【試験機の絵本】’09からの発信 —第3回 ロードセルを作ろ—
★ご好評をいただいた記事を再掲載いたしました★
ひずみゲージは、蟻のように小さな力から象のように大きな力までを同じ原理で取り扱えるという点において、米粒程度の薄片でありながらも力や荷重の計測分野に大きな変革をもたらした。試験機をはじめとした一般の計測器の多くは、力を発生する駆動部分と計測制御の部分とで成り立っており、中でも計測にひずみゲージを用いるロードセルは、図1のように金属ケースに入った単体のパーツである場合がほとんどである。その出力は 1mV(出力電圧)/V(ブリッジ電圧)に統一され市場に普及している。しかし一方で、計測器の要求というのは千差万別で、しかも次第に高度化しているため、金属ケース入りのロードセルだけでは対応できないケースもまま起こってくる。大切なのは、ひずみゲージと測定対象との関係がどのようになっているかということである。今回取り上げるロードセルを作る際にご協力いただいた日計電測の亀井氏は、特殊ひずみ計測を長く手掛けてこられた人であったため、ひずみゲージと測定対象の関係の問題も理解されていたのが幸いだった。
実際にロードセルを作る作業に入る前に、まずロードセルの感度部となる金属の材質と加工処理方法、ひずみゲージの種類、接着コーティングの方法の説明などを受けた。その後に仕事を分担し、基本設計と機械加工(図2)は我々の工場で行い、亀井氏のスタッフがゲージ貼りコーティング、後処理、検定を担当。そして、それらを終えた後に我々の工場において組み込み再調整を行うというものになった。
図3はひずみゲージの例で、片もち取り付けの4ゲージブリッジ。ひずみゲージは、構造が極めて単純、省スペース、安価、かつ感度部の機械加工があらかじめ作り置きできるといったいくつかの特徴をもっている。
この方法を展開した例として、図4のアセンブリがある。これは回転軸に取り付けられたベンディングロードセルと、機械的なストッパとの組み合わせとして、元々は曲げ/ねじりの疲労試験に対応したものであるが、コンパクトな形状が実用的であったため、他の機械にも用いられた。
図5は摩擦摩耗試験機の主体となる部分。図3のような片もち形状と周辺機構とを組み合わせて回転軸を中心に本体のブリッジ枠内に組み込み、カンチレバーはピボットによりおさえて揺動状態とする。先端の試料軸をロードセルを介して空圧シリンダで押すと、ピン試料とそれに向き合う動力系の回転円盤(図6参照)も試料であり、その接触面の潤滑油を含めてトライボロジーの実験ができるようにした卓上の装置である。別置きとなる計測ユニットはここでは省略した。
図7はロードセルの特殊例の一つで、タイヤコードの引っ張り強度試験用の主要部。アイゾット試験機の振り子ハンマで先端部を叩いてスタートさせるようにし、特殊ロードセルと高速メモリ回路という新旧入り混じった方法でmsecオーダーのデータを得ることができた。より線の両端にアルミスペーサの滑り止めを付けたり、デルタウイングが外に飛び出さないようダンパを手配するといった工夫をした。
細線の中でも、特にフィラメント(filament)と呼ばれる単一繊維を対象とした試験機(図8)も特殊な例で、サンプル数を増すため多チャンネルの構成となっている。本機の中核となるベンディングロードセル(図9)には、アクチュエータの役目も同時にもたせている。パネル上部の平均荷重調整ノブの操作により、平均荷重(図10)の調節を行うことができる。試料は上の試料接着部と下の揺動端との間に引っ張って取り付けるが、その際両端を折り返して和紙を貼り付けるなどの工夫をした。振幅はパネル下側にある振り幅調整により支点位置の移動を行っているが、フィラメントがごく細く非常に見えにくいため、断線時には電気信号で自動停止し回数がカウンタに残る仕組みとなっている。このフィラメントを対象とした試験機は、コンピュータ制御の電気刺激で筋肉を動かす機能的刺激法(FES)と呼ばれる治療において、基礎となる細線研究に使われたものである。
著者:飯野 純夫
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