【インタビュー】シミュレーション技術とCG技術の融合
─ 計算科学技術に基づく高度な仮想現実世界 ─
プロメテック・ソフトウェア株式会社
シミュレーション技術とCG技術を融合させ、見ることができなかった流体の挙動などをリアルに表現。第3期にはいる今年の秋からは次のフェーズとして新しい展開を目指すプロメテック・ソフトウェア株式会社 代表取締役社長 藤澤 智光 氏に、粒子法シミュレーション技術と展望について話を伺った。
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プロメテック・ソフトウェア株式会社
代表取締役社長 藤澤 智光 氏
シミュレーション技術とCG技術を融合させ、見ることができなかった流体の挙動などをリアルに表現。第3期にはいる今年の秋からは次のフェーズとして新しい展開を目指すプロメテック・ソフトウェア株式会社 代表取締役社長 藤澤 智光 氏に、粒子法シミュレーション技術と展望について話を伺った。
■会社のご説明からお願いできますか
藤澤:私はもともと東京大学生産技術研究所でポストドクターの研究員として、計算力学といわれる分野の研究をしてきました。それを企業の方に使っていただくという、産学官連携のプロジェクトをやっていましたが、プロジェクトでやっていますと汎用的なものの研究になり話は広がるのですが、個別のニッチなニーズを汲み取れないという不便さを感じました。大きな組織ですと一緒にやられている企業の個別のニーズになかなか応えにくいということが多かったので、私自身が企業に対応できるソフトウエアを作っていきたいと思い会社を作ることにしました。
■設立前のエピソードがあればお話しください
藤澤:2003年の夏に日本MITエンタープライズフォーラムが主催する「ビジネスプラン・コンテスト」があり、私たち矢川研究室のメンバーが優秀賞に入賞しました。そこでベンチャーキャピタルとかビジネス関係の方と知り合うことができたのが伏線としてあったと思います。それまでは研究畑でしたので民間のことはあまり分からなかったのですが、ビジネスプランに取り組む中で、会社を経営していくには財務の知識も必要であるとか商売ということをきっちり考えていかないと成り立っていかないということが分かりました。
コンテストが終わったあとの段階では、会社設立はまだまだ早いと思っていたのですが、企業の方々の応援があり会社を作るなら仕事を発注するといっていただき、それが大きなモチベーションになったと思います。
■設立に関するまたは設立当初のエピソードをお聞かせください
藤澤:設立は2004年10月29日ですが、設立に際してまず資金がなかったことです。また数人で設立の準備をしていたのですが、何人かが発起人から抜けていき最終的には私ともう一人だけになってしまいました。そういう意味では初めはお金がない、人がない、売るものもないという状態でした。売るものもないとは、仕事としては企業に対するコンサルタント的な仕事は有るのですが、たとえばソフトウエアをCDにして売るというようなものがないということです。設立当初は仕事をもらうため、開発の時間を割いて企業回りをしていた一番苦しい時期でした。
それが、生産技術研究所から入社してくれる人があり、技術者が新卒で入ってきたり人が集まり始めました。人というのは会社のエネルギーそのものなので、大きな仕事も取れるようになっていき、ものができ始めるという好循環ができてきました。設立間もない厳しい状況の中でも人が入ってきてくれたことは次のステップのために大きかったといえます。会社はアイテムも大事ですが、やはり人が大事だと実感しました。
最初の段階では私が注文をとってきて書類関係を作成し、製品を作って納品もしていました。それが事務的なことをやる人、ものを開発し作る人ができましたので、私は営業とか経営の方にシフトすることできました。よく言われることですが、1足す1は2ではないのであって、相乗効果は大きかったと実感しました。
■資金のほうはどうされたのですか
藤澤:私たちは補助金を全然受けておりません。言い訳をしますと、書類を書く暇が取れないのです(笑い)。当初は先生方の応援と営業で稼いだお金と若干の借り入れとで何とかやってきました。
それから、2005年12月に株式会社東京大学エッジキャピタルから出資を得ることができ、今年7月には他のベンチャーキャピタルからも追加の資金をえることができました。今年の3月と4月には短月黒字でしたが、5月は人も増えた事もあり少しの赤字が出ている状態です。大きな企業との事業提携がいくつか見えてきており、今年の10月からの第3期には年度を通して黒字になるかなと思っています。
ビジョンとしては3つのフェーズを考えています。 第1のフェーズは受託とか共同開発を推進する段階で、パイロットフェーズ的な仕事をしています。これは第2期の終わりである今年の9月までと捉えています。
第2のフェーズは第6期までで、第1フェーズでのユーザビリティー評価をフィードバックし、ライブラリとかパッケージソフトウエア開発販売していきます。今そのパッケージソフトウエアを作っている段階で、その売上が立ってくるのが第3期の後半から第4期にかけてになります。ここでソフトウエアビジネスとしての基盤を作ろうと思っています。
第3フェーズは第7期以降で、すこし夢の領域になりますがIPO(株式公開)の後にソフトウエアをLSIのIPコアにして、物理シミュレーションをゲームの中に使っていくとか、あるいは映画とか番組の特撮に使っていくようにしていきたいと思っています。
■御社の技術をについてお話し下さい
藤澤:いわゆるシミュレーションといわれているものが根本にあります。当社のCTOでもある東京大学の越塚教授が、砕ける波や生体などのシミュレーションが行えるMPS法を開発しました。それに西田教授が研究されていたコンピュータグラフィックス技術を融合したシミュレーション映像を表現します。
分かり易くいえば、コンピュータの持つ可能性を最大限に活用し、シミュレーション技術とCG技術によって、『これまで見ることができなかったこと』、『これまでわからなかったこと』、『これまでできなかったこと』を可能にしていきます。
たとえば、原子力発電所にある原子炉内には人は入ることができません。それをシミュレーションによって求めた原子炉内配管内部の流体の挙動を、CG技術を使ってフォトリアリスティック(写真のようにリアル)な可視化で実現しました。これは気液ニ相流のメカニズムの解明につながり、原子炉内の機器の安全性・耐久性を高め、安全なエネルギーの確保に重要な役割を果たします。
当社の計算科学技術ライブラリの応用分野としては、土木や機械などのエンジニアリングの分野で使うのが1つです。2つ目の分野はシミュレーションデータを使って映像を作っていくものです。3つ目は産業用バーチャルリアリティの分野で、たとえば教育などで雲の生成過程をシミュレーションで作成することです。
適用した事例として土石流のシミュレーションがあります。地形データを使って3次元のシミュレーション技術とCG技術によって、今までにない立体的で詳細な災害状況の映像を実現しました。詳細な災害状況が分かれば住民の関心も高まります。災害に備えるための自助、共助、公助の意識を高め、災害軽減に向けた活動に大きな役割を果たすことができます。
映像を作ることに適用した事例もあります。NHKの番組において行ったものですが、ニューヨークのビル街を高潮が襲うという想定シーンを作りました。ビル群はニューヨークの空を実際に空撮してもらって起こしたモデルです。それに対してシミュレーションをかけて津波がどうなっていくかという結果を表現しました。洪水シミュレーションソフトウエアを私たちが作り、CGの制作はNHKで行いました。
今までと何が違うかといいますと、計算科学とシミュレーションを使ってコンテンツを作っていることです。それにより水の動きがリアルに表現する事が出来ます。
またゲームの中にこの物理シミュレーションを使っていただくことも進めています。
■計算科学シミュレーションについてもう少し詳しくお話ください
藤澤:今までのシミュレーションは、たとえば自動車の衝突解析とか限定的なものだったと思います。何でもシミュレーションできるように思われている方も多いのですが、できるものは限られています。現在シミュレーションの研究者の方々も色々な手法を作っておられ、シミュレーションが実用的になっていくのは実はこれからだと思います。その中のひとつが、当社の粒子法によるシミュレーションです。
粒子法シミュレーションとは、流体運動を粒子の運動に置き換え、連続体流れを計算するものです。
要素や格子を用いないため、流体塊の分裂や合体も容易に扱うことができるロバストな計算手法となっています。流体塊の相互作用をモデル化して微分演算子を定義し、流体の運動方式を解いていきます。
たとえば映像制作向けのアルゴリズムは、エンジニアリング分野向けのアルゴリズムを改良し、10倍程度の高速化を実現しています。ソフトウエアをブラックボックスとして使用することも可能であるため使い勝手が良くなっています。また、流体シミュレーションの専門知識がなくても、ロバストにシミュレーションを実行することができます。
そのため、波が砕けるとか筋肉のような柔らかい物体などのシミュレーションができます。今までは基本的には自動車とか航空機のような金属質のものに限られていました。それをより我々の身近なものがシミュレーションできるようになったことは大きなことです。このようなことができるようになってきたひとつには、ハードウエアが早くなってきて今までは理論的には可能だったが実際に動くことができなかったものができるようになってきたことが挙げられます。
いま、ゲームメーカーから次世代ゲーム機のハードウエアをお借りし、ゲーム機上で流体のシミュレーションを行っていますが、かなりのものがゲーム機上で動くようになってきていますので、そういうコンテンツを作ることも可能になってきています。
私たちはパソコンだけでなくスーパーコンピュータも使えばゲーム機のようなハードウエアも使います。このようにハードウエアに合った計算力学の手法を作って開発をしています。
藤澤:まず、最初の製品として今年の11月に粒子法のシミュレーションのエンジンとして発売する予定です。これは土石流とか、津波とか、洪水などに対する防災関係に使えるような粒子法エンジンです。このエンジンを大手のCAEベンダーのパッケージソフトウエアに組み込み、「防災ソリューション」として販売していく予定です。
いまの段階はお客様との共同開発でプレマーケティング的に出しているものです。先ほどのNHKのように部分的に使っていただいたり、ゲーム機においてはあるタイトルに私たちの技術をちょっと使っていただくという感じで進めています。
第2弾としては、1年後に映像制作向けのシミュレーションソフトウエアを、汎用的なツールとして出していく予定です。これにより、クリエイターの方がある物体の形、硬さなどのデータを入れるだけで自由にシミュレーションを実行することができるようになります。
第3弾としてさらに1年後に、ゲーム向けのシミュレーションエンジンを出していく計画です。ゲームソフト開発会社が標準的に使うツールとして提供していきます。
■抱負をお聞かせください
藤澤:ひとつはハードウエアメーカーとしっかり組もうと思っています。ゲームについてもゲーム機のハードウエアメーカーとしっかり組んで、ゲームでシミュレーションを動かすミドルウェアを作っていきたいと思っています。
もうひとつは海外における販売パートナをつくり、海外にこういうソフトウエアを出していきたいと思っています。夢は日本から世界に通用するパッケージソフトウエアの会社を作ることです。
■本日はお忙しい中ありがとうござました


