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2009年5月20日 (水)

【インタビュー】ユーザーに密着した提案型営業でニーズに応える

—毎年10点以上の新製品を開発し、市場を活性化—
日本トムソン株式会社

我が国で最初にニードルベアリングを自社技術により開発、その技術力を礎として直動案内機器の分野へと進出した日本トムソン株式会社。同社の躍進の原動力となった主力製品群を中心に、常務取締役 駒場潔 氏、営業技術部 部長 笠原 信 氏に話を伺った。

★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★

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常務取締役 駒場 潔 氏

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営業技術部 部長 笠原 信 氏


■我が国で初めてニードルベアリングを製造販売

 日本トムソンは、名古屋市でベアリングの販売会社大一工業として1950年に設立。その後、日本トムソンベアリングと業務提携し、我が国で初めてニードルベアリングの製造販売を手がける。1963年に社名を日本トムソンに変更、IKO(アイケイオー)をブランド名とした。IKOとは、革新的で(Innovation)、高度な技術に立脚し(Know‐how)、創造性に富む(Originality)製品を開発、生産するという信念からつけられた。
 ニードルベアリングは、転動体にニードル(針)状の細いローラを組み込んだベアリングで、ボールベアリングに比べて、断面高さが小さくてスペースをとられず、しかも大きな荷重に耐えられるのが特徴だ。同社製品は自動車エンジン用のベアリングとして評価され、その後様々な産業分野の機械要素部品として用途を広げてきた。
 ベアリングにはボールベアリングやローラベアリングをはじめ豊富な種類があり、ニードルベアリングの市場規模はベアリング全体の15%ほどであるが、需要先は自動車やオートバイ、印刷機、産業用ロボット、建設機械など幅広い分野で使われている。同社は1万種におよぶニードルベアリングを在庫し、ユーザーの要求に幅広く迅速に対応することが持ち味となっている。

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ニードルベアリング

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直動案内機器:直動シリーズ

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直動案内機器:メカトロシリーズ
 
■高負荷、高剛性に優れたローラタイプ直動案内機器

 ニードルベアリングは回転用の軸受だが、それに対しリニア(直線)に動く軸受として開発されたのが、直動案内機器だ。機械装置における直線運動時の摩擦を低減させ、精密な位置決めを行う上で欠かせない機構部品として、半導体製造装置や電子部品実装機、大型工作機械などで数多く使われている。直動案内機器は市場導入初期から様々な改良が加えられ、現在主流となったレール案内式の直動案内機器では、色々なシリーズがメーカー各社から出されるようになった。
 日本トムソンは、転動体にボールを用いた直動案内機器『リニアウェイ』シリーズを開発し、1978年に市場に投入した。1983年には転動体にローラを用いた直動案内機器を世界で初めて開発し、販売を開始した。ローラタイプの直動案内機器はボールタイプに対し大きな荷重に耐えられる。停止精度、繰り返し位置決め精度がボールタイプに比べ非常に良いことが認められ、特に、高い剛性が要求される工作機械で急速に需要が広がっている。
 同社の直動案内機器は、案内の形式によりレール案内形式、軸案内形式、平面案内形式に大別される。さらに、転動体が循環して運動距離を制限しない無限運動形式と、有限運動形式に分けられる。各形式には、転動体にボールを使ったタイプとローラを使ったタイプがあり、お互いに優れた特徴をもっている。「現在、当社は、産業界の省スペース化への期待に応えるべく、製品の極小化に挑んでいます。製品サイズは小さいながらも高負荷容量、高剛性などの高付加価値なものを追求しています。ボールタイプでは、レール幅がわずか1mmの直動案内機器『LWL1』があり、4条列ローラタイプでは、レール幅が10mmの『LRXD10・・・SL』がありますが、これらは世界で最極小タイプのものです。ニードルベアリングでも、『カムフォロア』シリーズに軸径1.4mmと世界最極小のものをラインアップしています」と、常務取締役駒場潔氏は産業界の省スペース化に貢献していることを強調する。
 高剛性のリニア(ローラ)ウェイからミニチュアタイプまで幅広く製品をそろえている同社だが、「ローラタイプでいえば、定格荷重だけでなく摩擦特性や走行精度などの特性についても評価をいただいております」と、営業技術部部長笠原信氏は技術の面で優れていると語る。
 同社が長年蓄積してきたボールタイプとローラタイプの膨大な比較データによると、同社のローラタイプは、軌道との接触面が大きく、負荷能力に優れた円筒ころを数多く組み込んでいるので、ボールタイプと比較して大きな定格荷重と長寿命が得られるという。また、負荷荷重がかかったときに変位量がどれだけ抑えられるかを表す剛性に関しては、荷重に対する弾性変位量が小さい円筒ころをスライドユニットの中に数多く組み込むことにより、ボールタイプと比べ高い剛性が実現される。「工作機械などで重切削をするときに、振動をいかに抑えるかが重要で、初期の振幅とその振幅がどれだけの速さで止まっていくかを示す振動減衰曲線をグラフ化してみると、振幅が小さく、かつ、早く振動が収まっているのがローラタイプの特徴です。切削工具を使用した場合、切削工具の寿命が長くなったり、加工精度を高めたりという特性につながってきます」と、笠原氏はローラタイプの性能の高さを語る。

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ボールタイプとローラタイプの定格荷重比較

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ボールタイプとローラタイプの弾性変形特性比較

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ボールタイプとローラタイプの振動減衰曲線

■日本トムソンの直動案内機器の特徴

 同社の直動案内機器は、バリエーションが非常に豊富であると同時に、『フリコン』と呼んでいるフリーコンビネーション仕様を全シリーズに設けているのが特徴だ。フリコンというのは、今まではトラックレールとその上を直線運動するスライドユニットが完全に一対として加工することで、保証される精度を出していたため、ユーザーがあとからトラックレールやスライドユニットを追加して使用することはできなかった。そのためユーザーは、ユニットが壊れた場合、トラックレールとスライドユニットがセットになった直動案内機器を新たに購入し、全部交換しなければならなかった。しかし、同社が長年培ってきた精密加工技術がフリコン化を可能にし、トラックレールとスライドユニットをそれぞれ単独で使用できるようにしたのである。スライドユニットだけを購入すれば既存のトラックレールに組み付けることができ、しかも同社は予圧や精度を保証している。笠原氏は、「その分、生産過程で高精度な均一化を図らなければなりません。高精度のランクまで互換性を実現していることが、他に類例のない当社の大きな特徴です」と同社の精密加工技術の素晴らしさに自信をのぞかせる。駒場氏は「フリコンは1992年から市場に投入していますが、ほぼ全シリーズに設けることにより短納期を実現し、ユーザー様も色々な用途に応じて、自由な組み合わせを行うことができます」と、フリーコンビネーション仕様の良さを語る。
 同社のもう一つの特徴は、直動案内機器に対する給油工数を不要にしたことである。直動案内機器は摩耗防止などのため、強制潤滑やグリースなどの潤滑油が必要なため、組み込まれる機械装置に給油機構を設ける必要があり、定期的に給油も行わなければならない。しかし、同社はこの課題に対し、充分な潤滑油を含んだ潤滑部品Cルーブを開発し直動案内機器のスライドユニットに内蔵することで解決したのである。Cルーブ内の潤滑油が潤滑効果を持続させ、5年または20,000kmのメンテナンスフリーを実現した『メンテナンスフリー』シリーズの誕生である。給油間隔の延長を図る同様な製品は他からも出ているが、その多くは潤滑部品を外付けするタイプで、同社のように潤滑部品を内蔵しているタイプはない。内蔵タイプの特徴として従来品と外形寸法が変わることがなく、取り付けスペースやストローク長さの制約も受けずに従来品と置き換えることが可能なことである。そのため、従来品と区別がつくように側板の色をブルーにしている。 また外付けタイプは、潤滑部品がトラックレールに接触しながら潤滑油を塗布する方式のため、トラックレールと潤滑部品の間に摩擦が発生するが、同社のCルーブは、スライドユニット内でボールやローラに直接潤滑油を供給するためすべり抵抗が発生しない。同シリーズは、ユーザーもメンテナンスの削減になり、きれいな環境で製品を使えるため、従来品からの置き換えも増えてきているという。
 「当社は『オイルミニマム』をキーワードに地球環境に優しい製品の開発を進めており、直動案内機器についてはフリコンとメンテナンスフリーのシリーズを拡充していこうと考えています」と、駒場氏は話す。

■コンパクトが特徴のメカトロシリーズ

 同社では、ニードルベアリングやリニア(ローラ)ウェイなどの直動案内機器とともに、3本目の柱となっているメカトロシリーズも充実している。メカトロシリーズは、リニア(ローラ)ウェイなどの直動案内機器とボールねじなどを組み合わせ、駆動源にモータを搭載した精密位置決めテーブルなどである。さらにリニアモータを搭載した『リニアモータテーブル』も取り揃えており、コンパクトなものから長ストロークなものまでバリエーションは多い。特に得意とするコンパクトなものの中で『ナノリニア』シリーズは、コストパフォーマンスに優れた『NT…V』シリーズと、立軸仕様を標準化し基本特性に優れた『NT』シリーズの2種類がある。特徴は、断面高さがわずか14mmと非常に低く、しかも可動テーブルにケーブルが無いケーブルレスであることだ。テーブルの案内部には同社のリニアウェイを使用し、リニアモータと高分解能リニアエンコーダとの組み合わせにより、高精度な位置決めを実現している。分解能は0.1μmと0.5μmのものがあり、コンパクトで位置決め精度も高いことから、電子部品製造装置など小さい部品の組み立てや検査に使われている。 従来のボールねじ駆動のテーブルだとどうしてもボールねじの分だけ高さを取ってしまい、それをX、Yの2軸に組み合わせていくと高さがさらに高くなってしまう。同シリーズは、2軸に組み合わせても占有スペースが小さいため、省スペース、コンパクトな用途向けとして組み立て装置や検査装置の位置決め機構などに使われているのである。

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マイクロリニアウェイL『LWL1』

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リニアローラウェイスーパーX『LRXD10…SL』

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スラストワッシャ付きカムフォロア『CFS1.4WV』

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Cルーブ・メンテナンスフリーシリーズ

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CルーブリニアローラウェイスーパーX『MX』

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ナノリニア『NT…V/NT』

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ナノリニア『NT』

■毎年10点以上の製品を開発し、市場を活性化

 同社は『ユーザーに密着した提案型営業活動』によりユーザーニーズを捉えている。社内に製品開発情報制度が設けられており、製品を開発する場合にユーザーのニーズを集め、それを基に短期で開発するもの、長期で開発するものなどのテーマを決めていく。直動案内機器は、ニーズに合わせて開発を進めることで小型から大型まで種類が増えていった。ローラタイプにおいても、小型な製品を開発することで機械装置の小型・軽量化につながり、開発当初のターゲットユーザーであった工作機械だけでなく、半導体製造装置や液晶関連装置などにも使われ、今ではトラックレール幅10mmもシリーズ化されるようになった。
 同社では、毎年10点以上の新製品を6月に発表しており、ここ10年で、100点以上発表していることになる。ここで2008年の新製品の中から何点かを見てみたい。
『超薄形クロスローラベアリングCRBT』は、幅寸法わずか5mmで、クロスローラタイプでは世界でもっとも小型・軽量のものだ。内輪と外輪の間に円筒ころを直交配置しており、ラジアル荷重、アキシアル荷重およびモーメントなどの複雑な荷重を一つの軸受で受けることができる。鋼球に比べて負荷による弾性変位量が小さい円筒ころを組み込んでいるため、装置をコンパクトで剛性に優れたものを設計できる。近年開発が進んでいるロボットの部品は、小さくて軽いものを要求されるため、ロボットの関節などに最適である。また、光学機器、医療機器などの旋回部にも使用でき、機械や装置の小型化や軽量化に貢献できる。
 『マイクロ精密位置決めテーブルTM』は、トラックレール幅2mmのマイクロリニアウェイと、ねじ径2mmの精密研削ボールねじを組み込んだ、断面高さ20mm、幅17mmの非常にコンパクトな位置決めテーブルである。研削ボールねじ駆動では類例のない断面高さを実現しながら、なめらかで安定した摺動と走行精度を実現し、位置決め精度を保証しているのが特徴だ。この製品も、電子部品の微細加工や検査のためのニーズから製品化されたものだ。開発においてはセンサがネックとなり、市販のものでは対応できなかったため同社独自の小型センサを開発した。
 『ピエゾステージSP』は、ピエゾ素子と歪ゲージで構成される同社独自の変位検出機構を、コンパクトな鋼製のステージに組み込んだストローク範囲が10μmの微動ステージ。ピエゾ素子は圧電材料を電極で挟んだ素材を積層した構造で、電極間の電圧印加により伸張する性質をもっており、この時の印加電圧と伸張量との間にはヒステリシスが発生する。同製品は、構造解析に基づいた最適な位置に歪ゲージを配置し、クローズド制御によりヒステリシスを解消することで、10nmの高い分解能をもった高精度の位置決めを行う。専用ブラケットを使用することで、同社の精密位置決めテーブルの上に搭載することができ、コンパクトな粗動/微動機構を構成することができる。レーザ・光学機器、半導体製造装置、液晶関連装置など、微細な位置決めが必要とされる制御機構に最適である。

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『超薄形クロスローラベアリング CRBT』

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マイクロ精密位置決めテーブル『TM』

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ピエゾステージ『SP』

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■今後の展開

 同社の生産拠点は、岐阜県に大半が集約されているが、2006年にベトナムに生産子会社『IKOトムソンベトナム』を設立し、海外生産を開始している。さらに、岐阜県土岐市に工場用地を取得し生産体制の再構築について準備を進めている。
 製品については、直動案内機器では、さらなる精度、剛性を追求し、既存シリーズの品種拡大や性能アップを図るとともに、地球環境の保全に貢献できる製品開発を推進していく。メカトロシリーズにおいては、ユーザー要望に応えられる製品を新たにシリーズ化していきたいと考えており、その方針に沿ってマイクロ精密位置決めテーブルやピエゾステージを開発してきている。「新製品の市場投入には、ユーザーとのコミュニケーションを増やすという狙いもあります。ユーザーニーズから生まれた新製品を用いて、そこからさらなる顧客満足を高めるヒントを引き出す。そのヒントに基づいて新たな機械要素部品を開発・市場投入することで需要の拡大を導くという営業活動サイクルを推進したいと思っています。直動案内機器においても、もう少し精度を上げたいからローラタイプを希望するとか、どうしても装置に給油できないからメンテナンスフリーを使いたいという市場がまだまだあると思います。そういうところに対応するためにも、ユーザーの情報は重要であると思います」と駒場氏は市場拡大の可能性が大きいことを語る。

メカトロニクス2009年1月号掲載

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