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2009年4月10日 (金)

【インタビュー】新技術の創出と企業化を促進

─中堅・中小企業の新技術コンセプトを具現化 ─
科学技術振興機構
国の科学技術基本計画の実施機関として基礎研究から企業化までの一貫した研究開発を促進する科学技術振興機構(Japan Science and Technology Agency 略称JST).その事業内容と中堅・中小企業への支援について科学技術振興機構 審議役 小原 満穂氏にお話を伺った.

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審議役 小原 満穂 氏

■JSTの事業について概要をお話ください.

小原:JSTは科学技術の振興を図るために,文部科学省から示された中期目標の達成のため,JSTが作成し国の許可を得た中期計画に従って事業を実施しています.
 具体的には大きな5つの事業があり,第1が「新技術の創出に資する研究」で,大学などにおける基礎研究の支援をします.2つ目は大学が研究した成果を基にして企業に技術移転をすることです.その際産学官連携の仕組みを使いながら進めていますが,これが「新技術の企業化開発」です.1と2が密接につながっているのがJSTの特徴です.
 3つ目は「科学技術情報の流通促進」で,大学の技術論文や特許などをベータベース化して提供しています.4つ目は「科学技術に関する研究開発に係わる交流・支援」ということで,研究者を海外に派遣したり,海外からよんだりしています.5つ目は「科学技術に関する知識の普及,国民の関心・理解の増進」ですが,主に青少年に科学技術の理解を深めてもらう事業です.
 それぞれの位置づけとしては,1と2を3,4,5が取り囲むような,又は支援する形になります.
 事業予算についてですが,平成18年度の予算からお話しますと,機構の運営を含めた総事業費は1,134億円となっています.その中のおよそ半分に当たる 588億円が新技術創出の研究に当てられています.これは基礎研究の充実,特に科学技術基本計画で謳われている重点4分野を強化していくことに力を注いでいます.新技術の企業化開発については基礎研究の約半分に当たる210億円が当てられています.私の感想としてはイノベーションを本格的に創出していくためにはもう少し多くてもいいのではないかと思っています.
 その他の情報の流通促進は139億円,研究交流・支援が47億円,理解増進が76億円となっています.

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科学技術振興機構の使命及び業務

■TLOが無いときは大学の技術移転を行ってこられたようですが,いま各大学,地域にTLOができておりますのでJSTは技術移転に関連してどのようなことをされているのですか.

小原: JSTの前身である新技術開発事業団が設立された昭和36年から技術移転をやっており,元祖TLO的な役割を果たしてきたわけです.いま多くの大学に TLOが設立され,また知財本部ができて,機能し始めているところですが,JSTとしてはTLOや知財本部が円滑に業務ができるようにバックアップしていくことにビジネスモデルを切り替えました.特許のライセンスをしたり,研究シーズと企業ニーズをつなげたり,共同研究のためのセットをしたりするのは大学やTLOにお任せして,それらをうまく動くように支援をしていくという,いわば黒子に徹するようにしています.小原: JSTの前身である新技術開発事業団が設立された昭和36年から技術移転をやっており,元祖TLO的な役割を果たしてきたわけです.いま多くの大学に TLOが設立され,また知財本部ができて,機能し始めているところですが,JSTとしてはTLOや知財本部が円滑に業務ができるようにバックアップしていくことにビジネスモデルを切り替えました.特許のライセンスをしたり,研究シーズと企業ニーズをつなげたり,共同研究のためのセットをしたりするのは大学やTLOにお任せして,それらをうまく動くように支援をしていくという,いわば黒子に徹するようにしています.

 TLOがないときには大学の先生方からお預かりした特許もかなり持っておりましたので,自ら企業のほうに売り込みにいったりもしました.いまは新しい特許は増えていませんがそれでも10,000件くらい残っていますので,それを有効活用をしたいと思い活動しています.
 大学やTLOには資金的な支援ばかりではなく,人的やシステム的支援,情報の提供などを行っています.人的,システム的支援の1つは特許化支援があります.特に海外出願について大学では資金的にも体制的にも困難ということがありそこを支援しています.大学で生まれた発明が大学の知財委員会や発明委員会で審査され,海外出願する価値があるものはJSTに申請がきます.JSTは外部の有識者の方を中心とした独自の知財委員会で審査していただき,了承を得られたものを海外出願します.これは出願費用などを資金的にサポートすることになっています.
 また,大学の研究シーズと企業ニーズの出会いの場として「新技術説明会」を開催しています.これは大学と協力しまして,大学の持っている研究成果,技術シーズといっていますがそれを紹介しています.主に地方の大学の成果を個別に首都圏,関西圏において紹介をするものです.私どものネットワークを活用し,企業の開発部門におられる方をおよびし,技術内容を聞いていただき興味を持っていただいたものは共同研究開発など事業に繋げていただけるように「場」を提供しているものです.この事業は最近好評で,サンプル提供も含め説明した研究成果の20%以上が具体的話し合いに入っていると聞いています.一昨年からはNEDOと協力して大学のシーズを企業に紹介していく「イノベーションジャパン」も開催しています.
 産学連携の現場におられる方のスキルアップのための研修会として,「目利き人材育成プログラム」も開催しています.実際に知財関係に携わっておられる方,技術シーズと企業のニーズをマッチングさせるコーディネータの方,産学連携に携わっておられる方などのための研修のプログラムとなっています.これはいくつかのコースをもっており,基礎,実務応用,大学基礎があり,最近始めたものに若手研究者向け,中小企業経営者向けといったものもあります.カリキュラムも国の支援制度,技術評価,マーケティング,知財管理,ライセンス,ベンチャー起業など6つぐらい持っております.これは無料ですが希望が多くご迷惑をおかけしていることもあります.平成16年度から地方の大学とも連携し,地方での開催も積極的に行っています.
 情報の提供ということでは,1つは産学連携のポータルサイトの「産学官の道しるべ」では様々な情報を提供しています.行政機関も含め産学連携にかかわるところにリンクをはっており,また「産学官連携支援データベース」としてコーディネータや研究しながらコーディネートされている方,アドバイザー,プランナーなど人材のデータベースも載せております.昨年の1月からは,我が国で初めて「産学官連携ジャーナル」も発行しています.
 さらに「研究成果展開総合データベース」を「J-STORE」として提供しています.当初はJSTの持っている特許を公開していたものですが,さらに各大学と連携して大学の持っている特許も提供するようにしています.これには約70の大学が参加されています.J-STOREの特長は未公開特許も含まれていることです.
 産学連携の共同研究をしたいという方,ライセンスしたい,受けたい方など,技術移転に関しての「相談窓口」を設けており,どなたからの相談に対しても専門家が対応しています.
 以上が人的,システム的支援および情報の提供となります.

■技術移転での資金的な支援にはどのようなものがあるのですか.

小原:研究資金的な面でのサポートとしては幾つかありますが,「独創的シーズ展開事業」がメインになっています.これはさらにいくつかに分けられ,大学と企業の共同研究,または大学の成果を基にして,技術移転を行うための研究開発というように大学の技術シーズがベースとなっています.
 まず,第1は「権利化試験」というもので,これは大学の研究者が出願した特許の周辺を固めるための研究開発を行うことであり,その資金を支援するものです.ただし,これは新規募集はしていません.
  2つ目は「独創モデル化」ですが,これは大学の先生の技術シーズ,研究成果を基にして企業に試作品製作とか具体的な試験を行ってもらい,その支援をすることです.これには条件があり,資本金が10億円以下の企業からの応募となります.金額は2〜3千万で,期間は1年です.
 もう1つは「大学発ベンチャー創出推進」で,これはベンチャーそのものを支援するのではなくて,大学の研究成果を基にして会社を興すために必要な研究開発に対する支援です.これは必ずしも大学発のベンチャーを設立することを義務化しているものではなく,結果としてできる限り大学発ベンチャーを設立して欲しいという事業です.この事業は3年間の支援になっており,年間約5,000万円の研究開発費が3年間支出されることになります.条件としては将来起業化して経営される方と大学の先生とペアで申し込んでいただくことになっています.研究開発の段階からペアで進めていただき,3年経ったらスムーズに起業化を図っていただくというものです.もし3年経っても起業化できなかったとしても,特段何かをしなければならないということはありません.起業化率は非常に高くいままでに40の研究課題が終わっていますが39社が設立されています.今後は起業化したものをどう継続して経営維持をしていくかが課題ということになります.
 最後が「委託開発」ですがやはりこれも大学の研究成果を基にして,JSTが企業に開発をお願し実用化を図っていただくもので,企業に直接資金支援を行う事業です.典型的な成功例に名古屋大学の赤 先生の研究成果を基にして豊田合成が開発した青色発光ダイオードがあります.この開発にJSTが資金的な援助をして成功したものです.委託開発は前の3つと違い,融資になっていますが,しかし少し変わっていまして,成功の場合は返していただきますが,不成功の場合は返済義務がありません.つまりリスクはJSTが負うという制度になっています.これは公募の形を取っており,企業の方が大学の先生の技術を基に開発をしたいことを提案してきます.その際には企業と先生が協議して,実用化までの開発の計画が出されます.ここにも企業の枠があり,資本金10億を超える一般企業,資本金10億円以下の中堅中小企業,設立5年以内の新規企業と3つに分けて募集しています.これは返済方法,担保などで中堅中小,新規企業に緩やかにしているためです.開発費としては1億〜20億円,期間は2〜7年程度です.
 もう1つユニークな支援事業に「革新技術開発研究事業」があり,これは企業のもつ革新性の高い技術シーズを育成するものです.重点4分野はもちろん,安心,安全,経済の活性化なども含んだ課題を募集しています.
 以上が全国的に募集をしているものですが,ほかに地域における産学連携,技術移転の支援も行っています.つまり地域の大学の研究成果を,地域の企業に産学連携を通じて技術移転を図っていく事業を進めています.

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■地域発の新しい技術や産業にはどのように力を入れられていますか.

小原:私どもは地域に拠点をもっており,研究交流,共同研究を行う研究成果活用プラザを北は北海道から南は福岡まで8ヶ所設置し運営しています.さらに昨年の12月からJSTサテライトを4ヶ所開館して運営しています.
 プラザの場合は土地を地方自治体から提供していただいておりますが,建物はJSTが建て研究開発や研究交流,コーディネータの活動を行っています.サテライトの方は建物,場所とも地方自治体の方から提供していただき,私どもは研究開発,人件費で支援をしています.
 ここでの第1の役割は地域の大学と企業で産学官連携の共同研究を3年間進めて,その企業で実用化までつなげていくようにしています.
 2つ目はコーディネータがプラザの場合は4人,サテライトでは2人配置され,研究のシーズと企業のニーズをマッチングさせたり,技術的なシーズを育成したりという役割を担っています.3つ目は研究交流ということで,研修会とかセミナーなどの催しも行っています.
 地域事業でのトピック的なものとしては,平成17年度から「シーズ育成試験」というものを始めました.全国にコーディネータが1,500人くらいいるといわれていますが,これらコーディネータが大学を訪問して見つけてきたシーズを育てるという制度です.コーディネータ活動を円滑に行っていこうということと,地方の大学でなかなか日の目をみない研究シーズを発掘して育てていくといった2つのねらいがあります.昨年は500件を採択することで募集しましたが,各大学から3,752件の応募があり大変な反響を得ました.これは今年も募集する予定です.
 「地域結集型研究開発プログラム」という少し大掛かりなプロジェクト型の事業も行っています.地方自治体が目指す特定の科学技術分野の課題を提案していただき,採択した分野課題について5年間の共同研究を支援するものです.個別の先生の研究課題というより,研究者が結集して行う特定分野の研究開発課題と捉えています.つまり地域の科学技術基盤を整備して強化していこうというものです.

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地域イノベーション創出総合支援事業

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研究成果活用プラザおよびJSTサテライト

■科学技術基本計画にはどう係わり進めてこられたのですか.

小原:科学技術基本計画については第1期から話していきたいと思います.
 第1期科学技術基本計画は平成8年度から12年度までで,17兆円投資することで始められたものです.このときは技術移転,産学官連携は大きくは扱われていなかったと思います.あえて言えば研究開発システムの整備として産学官連携,交流の促進,国等の研究開発成果の活用といったところが出始めたと思います.
 JSTは権利化とか独創モデル化とかプレベンチャー事業これは大学発ベンチャーのひとつ手前の事業ですが,これらをすでに開始しておりました.
 第2期は平成13年度から17年度までで,24兆の投資目標に対し実際は21兆円と少なくなったようですが,第2期の特徴として重点4分野とか産学官連携が挙げられます.産学官連携の強化のための情報流通とか人材交流のしくみの改革といったことがあります.それから公的研究機関から産業への技術移転の整備,その中身として共同研究センターとか特許の機関管理といったことがあげられていました.それから公的研究機関の研究成果を活用して事業化の促進も述べられています.JSTとしては先ほどの事業をより拡充してきました.ハイテクベンチャー企業活性化のための環境整備が述べられていましたが,これに対しては大学発ベンチャーの創出事業を行ってきました.
 また特許化支援,目利き人材プログラム,J-STOREの提供,間接経費の処置,日本版バイドール法の適用など科学技術基本計画にのっとった形で進めてきております.特に第2期からはJSTが今までのビジネスモデルを大きく変えてきました.
 第2期でもう1つ注目されるのは地域の科学技術の振興についてですが,JSTは先ほど話した研究成果活用プラザ,JSTサテライトの設置運営,シーズ育成試験といったようなことを新たに展開してきています.
 第3期科学技術基本計画は平成18年度から22年度ですが,これは25兆円の研究開発費が謳われており,キーワードとすれば“絶えざるイノベーション”だろうと思っています.つまり大学で生まれた研究シーズを基にして経済的価値に転換する新しいイノベーションシステムの構築です.JSTでは「産学共同シーズイノベーション化事業」というのを平成18年度から開始する予定です.研究開発から製品化までの「死の谷」克服はもちろんなのですが,基礎研究には多くの資金が投入されていますので,それを導入してイノベーションを起こすにはどういう仕組みを作ったらいいのか検討した結果のコンセプトです.
 先ほどいいました今までの技術的移転の制度は,どちらかというと技術シーズが特許化されたものを大学の成果として企業のほうに移転するという,シーズ主導型の技術移転事業であり,それでは限界もありました.そこで研究シーズが具体化する特許出願前の研究中のところに企業の方をお招きして,企業が興味をもたれたときは共同研究としてJSTに提案していただきたき,外部評価委員に採択されたときは共同研究の支援をしていくというものです.
 研究中のときは何に応用できるか,方向性が固まっていませんので,相互にディスカッションしながらコンセプトを一緒になって作ることになります.そして共同研究をしてフィジビリティースタディを行います.これが第1段目の顕在化ステージです.そのあとに第2段目として,本格的な共同研究に移行するものですが,もちろんここでも外部の評価が必要になります.この2段目が育成ステージで,2年から4年かけての大掛りな共同研究になります.

■大学発ベンチャーの推進についてお話ください.

小原:先ほども説明しましたが,大学発ベンチャーの前にプレベンチャー事業という同じような事業を平成11年度から15年度まで行っておりました.繰り返しになりますが,40課題中現在39社設立されています.この事業の終わりは来年の9月ですが,現在10課題継続していますのでまだ何社か設立されると思います.

 大学発ベンチャーは平成15年度から始まり続いています.これはいままで54件採択していますが今年に平成15年度採択分が終了になりますが,3月1日現在既に4社設立されています.
 広く捉えて,JST全体の事業から生まれた大学の研究成果をもとにしたベンチャーは昨年11月現在で127社あります.経済産業省の発表では大学発ベンチャーが平成16年年度末で1,112社設立されたと報告していますので,10%くらいの貢献があったのではないかと思っています.
 私どもが技術移転事業を行ってきてどのような経済的成果があったかを話してみたいと思います.結果的には我が国で約5,600億円の貢献をしているのではないかと思っています.これはJSTが企業からいただいたライセンス料が現時点で169億円になっています.ライセンス料はだいたい売上げの3%ですので割り戻しますと約5,600億円という数字が出ます.これは部品とか材料とか素子が中心になっていますので,製品ベースではその20倍とかいう説もありますから,そうであれば10兆円くらいの経済的な影響力を及ぼしていると思っています.

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技術移転関連事業実績データ

■中小企業はJSTをどのように利用できますか.

小原:中小企業にとってJSTをどのように使えるのかということですが,国の支援制度を使いたい,大学の成果を技術移転したいとか,産学連携による共同開発がしたいということがあるかと思いますが,そのときはまず相談窓口(0120-679-005)に電話をしていただければ専門家が対応いたします.
 また情報的な支援ではJ-STOREがありますが,大学にどんなシーズがあるかということが検索できますので,全国の研究者が行っているライセンス可能な技術シーズを探すことができます.
 それから,直接大学の先生方のところに行くのはしんどいということもあるかと思いますが,その場合は産学官連携支援データベースにコーディネータの方のデータが入っていますので,自分の必要とする技術分野と地域からコーディネータを探してコンタクトを取ることができます.そのコーディネータの方が大学のシーズを探してきますので,そこから話し合いが始まると思います.
 研究開発でいえば先ほどもいいました,独創モデル化,委託開発の中堅中小企業と新規企業枠,革新技術開発研究事業それからプラザ,サテライトでの育成研究など色々JSTの制度があります.特にプラザでは,ベンチャー企業を立ち上げたあとの2番目3番目の研究開発に使われることが結構あります.いわば研究所的役割です.そこまでの予想はしていなかったのですが,上手な使い方をされていると感心しています.

 このようにJSTでは中小企業の方々にとっても非常に貴重な情報とか制度がありますので,ぜひ使っていただければと思っています.

本日はお忙しい中ありがとうございました.

メカトロニクス2006年5月号掲

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