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2009年6月24日 (水)

電源装置向け窒化ガリウムHEMTを開発

株式会社富士通研究所

 株式会社富士通研究所は、IT機器や家電など電子機器の低消費電力化技術として、電源装置の電力損失を低減できる新構造の窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(HEMT)の開発に成功した。今回開発した技術は、電源装置として待機時の通電遮断を実現しつつ、通電時の高いオン電流密度を実現したもの。本技術により、電子機器の電源装置の電力損失を3分の1以下に低減することが可能となる。これにより、例えばデータセンターの消費電力を12%低減することができ、日本全体で年間33万トンのCO2を削減できる効果などが期待できる。
 本技術の詳細は、6月22日から24日、米国ペンシルベニア州立大学で開催されている国際会議「Device Research Conference 2009 (DRC 2009)」で発表された。

■開発の背景
 近年、地球環境保全を重視した技術開発が重要となってきており、同社でも、環境負荷低減を支援する富士通グループのプロジェクト『Green Policy Innovation』の一環として、省エネ化に向けた研究開発を進めている。なかでもIT機器や家電、自動車に搭載される電子機器の消費電力削減はCO2削減に直結するため、業界においても注目度の高いテーマとなっている。電子機器全体において、電源装置の熱として失われる電力(以下、電力損失)は、30%以上を占めている。発生した熱の対策には、冷却装置も必要となり消費電力のさらなる増大を招く。
 電源装置は、家庭用コンセントなどから供給される交流電力を、電子機器が動作するために必要となる安定した直流電力に変換する。供給される交流電力は不安定なため、まず電圧の安定化が行われた後、電圧を降圧し、最後に直流電力へ変換される。
 電圧降圧回路では、トランジスタを用いて通電状態と遮断状態の切り替えを高速に行うことで生成する高周波の交流電力を利用している。従来、電源装置にはシリコンのトランジスタが多く利用されているが、シリコンのトランジスタでは通電状態における電力損失(オン損失)と、通電状態と遮断状態を切り替える時の電力損失(スイッチング損失)が大きいため、これらを合わせると、電源の電力損失のうちトランジスタに関わる損失は3分の1以上を占めています。そのため、電力損失の低い新しいトランジスタや回路の開発が活発に行われている。
 オン損失の低減には高耐圧材料のトランジスタの利用が効果的である。高耐圧材料のトランジスタは、電極間距離を短くできるため電子が流れる距離が短くなり通電時のオン損失が低減できる。高耐圧のトランジスタとして、近年、窒化ガリウムHEMTが注目されている。窒化ガリウムHEMTは通電時のオン損失をシリコンのトランジスタに比べて5分の1以下に低減でき、さらに、高速動作の特性に優れているためスイッチング損失も100分の1以下に低減できる。
■課題
 PC、家電、自動車などの電源装置の用途には、ゲート電極に電圧をかけない待機状態で電流を完全に遮断する機能が求められる。従来の窒化ガリウムHEMTは、待機状態で負のゲート電圧をかける必要があったが、昨年、同社では、無線通信装置の増幅器用途で、待機状態での通電を遮断できる独自の三層キャップ層構造(n型窒化アルミニウム層をn型窒化ガリウム層で挟んだ構造)の窒化ガリウムHEMTを開発した。しかし通電状態と遮断状態を切り替えるためにゲート電極にかける電圧(以下、オン電圧)が+0.5V程度であるため、数百Vのドレイン電圧のかかる電源用途で一般的に求められるオン電圧の+2~+4 Vを満たすことができなかった。また、実用的な電源装置として利用するにはオン電流密度として単位ミリメートルあたり600ミリアンペア(以下、mA/mm)以上が必要だった。

■開発した技術
 富士通研究所独自の三層キャップ構造の窒化ガリウムHEMTに加えて、今回、以下の2つの技術を適用した新しい窒化ガリウムHEMTを開発した。
 ゲート電極直下部分のみ、正確に掘り込む技術を開発。窒化ガリウム電子走行層部分へダメージを与えることなく掘り込んだ部分にn型窒化アルミニウムガリウム層をわずかに残すことで、オン電圧を+2 Vよりも高くして、待機時の完全な遮断性能と通電時の高速性能を確保した。
 ゲート電極構造に原子レベルの平坦性をもつ酸化膜を用いた絶縁ゲート構造を採用した。通電時にゲート電極へ走行電子が流れ込むゲートリーク電流を抑制することで、ゲート電極に正の電圧をかけることが可能となり、通電時のオン電流密度を向上させた。

■効果
 今回開発したトランジスタのオン電圧は電源装置に適用が容易な+3Vを示し、かつオン電流密度も829 mA/mmと従来よりも2倍となる高い電流値を達成した。今回開発したトランジスタは、オン電圧+2V以上で待機時の通電遮断を実現するトランジスタでは世界最高のオン電流密度を示しており、電源用途で必要とされる性能を満たした、窒化ガリウムHEMTとなる。
 今回開発したトランジスタを電源装置に採用することで、電源装置の電力損失を従来のシリコンのトランジスタを使用した場合に比べて3分の1以下にすることができる。これにより、国内のデータセンターの全サーバに適用した場合、サーバの発熱量低減による空調の省エネ効果も含めて、データセンターの消費電力を12%低減、日本全体で年間33万トンのCO2削減の効果が期待できる。
 さらに、今回開発したトランジスタは高周波動作が可能となるため電源装置の小型化も実現する。従来の電源装置では動作周波数が低いため困難だったコイルや変圧器の小型化が、トランジスタの高速動作により可能になる。ノートPCなどのACアダプタに適用した場合、10分の1程度に小型化できると考えられる。また、データセンターなどのサーバの電源部分が小型化されることで、省スペース化にも貢献できる。

■今後
 今回開発した高耐圧窒化ガリウムトランジスタ技術の実用化を進め、2011年ごろまでに電源装置への適用を目指す。

http://pr.fujitsu.com/jp/news/2009/06/24.html

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