドルとして多くご採用をいただいています。
これまで、市販されているルータ式基板分割機の主軸は、安価なマイクログラインダやその一部を改良したものが大半でした。しかし、実際に使用されている場面では、切削時の粉塵混入による故障やベアリング交換が生じるという問題も発生しました。そのような問題を解決する手段の一つとして、当社のモータスピンドルが以下のような点からも注目されるようになりました。
それは、①金属量産加工に耐えうるセラミックベアリング内蔵の高い剛性・耐久性をもっている点、②金属加工時に切削油、粉塵の内部侵入を防ぐラビリンス構造で、さらにエアパージ構造を標準装備している点、③スピンドル精度1μm以内により、刃物の回転精度を向上させている点、さらに、④スピンドルモータを標準品としてラインアップしているため、追加によるご注文、メンテナンスに対応している点、⑤基板加工のデザインインによる海外現地移行などに際しても、当社では台湾、欧州、米国における販売及びサービス体制がある点、などです。
また、当市場に対しては、基板加工現場を考慮し、スムーズな工具交換を実現するために、エア圧のオン/オフで交換ができるタイプ(写真1)、レバーの開閉で交換ができるタイプ(写真2)などのラインアップもご用意しております。
基板加工へのニーズとしては、負荷をかけずにさらに加工を早めるための高速化要求があります。ユーザーにとって、加工時間を短縮するのは重要なファクタです。そのために、現在、当社で展開している8万回転/分という製品が基板加工業界ではきわめて早い回転精度のスピンドルになるのですが、それをさらに10万回転/分まで高め、極小径の工具を使用して、迅速に加工が行えるようにしたいと考えています。
そして、当社が今後の開発で重視しているのは、基板加工用製品の、方式面でのラインアップの拡充です。現在の基板加工で使われているのはほとんどが電動式で、これには回転の状況を電気で検知できるという特徴があります。一方、エア式の場合は、何気圧で何回転しているのかを正確に検知するために、別の機械で信号を取らなければならず、コスト高になってしまうという状況にあります。しかし、エアによる、ベアリングを使わない8万回転/分のエア軸受タービンスピンドルは、基本的にはメンテナンスが不要であるため、その点を高く評価して、ご採用していただいた実績があります。ですから今後、このエア軸受け方式において回転検出ができる製品を開発し、基板加工分野に応用できるようチャレンジしていきます。
写真1 基板加工用 精密自動工具交換スピンドル
『NR50-5100 ATC』
写真2 基板加工用 Φ30mm精密レバー式スピンドル
『NRR-3060』
エレクトロニクス実装技術2009年1月号掲載
