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2009年4月13日 (月)

【インタビュー】非接触磁気歯車で技術者の夢を実現

— ダンパー、カップリングから直交型、遊星歯車まで —
株式会社松栄工機

 メンテナンスフリー、低騒音、発塵ゼロ、高効率伝達などの特徴を持つ非接触の歯車という技術者にとって都合の良い動力伝達装置を開発。実用化に持っていくまでの話と、磁気歯車の技術について 株式会社松栄工機 代表取締役 小林 敬氏、事業開発グループ グループマネージャー 操谷欽吾氏に伺った。

★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★

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代表取締役 小林 敬 氏    専業開発グループ グループマネージャー 操谷 欽吾 氏

風力発電の動力伝達に非接触を考える

■会社の紹介をしていただけますか

小林:設立は1978年で金型の材料を六面加工して納めるところから始めました。その後、金型の工程における部分部分のところにも少しずつ領域を広げ、当社開発のFAシステムによるDNCラインの稼動、大型真空炉の導入により熱処理事業も行うようになりました。1998年には金型の設計から制作までの一貫生産体制を確立し、受注生産活動を開始しています。現在はこれらに加え超精密研削加工も行っています。
 2003年に磁気歯車と、磁気遊星歯車の試作機を作り、現在、実用化できるようになりました。

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■磁気歯車の開発のきっかけは何だったのですか

小林:我々が常に考えなければならないのは、日本の製造技術でもって何を生み出すことができるかということです。創造開発型といいますが、そんなに簡単なものではありません。我々が思いつくのはすでに市場にありますし、市場にあるものを見ていては新しいものを思いつかないのでなかなか大変です。
この磁気式歯車に行き合ったのも、そういう悩みの中から風力発電機を作っていたのがきっかけです。風力発電機を作っている企業は、大型は大手に限られますが、中型、小型は数百とあります。しかし、家庭用などの普及が進んでいないところを見ると市場の要求を満たしきれていないといえます。風車が回っても発電量が少ないとか、コストが掛かりすぎるなどがあります。家庭用で1,000万円するものはだれも買ってくれないでしょうし、家庭用として普及させるなら100万円ほどで売るものを作らなければならないと思いますが、今の技術では100万円の装置では家庭用の電気は賄えません。 そこら辺のことも分かってはいましたが、問題点を探るために風力発電機を作ってみました。羽根に関しては大学の先生方によって研究し尽くされており、発電機に関しても多くのメーカーが開発しているという状況でした。
 この羽根と発電機をつなぐ動力伝達機構が歯車であり、歯車の伝達能力、伝達効力を考えたとき色々と問題があると感じました。当社が機械技術から発展していけるのは、その伝達機構ではないかなと思い、考えてみようと思ったわけです。弱い動力をどうやって発電機に伝えきれるか、ということで摩擦抵抗の無い非接触を思いつきました。
 そんな時、磁気歯車を研究していた東北学院大学の鶴本勝夫教授と交流がある人とある会合で知り合い、紹介されたのですぐに会いに行きました。そのときに鶴本先生が研究されていたのは、サマリュームコバルトの磁石を使ったもので、_400ほどの遊星歯車を作っておられました。
 鶴本先生の原理を基に、それを我々が実用化にするまでは試行錯誤の繰り返しでした。磁石の着磁装置を購入し治具関係は当社で開発して着磁するようにしましたが、そのことも大変でした。
 磁気歯車の開発に取り掛かり、非接触の伝達効率をどうするかを研究しているうちに、非接触による動力の伝達が要求されるところが多くあることが分かりました。たとえば、クリーンルームの搬送設備、真空装置や食品拡販などの隔壁動力伝達、トルクリミッタ機能を活用した自動車関連の機構などです。それで、風力発電だけに関わっておられないようになってきました。

非接触歯車を必要とするところへ

■開発における問題点はどのようなことでしたか


操谷:鶴本先生の研究室にお伺いしたところ、早速先生がご自分で磁気歯車を回して見せてくださり、その回るのを見て久しぶりに感動を覚えたのは忘れることができません。会社に戻り早速この磁気歯車の課題を先生の話や、現物を頭に浮かべながら自分なりに整理してみました。なぜこれが世の中で実用化されていないのか?コスト、トルクは気になるところですが、まず何はともあれ一度試作してみたくなり、先生のご協力をえて早速試作に取り掛かりました。
 試作と決まればそこはメものづくりモにたけたプロの集団で、図面作成から、部品の出来上がりまでそんなに長くはかかりませんでした。2ヵ月後出来上がった部品を前に組み立てにかかりました。ところがそれから無事回転するまでにこぎつけるまでの苦難の2ヶ月が始まりました。出来上がりの形はそれらしく見えても全くトルクが弱く簡単にスリップしてしまったのです。原因調査のため、トルクの弱い原因、磁石の形状、磁石間のギャップ、磁石の幅などの各要因を予備実験で確認しながら対策案を搾り出し改良版の試作を行いました。今度は見事に回りトルクも数倍アップし、これなら使い道はある筈だと一緒に取り組んだ私の被害者の若者と顔を見合わせにっこり、早速その翌日に、久しぶりに美酒を交わしたのを昨日のように覚えております。完成した試作機は「第7回みやぎものづくり大賞」でグランプリを獲得し、これが弾みとなり実用に向け本格的開発に着手しました。 一番気になったのはやはり伝達トルクとコストです。また、技術的に確立できたとして、マグネットの確保も課題の一つです。 磁気歯車の応用について我々がユーザーに具体的な提案を持っていけば一番いいのですが、始めの頃は展示会の来場者の皆様から「これは面白い、ところで用途は?」「こんなところに使えるかな」という会話の連続でした。でも積極的に使ってみようとする人はなかなか現れません。この製品は本当に市場があるのかどうかということも考えました。
 ところがお客様の話をよく聞いてみると、磁気歯車が持つ非接触の数ある長所(静かな回転、無発塵、メンテナンスがいらない、振動が伝わらない、伝達効率が良い、増速、減速どちらもOK、軸心合わせがラフでいい・・・などなど)のうち求めているものはその利点のせいぜい一つか二つであることが昨年末から今年にかけてはっきりしてきました。たとえば、クリーンルームで使われる場合はゴミが出ないことが重要なわけです。騒音を嫌うところでは静かであれば良く、隔壁で回したいところは隔壁で回ればよいわけです。初めの頃は良いところをたくさん並べて説明していましたが、このようにお客様によって求めているポイントが違っていました。
 また、お客様に磁気歯車や、磁気式遊星歯車の良さを全面にわたって説明してきましたが、実際に話が一番多いのは単純に向かい合って回転を伝えるだけというカップリングでした。ただ、これには我々がもっとも苦労した遊星歯車の実用化技術が支えとなっていることも事実だと思います。我々にはこんな技術がある、こういうこともできるとピーアールしても、意外とシンプルな構造の製品が市場にうけるものだと再認識しました。
 今後は、これらお客様の多様な要望に応えられる体制を整え、開発期間の最短化を図り、また、小ロットのお客様が満足いただけるような製造方法を確立するのが重要なポイントだと思います。
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トルクが取れる条件を一つひとつ探る

■開発の上で大変なことは何でしたか


操谷:磁気というのは目に見えないものです。その磁気の流れを想定した設計をしなければなりません。
磁石のNとSを交互に並べただけでは当然ですがいいものはできません。トルクを強く取るための最適な条件を一つひとつ探していかなければならず、それが一番苦労しました。磁気歯車の歯に当たる磁石を、細かくしていった方が良いのか大きくしたほうが良いのか、歯と歯の間はどのくらいにしたときに一番トルクが強くなるのかなどです。
 単純にこの大きさなら24極にしてみよう、48極にしてみようと決めて作ってみて、色々やっているうちに良い条件が次々に分かってきました。トルクが取れるのであればそのようなことも考える必要はありませんが、磁石ですのでそんなにトルクを取ることができませんので、トルクを取る最適な条件を見つけることが必要になってきます。始めは実際に磁石を切断して試作をやっていたのですが、磁場解析機を導入して行うようにしてからは開発もずいぶん進むようになりました。 今は、お客様からお話をいただいてから磁場解析をして形状、大きさを決め、最適条件で提案をするようにしています。磁場解析をすることにより、このシミュレーション結果と試作結果が10%の幅で収まるようになりました。
 この成果は当社の新製品である直交タイプに結実しました。この直交型は既に円筒型磁石の組み合わせが市場に出ていました。我々は円盤型の磁気歯車や、カップリングがベースにあったので、これを基に円盤磁石と円筒磁石のコンビで直交タイプを考えてみました。それは伝達に寄与する部分を点から線(実際は稜)にすることでトルクアップをねらったもので、磁場解析結果では数倍のトルクアップが図れることがわかりました。早速試作を行い、現在は当社マグファン製品のマイタ、ベベル製品としてラインアップすることができました。
 磁気式遊星歯車も開発には時間がかかり大変に苦労したものです。この遊星歯車はすでに鶴本先生が考えられ、実際のモデルも作っておられました。当初、同様の方式で試作してみました。ところが、回転し始める時のトルクが大きく、これでは微風で回ることを想定している風力発電用としては難しいと考え、始動トルクの軽減に的を絞って検討を加えた結果、太陽歯車の磁石形状に工夫を加えることで、なんの抵抗もなく回転し始める現在の磁気式遊星歯車にたどり着きました。

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■今後の展開についてお話ください

小林:商品として完成したのは昨年ですが世の中に出て行くのはこれからで、販売の体制も今考えているところです。世の中に無いものですから、製品を理解してもらえるのは実物を見てもらうしかありません。現在、使ってみたいということでサンプルを提供しているところが数十社あります。
 我々も既存のギアを使っており、動力の伝達能力も知っています。磁気歯車はそれと争うのではなく、非接触の動力伝達をこういうところに使いたいという分野に提供するのであり、既存のギアに取って代わろうとするものではありません。その意味では、新たな市場の開拓であり、必要とするところに広まっていっているということです。先ほども色々な分野について話しましたが、それ以外の我々も知らない分野でも使われていくと思います。使う側には色々なアイデアがあり、我々で想定することができるものもありますが、できないものもたくさんあります。
 トルクが弱いという問題もあります。しかし、既成のギアでは回転数が上がると伝達効率、伝達トルクが下がってきますが、磁気歯車では伝達トルクが下がりません。また、過大なトルクが加わるとスリップするので、トルクリミッタとしても機能します。
 一つのものを開発して3年で売れるようになるならだれも苦労はしません。やはり、5年10年掛かります。磁気歯車も機械要素部品として成長していくにはそれくらい掛かると思います。

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■本日はお忙しい中ありがとうございました
これからの発展を楽しみにしております



メカトロニクス2006年12月号掲載

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